50万筆頭祭 | ナノ
「……さ、佐助さん、待ってくださいっ」
玄関から飛び出して俺の後を追ってきた夢子ちゃんは、ギュッと後ろから手を握ってくる。
だいぶ焦ってくれたのか、その不安げな表情についニヤリと笑ってしまった。
「……怒ってしまわれたんじゃないんですか?」
「あはー、もちろん怒ってたけどねー」
でも夢子ちゃんが可愛いから許しちゃえるんだよ。不思議とさ。
「ま、とりあえずは交際後記念すべき一回目の逢い引きと参りましょうか!」
なんだかんだと旦那らの邪魔があって、なかなか二人っきりで外出なんて出来なかった。
せっかく、夢子ちゃんが俺様を好きだと、特別だと認めてくれたのに。
だから、つい……拗ねて屋敷を飛び出したわけだけど、それが功を奏したってわけ。
「……んー、まずはそうだなぁ」
俺を見上げて不思議そうにしている夢子ちゃんの頭を優しく撫でる。
俺様、先日やっとまともな給料貰えたところなんだぜ。ほんと、あん時は感動した。
だからこの初給料は彼女のためだけに使いたい。大切な夢子ちゃんに。
「さ、佐助さん……っ」
桐谷サンに連絡して、とりあえず夢子ちゃんを美容院ってとこに連れて行った。
夢子ちゃんは何やらオロオロして俺様の名前を読んでいたけど、笑顔で綺麗系のオネーサンたちに後は任せる。
要望としては、夢子ちゃんの普段とは違う大人びたセクシー系の雰囲気でと口は出したけど。
数十分後に現れた夢子ちゃんは、髪型も化粧の雰囲気もがらりと変わって、あまりにも俺様の希望通りだったから、ゾクリと欲が動いた。
すぐに隣の建物にある衣服を売っている店に入る。桐谷サンから連絡は通っているらしく、既に夢子ちゃんに似合いそうな服が何着も試着室の近くに並べられていた。
「あ、これいいかも。ならこっちと……」
「え!靴やアクセサリーまで……?!」
何度目かの驚きの声。
元々お嬢様の割に、こういう買い物の仕方になれていないらしい。
まぁ俺様も、元の世界では忍だったし、先日竜の旦那と観た恋愛映画ってやつの真似事をしたまでだけどねー。
「……全身俺様色に染まらせてみたかったんだよ。中も今夜俺様が開発してあげる」
「ぁっ!」
わざと夢子ちゃんの弱い耳元で囁いてから、ペロリと舌先で耳を舐めた。
彼女が腰が抜けたようになったのを支えてから、また笑ってしまう。
……あはー、今日はまだ始まったばかりだし。
君と俺様の愛もまだまだ序盤だぜ?
覚悟してなよ、夢子ちゃん
俺様色に染まればいいよ
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