庭球連載番外編 | ナノ


とりあえず夜の焚き火のために小枝を集めていたが、後ろを振り向いたら夢野が日吉にこめかみを拳でぐりぐりされているところだった。

「痛い痛いっ、ひどい、若くん、私、一応女の子!」

「はっ!それとこれとなんの関係がある。余計なことばっか言ってるのはお前だろ」

「ひ、日吉、詩織も反省してるし」

「室町は黙ってろ」

「別に詩織は君のじゃないだろ……あーぁ、むかつくなぁ」

「今だけ伊武に同感やわ」

俺が口を開く前に室町、伊武、財前が日吉を睨む。いや室町だけは逆に睨まれてたような気がするが。

つか、俺からすればこの四人自体がめちゃくちゃムカツク。
大体この四人は今も夢野の手をとったり頭を撫でたり色々と触りすぎだと思う。距離が近すぎるんだよ、マジで。

「おーい、お前らいい加減にして、枝を集めろっての!」

イライラしてたら、向日さんが集めていた枝の一本で四人を軽く叩いた。ちょっとそれを見てすっきりする。
が、日吉はわざとらしく深いため息をつくと、夢野の手を引いて「ほら行くぞ」と当たり前のように言いやがった。

「何普通に連れ去っとんるん?」

「は?連れ去るとか何を言ってるんだ。こいつは氷帝生だろ」

そして財前が夢野のもうひとつの手を掴んで。

「え、あの、みんなで集めたらいいんじゃないかな?え、ごめんなさい、私がキノコを見るたびに若くん言ってごめんなさい」

中心で困ったように挙動不審になり始めた夢野にはっとする。
キョロキョロしていた夢野を見つめていた俺はばっちりと目が合ったのだ。

そ、そうだ。
ここで夢野を助けたら、感謝されるかもしれない。もっと普通に話せるようになるかもしれねぇ。

色々ぐるぐる考えて、思い付いた台詞を口に出す。

「そ、そういやー、柳先輩の目を間近でばっちりと見てしまうと身体が石になるんだぜ!」

「「……は?」」

何故かその場にいた全員が呆れたような、ワケわからんと言ったような顔で俺を見てくる。
な、なんだよ!なんでそんな可哀想なやつを見る目で見てくるんだよ!

「……わかる、わかるよ!柳さんも乾さんも怖いよね。メデューサっぽいよね」

夢野だけがしみじみした風に俺に何度も頷いてきた。何故か小さい子供をあやすような言い方で若干いらっとする。

「……切原。自分知っとるか?うちの部長の腕の包帯は外すと毒によって殺されんねんで」

「ちょっと光く──」

夢野を押し退けて財前が真剣な顔で俺にそういってきた。
ど、通りであの人ずっと包帯巻いてるはずだよ!柳先輩も怖いけど白石さんも怖い武器をもってる人だったんだな!

「……切原。毎晩、あの海岸で青い人魂が浮いてるのを知っているか?」

「な、マジかよ!」
「ひぃっ!!」

日吉の話に目を見開けたら、隣で向日さんが悲鳴を発して転けていた。

「……そういえば、詩織の管理小屋の横の物置小屋……あそこで俺たち以外の人間を見たって目撃談がたくさんあったんだって……」
「や、やめろ!」
「よりにもよって私の管理小屋近く!」

ボソボソと呟く伊武の話に今度は向日さんが涙目になっていた。それを助け起こそうとしていた夢野も向日さんと手を握りあって震えている。

「そういえば、俺と南部長だけしか見てないんだけど、一度あの方角にありもしない灯台が見えたんだよな」
「ひいいっ!」

室町の話の頃には、向日さんは夢野と抱き合っていて。
とりあえずムカついたので、日吉たちと一緒に向日さんをひっぺがす。
それから何してたんだっけかと思い出して、そのあとは大人しく枝を集め直したのだった。

わちゃわちゃっと!平常運転

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