01


 

ユミside

 サファイアさんの問いに、どう答えたら良いか戸惑う。

 旅を始めて、わかった事もあったけれど、わからなくなった事も幾多あった。

 いつも偽りばかりの私でも、サファイアさんの顔を見ていると、率直に言ってしまおうと思った。

「私は……、バトルしてる人が好き。コンテストをしてる人が好き。勝って喜んでる人が好き。苦手だけど……、だけど、私はどっちも好き」

 ………。

 沈黙。

 うわぁ、変な事言ったかな……。言った……よね。

 ど、どうしよう──

「そうだね。苦手なんて努力すれば何時でも克服出来るし。ユミは自分が思ってるよりずっと才能あるし」

 心配になる私の考えを遮るには充分過ぎる位、心を落ち着かせてくれる言葉をかけてくれるルビー。

 ルビー……。

「そうたい! あたしだって最初から強かったわけじゃなかと! 失敗を繰り返して強くなっていったと!」

 偽りの無い、屈託の笑みで私に微笑みかけてくれるサファイアさん。

 サファイアさん……。

「ありがとう……。二人共……」

 三人で笑い合う。

 良かった。本当に良い人達で……。


 * * *


 お風呂入ったし、後は寝るだけ!

 私はサファイアさんに服を渡してから押し入れから二人分の羽毛布団をんしょんしょと取り出す。

「───っ!?」

 ん?

「どうしたの? お姉ちゃん」
「どうしたもこうしたもなか!! なんね、このカッコ!!」

 目の前にはすでに着替えを完了させているサファイアさん。

 私は小首を傾げる。……あ、骨が鳴った。

 何って……、

「ネグリジェ?」
「ねぐ……? なんね、それ。なして、こんなにビラビラしてると!?」

 ネグリジェ知らないのか……。

 因みに、私は普通にパジャマを着ていた。

 確かに怪しんで当然かもしれない。そうで無くとも、怪しいのに。

「私には少し大きくって」
「……ま、まぁ、良いったい。ルビーさえ来なければ──」

 コンコン

「はーい! どうぞ!」

 ──ガチャ

「頼まれてたデザート作ってき……た」

 まるでお約束の様に、ベストタイミングでルビーが入ってくる。

 ルビーとサファイアさんは互いに向き合ったまま固まってる。

「わーい! お兄ちゃん嫌いだけど、お兄ちゃんのデザート大好きー」

 さらっと酷い事を言って、私はルビーの手にあるお盆からルビーが落としてしまう前にデザートを二人分、ひょいと取ってやる。

 デザートのプリンアラモードが今度は私の手の上でふるふると震える。

 そのプリンアラモードはモモンの実やオレンの実などの果物が綺麗に飾ってあり、見てるだけで私の口からヨダレが出そうだった。

 プリンをミニ机の上に置いて、固まっている二人とは反対にテンションが上がっている私は活動的に動き回る。何しろ、私の大好きな甘い物を目の前にしているのだからテンションが上がらない訳が無い!

 一方で、やっと状況を咀嚼出来たのかサファイアさんがやっと金縛りから解放される。

「ル、ルル、ルビー!?」
「サファイア、その格好……。ユミだな?」

 モグモグ。

 わー、ルビーが赤くなったの初めて見たー。

 ルビーが恨めしそうに睨んで来るが、そんなのお構い無しにニッコリと微笑んでやる。

「可愛いでしょう。──お兄ちゃん好みで」
「………いや、まぁCuteだけどさ……」
「なっ、ルビー!?」

 わぁい、茹でダコみたい。

「ルビー! 早く出ていくったい!!」
「何で?」

 ニヤリとルビーが微笑む。

 私はこれを黒ルビーと呼んでいたりする。

「──っ!?」

 黒ルビーは歯止めがきかなくて困る。

 まぁ、サファイアさん面白いし、いっか。

「私、出てくね」
「──っ!!」

 ブンブンと首を横に振って私のパジャマの裾を掴む。

「サファイア」

 ルビーがサファイアさんに迫る。サファイアさんが驚いて私を掴んでた手を放す。私が出ていく。部屋から悲鳴が聞こえて来る。私が扉の前で腹を抱えて大笑い。

 まさにトントン拍子で、拍車をかける様に笑いが込み上げてくる。


 あぁ、こんなに楽しいの、久しぶり……。







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