『というわけでー、お誕生日おめでとうございますっ!!』 「はぁ?!おい、おどれなんで電話で済ませとんねん!しばくぞ、ごらぁっ?!」 『ひぃ!!小春おねぇ様との二人っきりパーティーがいいと思って気を使ったのに理不尽に怒られてるっ!!』 電話向こうの間抜けな声にまたイラッとする。 スマホをくるりと周囲に向けて、賑やかなホテルの一室の現状を伝えてやった。 「……聞こえたやろ、ど阿呆」 『は、はぁ……何やら小石川さんと謙也さんの叫び声が聞こえました!あと、金ちゃんの笑い声と……』 「せや。小春と二人っきりどころか、いつものメンバーでどんちゃん騒ぎやで」 『……あっれー?光くんに聞いてた話と全然違いますねー』 「マヌケな夢野は騙されたんやろうな」 『えー……まぁでも!光くんにプレゼントを渡してもらうように伝えてあるので!』 「は?おどれふざけとんのか」 『なんでですか?!』 イライラしている己自身の答えに吐き気がするような感覚に陥りながら、少し熱の上がった顔を片手で覆う。 「……今からでも来んかい!!」 カッと叫んだからか、ピザやら色々乗ってるテーブル横に腰掛けとった財前が意味深な視線を俺に向けた。 凍てつくような視線が俺の心を見透かしているようで、思わず目線を外す。 「ユウくん、そんな怒鳴ってもあかんで」 「こ、小春ぅ……」 ぱっとスマホが取り上げられ、いつものように軽やかに笑う小春が猫のように目を細めて人差し指を揺らした。 「詩織ちゃーん?小春やけど、今からここに来てあげてくれへん?ユウくんな、ほんまは寂しがり屋やからな……プレゼント、直接手渡されたいんやわぁ」 「こ、小春!何を勝手に──」 『──そういうことなら仕方が無いですねぇ』 うふっと笑った小春と同時にスマホから聞こえた声に胸が締め付けられる。 「……ふふ、詩織ちゃん、すぐ来てくれるみたいやで」 「……はっ、初めから来いって話じゃアホ」 「ユウくん、素直にならなあかんで?」 嬉しいくせに。と続けた小春の腕を掴んで、脇腹を擽った。 ケラケラと笑いながら小春は楽しげに俺の頭を撫でる。 ──せやかて。 今日ぐらい、ワガママになってもええやろ。 思わず呟きかけたセリフを必死に飲み込んで、部屋の出入口の扉をずっと眺めるのだった。 9/11 一氏ユウジ[ 36 / 64 ][ 戻る ] |