ONE PIECE | ナノ


不器用な愛情表現

近くにいるときには何もしなかったのに。離れるときにそういう態度をとるなんて卑怯じゃないかと思う。そんなこと、私が言えたことじゃないかもしれないけど。

思えばアイツはいつも突然だった。そう、この日も突然。
「明日、出ようと思う。鷹の目、すまないが、船を貸してくれないか?」
一瞬僅かに時が止まった気がした。というか、私の心臓が止まりそうだった。
え?今なんて言った、コイツ。出る?明日?
「ほう。明日、か。船なら貸すが、お前がシャボンディに辿り着けるとは到底思えない。ゴースト娘、送ってやれ」
「はあ?!なんで私が!お前が送ってやりゃいいだろーが!!」
「俺はちょっと野暮用があってな」
涼しい顔をしてワインを飲む鷹の目を睨むが、完全に無視を決め込まれた。
「……お前航海できんのか?」
半信半疑、といった顔でじっとこちらを見てくるロロノア。なんだよ、そんなに信用ねぇのかよ。航海くらい、私ができねぇわけねぇだろ。ほんっと失礼なやつ。
「お前バカにしてんのか?!シャボンディぐらい行けるっての。お前みたいに方向音痴じゃねーし」
つい売り言葉に買い言葉で返してしまった。あ、と気づけばもう遅かった。ニヤリと笑い、有無を言わせないといった感じで鷹の目が一言。
「じゃあ、よろしく頼んだぞ」
はあ…。めんどくせえ。
まあでもこうなってはしょうがない。 せっかくシャボンディまで行くのだ。私もついでに買い物でも楽しもう。それにロロノアと2人で出掛けるんだ。せっかくだし、ドレスも新調して、お洒落をしよう。柄にもなく浮かれている自分がどうしようもなく嫌だった。相手がロロノアだから、なんて言うまでもない。


それは航海するために部屋で荷造りをしていたとき。洋服ダンスの奥から何着か引っ張り出すのに、埃が大量に出てくるからと扉を開けっぱなしにしていた。部屋が広いせいもあり、ロロノアがいたなんて、扉に背を向けている私に分かるわけがない。だから。
「急な話だったか」
なんて背後から声を掛けられたら驚くレベルの話じゃないのだ。心臓がストライキ起こしそうだからやめて欲しい。
「……別に」
「相変わらず可愛くねぇな」
知ってる。つい素直になれなくて、言いたいことが言えない。正直に言ってしまえば、行って欲しくないし、もう少し早く言ってくれれば良かったのにと思っている。
「……悪ぃな」
「なんで謝ってんだ。あたしはお前のことなんかどうでもいいんだよ。お前なんか、さっさと船に戻ればいいんだ」
ぷい、と顔をそっぽに向けると、ため息が聞こえた。本当に私は可愛くない。きっとロロノアから見たら、相当嫌な小娘に映ってるんだろうな。全部自分のせいだけど。
「そうだな。……じゃあ、明日はよろしく頼む」
足音が遠ざかる。なんだよ、律儀に礼だけ言いに来たのか?コイツは。それだけ?もっと、別れの言葉みたいなのがあったっていいんじゃないのか。それとも私なんて別れを告げるほどの人間でもないと思われてるのか。
……なんだよ。寂しいじゃねぇか。
声に出したわけでもないのに、ロロノアは変に察したのか、立ち止まってポツリと。
「寂しいなら寂しいって素直に言った方が可愛いぞ」
自分でも分かるほどに顔が熱くなる。
「……は、はあ?!」
つい反射的に声を上げてしまう。我ながら情けない声。これじゃあ肯定してるようにしか聞こえねぇじゃねぇか。
「縁があればまた会えるだろ。少しの間だ、多分」
気恥ずかしそうにポリポリと頭をかくロロノアはやっぱりいつものロロノアで。だから尚更。
「……柄にもねぇこと言ってんじゃねーよ……。似合わねぇんだよ……!」
俯きながら返事を返す私は溢れそうになる涙を止めるのに必死だった。こんなにも動揺するなんて。私らしくもない。
どうしたら涙って防げるのか必死に考えていると、遠ざかった筈の足音が近づいてきた。
「……なん、」
言葉を遮るように頭に手を乗っけられる。触ってんじゃねぇなんて悪態をつこうとするものの、やっぱり本心に嘘はつけない。どうしてもふざけるななんて言葉が口から出ない。ただ、こうしてるのが不思議と居心地が良かった。
終わり、を示すかのようにぽんぽんと頭を撫でられる。
「じゃあな、また明日」
ボソリと私に聞こえるか聞こえないかぐらいの声で言う。
全く、変なところで優しい。まだ温もりの残る頭を抑えながら、ぼんやりと、小さくなるロロノアの背中を見ていた。

ずっと夢だったペローナちゃん。書けた。嬉しい。けど、なにこれ何か違う感が漂いすぎですね。もっとゾロペロ書いて慣れたい_(:3」∠)_

更新(27/08/20)


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