ONE PIECE | ナノ


日常

「ゾーロ───っ!!!」
少し遠くからくいなの声が聞こえる。素振りをしていた手を止め、振り返る。
「何の用だ。くいな」
くいなは走ってきたらしく、少し息が上がっている。
「そ、そんな睨まなくても...」
どうやらおれは無意識のうちにくいなのこと
を睨んでたらしい。全く自覚はないが。
「あ、いや。別に睨んでた訳じゃねェよ...。で?何の用だよ」
「いや、ただ手合わせしてほしいなってだけなんだけど。道場のみんなはやってくれないし...。ゾロなら相手してくれると思ったんだけど」
そんなこと言われたらやるしかねェだろうが。そして今日こそ、こいつに勝つ!!
「あァ、いいぞ」
おれがそういうと、くいなは分かりやすく顔を明るくした。くそ、可愛いなこの野郎。
「ゾロならそう言ってくれると思ってた!!」

「もー、ゾロあまいよー!!」
うぐぐ ......ま、また負け......。もうすでに何回やったか分からないほどやっているが、おれは一度たりともこいつに勝てていない。
「も、もう一回......!!」
「諦めの悪さは立派だけど、何回やったらいいの......? もう、次が最後だからね?」
「分かった」
竹刀を握り直してくいなの前に立つ。
「行くよ......!!」
「......おう!!!」
ザザっと微かに音がすると、目の前にくいながいた。
「いつのまに......ッ?!」
「なぁに?余所見でもしてたの?」
ニヤッと余裕そうに笑うくいな。だがそんなことはいい。
ぐいぐい押され竹刀を挟んで顔が向かい合わせ ......って近すぎないか?!!!近い近い近い近い近い近い近い近い近い!!!!!
「?何ゾロ顔赤くしてんの?」
くいなはきょとんとした顔をしながら攻めることをやめない。ということは顔が近づくのは全然進行中な訳で。
ースパァンッ
あ。すごい音がしておれの竹刀が飛んでいった。
「ゾロ!ちょっとやる気ないわけ?!ゾロがもう一回って言ったんでしょ?」
「わ、悪ィ...疲れてんのかもしれないな......少ボーッとしてて」
口が裂けても顔が近くて照れてたなんて言えるわけがない。
「......まぁ、私が呼ぶ前から素振りしてたからねぇ...」
納得してくれたようで、少しおれはほっとした。
「じゃ、わたしは道場に戻るね。ゾロも疲れてんなら早めに帰んなよ?」
「あ、あァ。」
おれは竹刀を拾うと道場に戻っていく 、くいなの後ろ姿を見えなくなるまでずっと見ていた。


…あとがき…
小説投下専用の掲示板に一時期いた頃の短編です。
久しぶりに覗いたところこんなものがあったので、こちらにもあげさせていただきました。

更新(26/03/22)

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