『ねぇねぇアキラくん、外に出てきてくれたまえ』 「は?」 いきなり夜にかかってきた電話。 スマホに耳を傾けながら、眉間にシワを寄せる。 「何言ってんだよ?わけわかんねぇ」 気楽にもしもしなんて電話を取った自分を後悔しながら、電波向こうの夢野のアホがムゥっと唸った声を聞いた。 部屋の窓にかかっていたカーテンをそっと開けて、家の前の道路に目を凝らす。 ……うわ。 思わず声に出そうになった音を発しないように必死に口元を手で抑えた。 夢野のアホがいる。 そう認識した瞬間に、ドクンっと胸が高鳴った。 今日は俺の誕生日で。 夢野からかかってくる前に電話していた深司に「おめでとう。でもムカつくからあんまりはしゃがないでよ」なんて言われていたけど。 まさか夢野は祝いに来てくれたんじゃないだろうか。 慌てて部屋から駆け出して階段を降りる。 一瞬転げ落ちそうになったけど、必死に足を踏ん張って玄関の扉を開けた。 「アキラくん!」 へらっとアホみたいな満面の笑みで夢野が嬉しそうな声を出す。 それだけなのに、めちゃくちゃ幸せな気持ちになった。 「お誕生日おめでとう!!えへへ、はいっ、誕生日プレゼント!」 「お、あ……ありがとうっ!」 思いっきり破顔してるとは思うが、誰も見ていないからいいだろ。なんて思う。 ぎゅっと抱き締めた包装箱は思ったよりも軽かった。 「あ、開けてもいいか?」 「え、あ、うん!恥ずかしいけど、いいよ」 俺が笑ったら夢野は照れ臭そうに微笑んで。 快諾してくれたので、勢いのまま包装紙を剥がす。 箱を開けたら、木目調の写真立てが入ってあって中に部活の皆との練習中の様子などが次々と映し出された。 「あぁ、これ……デジタルフォトフレームなのか……」 「うん、そうなの!!」 写真のチョイスは深司くんたちにもご協力頂いたんだよ!なんて笑う夢野はどこまでも可愛くて。 思わずぎゅっと抱きしめてしまってた。 「へう?!」 「……はっ、変な声!」 二人して真っ赤になってるくせに、俺は精一杯憎まれ口を吐き出す。 それからダッシュで家の中に入った。 ……お礼、ちゃんと言えたっけ……? 扉を閉めてしまってから、ふとそんなことを考えて悩んで。 一先ずメッセージアプリでお礼だけを送信したら、パンダのスタンプで「無問題」なんて返ってきたのだった。 8/26 神尾アキラ[ 33 / 64 ][ 戻る ] |