「ねぇ」 あー、暑い、汗気持ち悪い。とか、夏の日差しにバテながら思考を飛ばしていたら「ねぇ、呼んでるんだけど」と、いきなり脳天にチョップを食らった。 く、くそ、何故拙者はいきなり脳天チョップを受けなければいけないのだ、解せぬ、理不尽すぎる。 「聞いてる?」 理不尽の塊である──リョーマくんを見上げる。 不愉快そうな顔で私を見下してくれていたので、重い腰を上げ立ち上がった。 「ふふん」 「その笑い方、ムカつくんだけど」 「ほほほ、勝者の余裕の笑みですな」 「1.5センチくらいで勝った気にならないでくれる?」 「えー、なに言われても勝利は覆らないからぁ」 わざとギャルっぽく言ってみたら、私が休んでいた木陰が揺れた。 いや、木がリョーマくんの力によって少し揺れたといった方がいいかもしれない。 もちろん揺れたのは木の幹じゃなくて、葉っぱというか。いかん、動揺して何言ってるのかわからなくなってきた。 とりあえず、止まってしまった呼吸を思い出す。 目の前に迫るリョーマくんの整った綺麗な顔を直視できずに、彼の喉元を見る。 喉仏のあたりを、つぅっと一滴の汗が流れ落ちていた。色っぽい。いや、もう中学一年生の色気じゃない。 「……っ、ありがとうって答えた方がいいの?センパイ?」 挑戦的な瞳に、威圧的な声音。 いつも通りバカな私はすべてを口に出していて。 「か、かか、壁ドンじゃなくて、これじゃあ幹ドンだよね!!あは、ははー」 「……ほんと、バカだよね」 「バカじゃないもん」 「……じゃあ俺の目を見なよ」 「──……っ」 み、見れるかー!! いまこそ盛大に声に出して叫ぶところじゃないのかと思いつつ、それが出来ない超ヘタレは私である。 「……あと半年経ったら抜く予定だから」 吐息がかかるくらい、リョーマくんが近い。 「その時は……わかってるよね?詩織センパイ?」 意地悪なリョーマくんは、すでに涙目になっている私に止めをさした。 耳元で、いつもより低音で。 「わ」 やっと声が出せたときには、もうリョーマくんの背中は遠くて。 「わかるかーっ!!」 その背中に精一杯叫んだけども、彼は振り返りもしなかった。 ただ、足元に置かれてあった冷たいミネラルウォーターのペットボトルに、リョーマくんの優しさを感じて「リョーマくんのバカ野郎」と叫ぶのだけはやめて上げた。ちくしょう、私だって半年したらもっと身長伸びてるもん、今に見ておれ! ――――――――― 竜胆様へ 大変お待たせいたしました。リクエストでリハビリさせていただいてすみません。でも気合いいれました。もうみてくださってるかすら不安要素ですが、リクエストありがとうございました! 身長スクランブル[ 63 / 64 ][ 戻る ] |