「はー……ここがそのホテルか」

「いやぁん☆めっちゃ高級ホテルやんっ!しかも真田きゅんも一緒やねんやろ!あぁん、アタシ嬉しいわぁ☆」

「た、た、たわけ!金色、離れんかぁ!!」
「こ、小春っ!浮気か!!」

口を開けて見上げたホテルを眺めながら、後ろで騒がしくしとる小春とユウジ、立海の真田へと視線を向ける。

「……あ、あんな。こんな高級そうなホテルの前で騒がんといてくれるか?恥ずかしいから」
「白石と同意見やわ」

白石と小石川が溜息付きながらそう言って、六角のメンバーも緊張気味にコクコクと頷いていた。

「すっげー高そうやし……」
「わん、跡部のこと、一生敬ってもいい気がしてきたさぁ」
「「それな」」
「……全て無料ですからね」
「「神様やあらんが」」

比嘉はもう皆してぽかんと口を開けて、俺ら四天宝寺よりも呆然具合が酷かった。
平古場と知念の台詞に甲斐と不知火が頷いて。
木手の台詞にはもう全員が祈ってた。

「うん。とりあえず、ホテルは確認できたね。俺たちは六日後から宿泊させてもらう予定だから。各自それまでに必要なものは準備するように」
「あぁ、そうだな」
「赤也はどうせゲーム機とか持ってくんだろぃ?」
「え、なんでわかったんすか?!」
「いや、お前……この間の合宿でも持ってきてたじゃねぇか……ブン太じゃなくても分かるぜ」

それから幸村の発言に柳、丸井、切原、ジャッカルがそんなことを話している。

「六角も今日は場所を確認しに来ただけやったやんなー?」
「うん、そうだよ!遠山くん!六日後には合流するから、その時は同じ一年生同士として宜しくね!」
「にひひっ!葵が来んの、楽しみにしてるわぁ」

金ちゃんが同じ一年生の葵と楽しそうに笑いあってて、これから暫くここで生活が始まんのかーと俺は妙にソワソワ落ち着かない。

「あ……詩織のマンション見えとる」
「ほー、どこと?」
「……はっ、そない簡単に言うわけないっすわ」

後ろでそんな会話をしていた財前と千歳に振り向いたら、めっちゃ腹立つ顔で財前が鼻で笑っとった。

「おー、マジだな!ダビデ!」
「マンションに住みまんしょん……ぷっ」
「ダビデぇえっ」

黒羽の飛び蹴りのツッコミに負けてられへんと小春とユウジがまた漫才を始めようとするが、真剣な顔した銀に襟首を掴まれる。

「ちっ……そうやった。天根や黒羽さんも来たことあるんやった。ついでに切原のアホと仁王さんも……」
「誰がアホだよっ財前っ」
「ピヨ」

財前がはぁっと溜息ついて、切原が財前につっかかる。その後ろで仁王が目を細めた。その目線の先を見れば、高めのマンションが一つ見えとる。


──うわ。

夢野さんが住んどるんがあそこで。とはっきり理解した瞬間、途端にドキドキと胸が高鳴った。
自分でもえらいビックリして動揺してしまうぐらい、鼓動が早なる。

「謙也……?」

白石が胸を押さえた俺を心配そうに見て肩を叩いてきた。

「い、いや、なんもあらへん!はよ、入ろうやっちゅー話やで!」

めっちゃ早口でそう言ってしまうわ、顔が熱いわで財前に冷たい目で見られる。

それから立海と六角の皆と別れて、比嘉と一緒にホテルに入ることにした。



──夏が終わったと思ったけど、まだまだ暑くて。
彼女のそばにおれるこの状況を喜んでいる自分がいる。

昨日の焼肉屋での、ギュッと夢野さんが抱きついてきた感触と温もりを思い出した。


『大丈夫じゃないですっ謙也さんはとてもカッコイイから、私の心臓は持たないです謙也さんのバカぁ』


あぁ、あれが本当に彼女の本心やとしたら……と、膨らむ期待が大き過ぎる。

……まだ終わらせんでもええんやんな。

ホテルに入る前に、もう一度だけチラッとマンションに視線を向けたのだった。





(side 忍足謙也)

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