──合宿所から帰宅したのは数時間後、その日の夕方だった。

バスの中では乾先輩や桃先輩らに、詩織センパイに別れ際にした行為についてつっこまれまくった。
……まぁだろうなとは思ってて、わざとあぁいうことしたんだけど。





「……ねぇ」

「おー、なんだリョーマ!もう帰ってたのか!おかえりー」

「ただいま……そんなことより、さ。…………欲しいんだけど」

「は?」

ぶらぶらと廊下を歩いて近付いてきた父さんに小さく息を吐く。
するとトタトタとカルピンがやってきたから、そっとフワフワの毛を撫でてやった。

「ほぁら」

「…………欲しいんだけど、携帯電話」

吐き出すように言えば、父さんが「……ぷ」と吹き出す。
……わかっていたとはいえ、不愉快だ。

「どうしたぁ?リョーマ!ついに好きな女の子でもできたか?え、それで欲しいって?」

ニヤニヤと気色悪い笑みを浮かべて俺を見ている父さんの無防備な臑を蹴る。

「いだっ!ちょ、リョーマ、おま、何……っ」

「別に、ムカついただけ」

「っ、それが物を強請る態度か?!あー可愛くねぇえ……」

ふんっと鼻を鳴らしてから、カルピンを抱いて居間に行くことにした。

後ろから父さんがついてきて「しょうがねぇなぁ……」と頭をかいているのを横目でみる。


……携帯電話に一番初めに登録するアドレスはもう決まってるから。

ついにやけた口元を隠すようにカルピンの身体に顔をうずめた。



(side 越前リョーマ)

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