私の限界
「えぇい!たるんどるっ!!」

ガッツーンっと漫画のような効果音を鳴らしながら、赤髪ガム男さんもとい丸井さんの頭に拳骨を勢いよく落としたのは真田さんだった。
あの金ちゃんと対戦していた老け顔の真田さんである。

「いいい゛っ」とうずくまった丸井さんを引きずってジャッカルさんが去っていった。

実は額にガムをくっつけられた事件の後、丸井さんはフルネームを名乗り「シクヨロ!」とか言ってきた。から、全力でジロー先輩と何故か先輩が持っていたムースポッキーを食べて無視した。
そのすぐあとに苦笑しながら、ジャッカルさんがジャッカル桑原だと名乗って下さったので、ムースポッキーを一本ジロー先輩の了承を得て差し上げた。
そしたら、丸井さんがキレて私の頭の上に全体重をのせてきたからたまったもんじゃなかった。

「重い!丸井ブン太さん、重い!超重い」

「てめぇ、何ンの部分小さく言ってんだよぃ!あーもう、ムカつくー!もう許さねー!!」

そんなやり取りをしていたら、冒頭のあれです。すっごい痛そうだった。否、マジで。

そして何故か真田さんに私も只今絶賛睨まれている。あれですか、たぶんうるさかったんだ。どうしよう、拳骨落とされたらどうしよう。

ジロー先輩はいつの間にか滝先輩らのところに逃げていた。え、畜生、ちょっと否だいぶ可愛いからってあのヤロウっ!
そんなことを考えながら、ちらちら氷帝軍団を見ていたら日吉くんと目があった。

「……ば か お ん な」

口パクでそう言われていた。日吉くんのこと、これからキノコって呼んでやるぞ!って決めていたら、真田さんが深い溜め息を吐き出す。

「…………お前も、手伝いは有り難いが……その、短いスカートは……けしからん!!」

「けしからんですか!!」

つい復唱してしまった。否、だって、普段けしからんとか使わないじゃないですか。だから、まさかスカートが注意されるとは思っていなかった驚きというか。煩いとかじゃなかったという驚きというか。
ただ単にけしからん!という響きが気に入っただけというか。
むしろ、スカートをけしからん!という真田さんの思考がけしからん!……ごめんなさい。使ってみたかったの。


「「ぶふぅっ」」

何やら辺りから幾つも吹き出すような音が聞こえた。千石さんとか桃ちゃんとか、丸井さんとかが腹抱えて爆笑している。え、どういうこと。

「……否、まさか」

私、今の全部口に出してたんじゃないだろうか。

慌てて氷帝の皆さんを見れば、日吉くん、跡部様、岳人先輩、宍戸先輩の四人が口を合わせたようにゆっくり動かして「ばーか」と私へ教えてくれた。
何故か忍足先輩だけ「しろ、やろ」と変な電波を送信してきた。っていうか、なんだって。私のパンツの色がバレている。見られたということなのか!え、いつ?!否、それよりも今は

「……ご、ごごめんなさいーっ」

意識を戻して、真っ赤な顔でぷるぷる震えている真田さんの怒りが落ちる前に私は走ってその場を逃げたのだった。

目指すはペンションである。

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