あのアホみたいな騒がしい合宿が終わってすぐのことやった。
ミーティングだと、跡部が部室にレギュラー陣と滝を呼んで。まぁあれやな。いつもの代わり映えせんメンバーやった。
ジローも無理矢理連れてこられたみたいで机に突っ伏しとるし、日吉も涼しい顔で麦茶を飲んどる。
雰囲気的にあんま重要そうなことちゃうんかなとか考えとったら、樺地が跡部に命令されて一人一人に何か箱を配り始めた。

「なっ?!……え、これ貰ってもいいのか?!」

俺が箱を開ける前に、岳人が中を見たらしく椅子に座っとるのに跳び跳ねとった。
なんやと首を傾げれば、宍戸が「スマートフォンじゃねぇか」と漏らす。

「マジかいな」

レギュラー陣と滝だけといっても、相当するやろ。それをぽんっとプレゼントしてくれんのかい。
やっぱ跡部はアホベやと思うわ。
いや感謝するけども。

「ふん、この間の合宿で比嘉の連中の何人かがスマホだっただろ。俺は元々持ってるが……俺様のチームメイトとして持っといてもらわないといけねぇな」

「でも、本当にいいんですか?その、代金とか……」

「アーン?俺がそんなケチ臭いこと言うとでも思ったのか?別にいくらでも使えばいい」

「マジマジありがとうだCー!!」

跡部が鳳の遠慮がちな言葉に当たり前のようにそう言うと、寝ていたジローが興奮したように起きた。

「つい昨日、詩織ちゃんが榊監督からGPSとか便利だからかわかんないけど、朝起きたらスマホに無理矢理変えられてたって電話で言ってたんだCー!」
「え、あいつもスマホに変えたのかよ!クソクソっ、俺にもちゃんと言えよなっ!」

詩織ちゃんがスマホに機種変更しとったんもビックリやけど、それよりも昨日ジローが詩織ちゃんと電話しとったんが驚愕やわ。
なんなん、俺の知らんとこで抜け駆けせんといて。

日吉をちらりと見れば、案の定ジローに向かって舌打ちをしていた。
それを見ていた滝がまたニヤニヤしとるのも視界の端で見えたが、今はつっこむのをやめる。



その日はミーティングのあと、テニスコートで各自練習に励んだわけやけども、帰ったらもう夕食前で見たい番組録画しなと焦った。
めっちゃ好きな恋愛小説がドラマ化やからな。これは外されへん。

「……っと」

そうや、スマホにも慣れななぁ。
どうせ使うんやったら、自分好みにホーム画面やら曲やらカスタマイズしときたいし。

シャワーを浴びてから、家族と夕食をとって、自室に戻る。ドラマはまた明日でもええわ。録画しとるんやしと真新しいスマホの画面と暫くにらめっこしとった。

そしたら、ぴろりんっと画面上に何かの通知が表示される。


パンダ詩織<スマホデビューおめでとうございます!


なんなん、パンダ詩織って。
ほんまにパンダ好きすぎやろ。もう名字みたいになってもうてるやん。
ていうか自分も昨日スマホデビューしたとこやないか。なんで1日違いで先輩面しとるんや。
ほんま可愛いな。にやけてまうわ。
いやそれよりも……


ゆーし<詩織ちゃん!俺とメッセージアプリでのやり取りしてくれるん?

パンダ詩織<今してますやんー

ゆーし<なんで関西弁(笑)

パンダ詩織<これチャットみたいで好き

ゆーし<俺は詩織ちゃんが好きやで


次にぴろりんっと通知が来たら、詩織ちゃんとのアプリ画面に『殿、ご冗談を!』という謎のちょんまげ武士の画像が送られてきた。

……あかん。これ、ちょっとはまりそうやわ。




(side 忍足侑士)

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