ごめん。ごめんな。でも許してくれ。一人でもう一つの世界に閉じ籠ることを。私にはこれしか思いつかなかった。お前たちが幸せになる方法が。

あの時思った。人間の足音がし、慌ててシオンに『近寄るな』と叫んだ。シオンは助かったが、人間が襲ってきたことの恐怖は拭えない。シオンも私も。こんな森の奥、ひっそり暮らしているというのに、何が不満なんだ。お前らに何も迷惑などかけていない。これも私が人間でないからか?私がバケモノだからか?そんなの、酷いじゃないか。私は好き好んでこの姿に生まれたのではない。私だって普通に生きたかった。生きているだけで襲われるなんて理不尽だ。
だから私はもう諦めた。変に期待なんてしない。この世界にあるのは絶望だけ。私がツキヒコやシオンの傍にいればいるほど、彼は、彼女は襲われる。今日は襲われるだけで済んだが、そのうち殺されるかもしれない。有り得ない話ではないのだ。
数百年生きた中で初めて出会ったんだ。私をこんなにも大切に想ってくれる人なんて。笑顔を見るだけで微笑みたくなるような、そんなあたたかい人になんてもうきっとこの先出会えない。そんな私の大切な人を、人間なんかに殺されてたまるか。私に酷いことをするのは構わない。気味が悪いのは私の方なんだからな。しかし、ツキヒコやシオンまでを襲うのは違うだろう。ツキヒコはお前らと同じ人間だ。お前らの村の住人だったんじゃないのか。
ああ。駄目だ、頭がごちゃごちゃだ。混乱して、何がなんだか分からない。人間は、本当によく分からない。ツキヒコのような優しい人間もいれば、なにもしていないのに襲ってくるような人間もいる。なんでだ。私がお前たちに危害を加えたわけでもないのに。
恨むなら……そうだな。神ぐらいしかいないな。
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