庭球連載番外編 | ナノ


「死なすど?!なんで俺まで……っ」

「もう一氏さん!風邪引きますよ!大切な小春お姉さまにその風邪が移ったらどうします?!」

「くっ……はよ、せぇや」

クッソ!
なんでこのちび女に頭をタオルでごしごしされなあかんねん!

ちらりと隣を見たら、さっきまで頭を拭かれとった謙也が至福の表情でキモかった。
財前に後ろからがしがし蹴られているというのに、あのデレ顔である。ほんまどないしてん。本気でこんなパンダ好きのアホが好きなんやろうか。

「あ、一氏さん、ポクポン人形ちゃんとつけてくれてるんですね!えへへ」
「小春とお揃いやからやぞ」
「ですよねー。でもありがとうございます!嬉しいです。ふへへ」
「その笑い声きっしょ!!」
「……心が痛い」

タオルで視界が奪われとるから、夢野の表情なんかわからんかったけども、だいぶダメージを与えれたやろと鼻で笑う。
些細な反抗。
なんでこんな気に入らんのか今としてはわからんけども。
でも白石や謙也、財前を見れば十分や。
一人の女にそわそわしたり落ち込んだりしてカッコ悪いねん。
そんなん俺は味わいたくなんかあらへん。

「大体、俺には小春が──」
「あー、一氏さんの顔をはじめて真っ正面から見たんですが、バンダナも外してるからか……なんか、普通にイケメンさんなんですね。涼しげで端正というか」

タオルがくしゃっと視界から消えたと思ったら、目の前に夢野の顔があって瞠目する。
なんでこない近くに……あ、髪を拭いてるから、そらこの距離で。

大きなくりくりとした目が興味深そうに俺を見つめていた。
瞳のなかに映る俺は、なんて間抜け面しとるんやろうか。


ドクンっと、漫画みたいな心臓の音が己の中に響いたのがわかった。


ちゃう、ちゃうねん、違うんや!!

「……エンガチョっ!!」

「何故に?!」


その後白石の番やったけども、案の定エクスタシーしてもうて夢野が今度はエンガチョしとった。そして管理小屋の戸は完全に閉じられとった。

人生ホレたもん負けや!

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