――俺の気持ちを夢子が受け入れ、応えてくれた。
それだけで心を満たされたのを感じ、他の者に何を言われようが気にならない。
幸せ、というのだろう。この状態が。
「……こ、小太郎さん!明日……ふ、二人でお出かけしませんか?」
夕餉を終えた後、夢子が俺にそう言ってきた。震えた声は緊張からだろうか。
他の者に悟られぬよう(夢子が俺の女になったのに未だ邪魔してくるから)小声で。
俺は菊一が夢子を探している声を聞いて、すぐに頷いてからその場を去った。
長い廊下の曲がり角を曲がってから、ふっと口角をあげる。
……あぁ、やっと彼女と二人っきりになれる。
「…………(……動物園)」
「前は触れ合いコーナーには寄れませんでしたし……小太郎さんが喜んで下さるかと」
夢子はそう言うと、ギュッと俺の手を握ってきた。その行動に胸が熱くなる。
愛しくて堪らない。
「…………、……(夢子と二人で居れるならば、俺はどこでもいい)」
「小太郎さん……っ、わ、私も同じですっ!一緒に過ごせるなら……っんん」
「……」
つい衝動的に唇を重ねてしまったが、惚けたような夢子の顔を見てもやはり幸福感しか得られなかった。
その後は、触れ合いコーナーで子犬や猫、うさぎを撫でながら、夢子の笑顔を眺めて過ごした。
もちろん、彼女から言わせれば俺も笑っていたらしい。
当たり前だ。
夢子と過ごすこの日々は、俺が忍であったことさえを忘れさせる。
安穏。
手にすることなどないと思っていたそれに、俺は戸惑うが、夢子に触れる度に思い出すのだ。
「……あ!小太郎さん、見てください!あのコアラ、木に抱きついていて可愛い――」
「……(ぎゅう)」
「――っ、小太郎さん、あ、温かいですね」
……愛してる。
そう耳元で囁いた台詞が夢子の耳に届くことはない。だがその代わりに行動で伝えたい。
これからも、ずっと