50万筆頭祭 | ナノ

――俺の気持ちを夢子が受け入れ、応えてくれた。
それだけで心を満たされたのを感じ、他の者に何を言われようが気にならない。
幸せ、というのだろう。この状態が。



「……こ、小太郎さん!明日……ふ、二人でお出かけしませんか?」

夕餉を終えた後、夢子が俺にそう言ってきた。震えた声は緊張からだろうか。
他の者に悟られぬよう(夢子が俺の女になったのに未だ邪魔してくるから)小声で。
俺は菊一が夢子を探している声を聞いて、すぐに頷いてからその場を去った。

長い廊下の曲がり角を曲がってから、ふっと口角をあげる。
……あぁ、やっと彼女と二人っきりになれる。





「…………(……動物園)」

「前は触れ合いコーナーには寄れませんでしたし……小太郎さんが喜んで下さるかと」

夢子はそう言うと、ギュッと俺の手を握ってきた。その行動に胸が熱くなる。
愛しくて堪らない。


「…………、……(夢子と二人で居れるならば、俺はどこでもいい)」

「小太郎さん……っ、わ、私も同じですっ!一緒に過ごせるなら……っんん」

「……」

つい衝動的に唇を重ねてしまったが、惚けたような夢子の顔を見てもやはり幸福感しか得られなかった。



その後は、触れ合いコーナーで子犬や猫、うさぎを撫でながら、夢子の笑顔を眺めて過ごした。
もちろん、彼女から言わせれば俺も笑っていたらしい。

当たり前だ。

夢子と過ごすこの日々は、俺が忍であったことさえを忘れさせる。

安穏。
手にすることなどないと思っていたそれに、俺は戸惑うが、夢子に触れる度に思い出すのだ。


「……あ!小太郎さん、見てください!あのコアラ、木に抱きついていて可愛い――」
「……(ぎゅう)」
「――っ、小太郎さん、あ、温かいですね」


……愛してる。

そう耳元で囁いた台詞が夢子の耳に届くことはない。だがその代わりに行動で伝えたい。

これからも、ずっと

二人っきりの動物園

  
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