小桜茉莉
「きーどっ!!」
「ぅわああっ?!な、なんだよマリー!」
「えへへ。キドがびっくりしてくれたーっ」
暑い夏の一日。外の気温は天気予報の35度を上回り、エアコンなしではどこにもいられないような状態。そんな今日はアジトにはあまり人がいない。モモちゃんはお仕事、シンタローとエネちゃんは今日は来ないみたい。ヒビヤとコノハも来てないし、今現在ここにいるのはキド、私、カノ。あとセトが珍しくバイトが無くて、今日はお休みの日なんだとか。なんだかこのメンバーでいるのが少し懐かしくて。なんとなく、本当になんとなくキドを背後から襲ってみたのだ。キドは昔のアルバムを広げてたみたいで、アルバムに挟まってたらしい数十枚の写真が宙を舞う。
「ブッ……ちょ、キド…っ驚き方……っ」
一部始終を見ていたらしいカノが笑いを堪えながら(堪えられてない)キドの足元に散らばった写真を拾おうとする。私も慌てて落ちてしまった写真を拾い集める。
「あっ、き、キド…なんかごめんねっ!アルバム見てたの気づかなくて……っ!!」
「あぁ、別に良いんだが……ってカノ!笑いすぎだ!」
照れ隠しなのかカノの腹部目掛けてキドは綺麗にストレートを決める。うわぁ、痛そうだなぁ。でも照れてるキドって女の子らしくてすっごく可愛いんだよね。
「なあにバタバタしてるんすか?」
「あっセト!」
自室で休んでいたはずのセトの表情は明るい笑顔。日頃の疲れもちゃんと取れたみたい。あ、でもバタバタしてたから起こしちゃったのかな。だったら申し訳ないなぁ。
「ん、この写真……懐かしいっすね!」
机に置いてあった写真をセトは懐かしそうに手に取る。ちっちゃい頃のみんなってなんか新鮮で面白い。私も写真を見てみることにした。
「戸棚を整理してたらアルバムが出てきてな。いくつかアルバムに入りきらなかった写真が挟まってたみたいだな」
「へぇ〜そうなんだ。じゃ、今度みんなでアルバム買いに行こうよ。その写真入れるためにさぁ」
カノはいつのまにか復活していて、ニコニコと提案する。私の写真があるわけじゃないけど、カノの提案には賛成。アルバムにまとめといた方が見やすいもんね。
「そうだな」
「じゃあ今度みんなで選びに行くっすよ!」
キドもセトも賛成みたい。
「あっじゃ、じゃあアルバム二つ買おうよっ」
一つは今手元にある写真を入れるためのアルバム。
もう一つは──
「これからの、僕たちの写真を入れるためのアルバム、でしょ?」
やっぱりカノは察しがいい。
そう。モモちゃんやシンタロー、エネちゃん、コノハ、ヒビヤたちの写真とか。みんなでどっか行ったりしたときの写真とか。アルバムにまとめたら素敵だと思うんだ。アルバムを開くたびにその時の思い出が蘇るみたいで、見るたびにみんなと笑いあえる。
いつか別れの時は必ず来るけど。だからこそ私は今のこのみんなと一緒にいられる短い時間を精一杯楽しみたい。悲しむことよりもみんなで笑った方がきっと最後の時に後悔しないで済むから。
それに──私は幸せだったと笑顔で言いたいから。
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