「死なすど?!なんで俺まで……っ」 「もう一氏さん!風邪引きますよ!大切な小春お姉さまにその風邪が移ったらどうします?!」 「くっ……はよ、せぇや」 クッソ! なんでこのちび女に頭をタオルでごしごしされなあかんねん! ちらりと隣を見たら、さっきまで頭を拭かれとった謙也が至福の表情でキモかった。 財前に後ろからがしがし蹴られているというのに、あのデレ顔である。ほんまどないしてん。本気でこんなパンダ好きのアホが好きなんやろうか。 「あ、一氏さん、ポクポン人形ちゃんとつけてくれてるんですね!えへへ」 「小春とお揃いやからやぞ」 「ですよねー。でもありがとうございます!嬉しいです。ふへへ」 「その笑い声きっしょ!!」 「……心が痛い」 タオルで視界が奪われとるから、夢野の表情なんかわからんかったけども、だいぶダメージを与えれたやろと鼻で笑う。 些細な反抗。 なんでこんな気に入らんのか今としてはわからんけども。 でも白石や謙也、財前を見れば十分や。 一人の女にそわそわしたり落ち込んだりしてカッコ悪いねん。 そんなん俺は味わいたくなんかあらへん。 「大体、俺には小春が──」 「あー、一氏さんの顔をはじめて真っ正面から見たんですが、バンダナも外してるからか……なんか、普通にイケメンさんなんですね。涼しげで端正というか」 タオルがくしゃっと視界から消えたと思ったら、目の前に夢野の顔があって瞠目する。 なんでこない近くに……あ、髪を拭いてるから、そらこの距離で。 大きなくりくりとした目が興味深そうに俺を見つめていた。 瞳のなかに映る俺は、なんて間抜け面しとるんやろうか。 ドクンっと、漫画みたいな心臓の音が己の中に響いたのがわかった。 ちゃう、ちゃうねん、違うんや!! 「……エンガチョっ!!」 「何故に?!」 その後白石の番やったけども、案の定エクスタシーしてもうて夢野が今度はエンガチョしとった。そして管理小屋の戸は完全に閉じられとった。 人生ホレたもん負けや![ 14 / 64 ][ 戻る ] |