「ねぇ神奈川に戻って来なよ」 「え!」 口をあんぐり開けて、大きな目をパチパチさせている夢野さんは、きっと間違いなく『この人は何度同じことを言うんだろう』って顔だった。 「……だって君が東京──氷帝にいるのが面白くないんだもん」 「だもんっとか可愛くいってもダメなものはダメです。保護者である榊おじさんが許してくれませんよ!」 さらに頬を膨らませて横目で見たら、夢野さんは真っ赤になってあわあわしていた。 この子の恋人の座を手に入れてひと月が経過するけど、相変わらず落ち着きのない子である。 まぁそれもそのはずだ。ひと月経過したといっても、実際に二人っきりで会うのは、まだ三回目。 現実に転がる距離が、二人の心の距離を縮める邪魔になっているのは確かだ。 「……君の気持ちは、どうなの?……もし、榊さんが許可したら、俺と一緒に住みたい?」 「ちゅ、中学生がなんてことを!しかも色気出てるし!殺す気ですか!私の心臓撃ち抜くつもりですか!おとーさん!スナイパーがいるよ!」 「茶化さないでいいから。ほら真剣に答えなよ。三秒以内に言わないと跡部にさっきのプリクラ送信する。いーち、にー……」 「い、……一緒に……いい、いたい、です……」 ……あぁ。 どっちがスナイパーなんだが。 今にも泣き出しそうな顔を俯かせて、小さく吐き出された言葉に、俺は見事に撃ち抜かれたようだ。 「……一緒にいてくれるの?」 コクリと。 目をぎゅっと瞑って必死に頭を縦に振る。 「俺のこと、好き?」 コク。 「……これからは名前で呼んでもいい?」 ……コクリ。 「じゃあ結婚して、詩織」 「……っ、え?」 ばっと顔を上げて驚いたような詩織に、俺はくっと喉を鳴らして笑った。 「……か、怪盗ルパン!」 「フフ……、本当に君は面白いなぁ」 可愛い、俺だけの恋人。 どうかこの幸せを、誰にも奪われませんように。 ――――――――― シルク様へ。 もしものお話でした。 ……幸村くん、描くの楽しい。どうしましょう(笑) リクエスト、ありがとうございました! そっくりそのまま君に返す[ 57 / 64 ][ 戻る ] |