「宍戸さんとジャッカルさんって似てますねっ」 「「は?」」 氷帝との合同練習中に夢野がやってきて、たまたま水飲み場に居合わせた俺と宍戸にそう告げてきた。 よくわからない言動に宍戸と同じ反応を返す。 大きな黒目をキョロキョロと動かしながら、夢野は再びニヤリと笑みを浮かべた。 「お二人ってそれぞれのテニス部内常識人って感じがするというか。苦労人というか」 「……あー」 隣の宍戸がタオルで額を拭いながら、何やら納得し始めた。 「お互い頑張ろうぜ」 「……宍戸は別に苦労してないだろう。慕ってくれる後輩も俺のところとは全然違う」 「え!切原くん可愛いじゃないですか!思春期青年!」 「いや、可愛いのは可愛い……が。連日奢らされたり宿題手伝わされたりするんだぞ」 「ご愁傷様です」 「……だな」 遠い目をしたら、どこか他人事のように言葉を投げてきた夢野と宍戸に目頭が熱くなる。 「……いいなぁ、鳳は素直みたいだしな。ダブルスパートナーとしても……はぁ」 脳裏を過ぎったブン太の姿に眉間に皺を寄せた。 赤也以上の問題児である。俺はいつもヤツに振り回されているのだ。 「……ご、しゅ、……さまでっす」 「……っ、だな」 「…………笑い過ぎじゃねぇか。なぁおい」 小刻みに肩を震わせ腹を抱えている二人にいらっとした。 「……よし、宍戸さん!苦労人キングのジャッカルさんに髪の毛あげてください!植毛してさしあげましょうぶほっ」 「ばっ!おま、笑かすな……っ!」 「…………そうか楽しいか。好きなだけ笑えよ」 もう慣れてんだよ。と水飲み場の隅を眺めながら、汗をかいていたらしい頭を拭った。 そしたら「ぬぃびぃっ!ぶぼはっ」と盛大に夢野が吹き出す。 どうやらちょうど俺の頭の真上に虹がかかっていたらしく、その日夢野は笑いすぎで腹が筋肉痛になったらしい。 ……後から夢野と宍戸から、このことについて詫びのメールが届いていた。 うちのダブルスパートナーや後輩よりかは素直に謝ることができるようなので、許してやろうと思ったのだった。 ――――――――― みぃな様へ。 よくわからない話ですみません。書いている私は楽しかったです。 ありがとうございました 苦労人の名は[ 51 / 64 ][ 戻る ] |