「お。ふらーさー」

ぴろんっと鳴ったのは凛のスマホだったらしく、凛がめんどくさそうに画面を開いて、そう呟いたから「は?」と豆腐チャンプルーに向けていた顔を上げる。

「ふらーって……」
「あぁ、夢野さー」

ソーキそばをずるずる吸いながら、指で画面をフリックして文字を入力している凛をまじまじと見つめた。
一体、いつの間にアドレスとか色々交換してたんさー。
いやそれよりも、今の通知はメッセージアプリに違いないさー。

「いみくじわからん。なんで夢野とメッセージのやり取りしてるんさー」

「んー?あー、あぬひゃーが帰るときにアドレス渡しといたんさー」

特になんも思ってない様子で凛は続けた。

「そしたら、二日前にあぬひゃーがスマホに機種変したらしくって。あっちからメッセージ送ってきたさー」

「な、なんでそんな段取りいいんさー」

正直、ずるいと思った。
凛は夢野のことをふらーふらー言っていたし、興味なさそうだったのに。

「ちむはごーよ……」

「あー?……それなら裕次郎も連絡したらいいさー」

あっけらかんと笑ってバシバシと肩を叩かれた。
叩いたついでにわんの豆腐チャンプルーを一口スプーンですくっていく凛は、なにも考えてない顔だった。

「……段取りとして、まずわんがスマホ買わないとダメさー」

「あー……でも、メールはできるさー」

「ん、順番的に……連絡先伝える方が先かスマホが先か悩むさー」

真剣な顔で豆腐チャンプルーを見つめていたら、凛は吹き出すように笑った。

「なんくるないさー!ははっ、あの夢野相手に段取りとか考えなくていいさー!」

そう言われてもわんにはとても重要なのだ。
ましてやいなぐ相手である。
いくらふらーないなぐだとしても、だ。

そこではっとした。何を悩んでいるのだろうと。
そして脳裏に浮かんだ夢野の顔を思い出して、泣いていた彼女が笑うと胸が温かくなったのを思い出す。

「んー……わからん」

これほど悩むのは、いなぐ相手だからか。
それとも夢野だからかは、今はまだはっきりとわからなかった。




(side 甲斐裕次郎)

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