────もう、あの夏は帰ってこないんだなと思った。 「泣かせたら駄目だC〜!」 「泣かせるつもりはありませんよ」 そうきっぱりといい放った日吉に、うんうんと何度も頷く。 泣きたくないのに涙が出そうになって、必死に我慢した。 無言で肩を叩いてくれた滝に振り返らず、俺はずびっと鼻水をすする。 跡部も忍足も俺よりだいぶ大人で、あんなに執着していたのに、もう二人を祝福したりしてる。 ……違う。 本当は俺と同じで悔しいんだと思う。 でも、いくら駄々をこねても、何をしても、彼女の気持ちが変わらないなら。 詩織ちゃんの気持ちが自分をみないなら。 ただ、彼女の幸せを祈るだけなんだ。 悔しくて悔しくて、泣きたくてたまらないけど。 それぐらい好きだったから。 「……も、もし、泣かせたりしたら、絶対奪うから!覚悟しとくC〜!!」 そう叫んだら、鳳も大きく頷いた。 宍戸の目も、がっくんの目も、真剣で。 「……油断はしません」 涼しい顔でそうきっぱりいい放った日吉に、すごく悔しいのと同時に、彼女が選んだ相手は正解なんだろうなって思った。 ────距離さえなかったら、と考えんのは、逃げかもしれへん。 ≪Eve:正直、俺は諦めきれてないよ。……そんな簡単な想いじゃなかったから≫ ≪eleven:……俺も、あいつのいつもの冗談だったらどんなに良かったか≫ ≪善哉:……俺は絶対諦めへん≫ 「諦めるわけないやろ」 俺の発言から無言になったチャットルームの画面を眺めながら、何度目かの舌打ちをした。 俺があんたらと同じように関東やったら。 自転車飛ばして会いにいける距離にすんどったら。 俺は今すぐにでも、詩織に会いに行くのに。 そして、日吉のアホからさらってやるのに。 ≪Eve:……ふぅん。じゃあ俺も諦めない≫ ≪eleven:え……、あ、それが許されるなら、俺も……まだチャンスはあるって信じたいけど、≫ ≪善哉:ようアイツが言っとったことやんけ。……下剋上、やろ?≫ そうや。 覚悟しとけや。 そう易々とこのまま受け入れてたまるかボケ。 ――――――――― りん様へ 代表的な感じで、吐露したのは、ジロー先輩と光くんでした! リクエスト、ありがとうございました! もしも一縷の望みがあるならば[ 62 / 64 ][ 戻る ] |