Attack on Titan | ナノ


君と歩む世界

女の子みたいに白い肌、大きな碧眼、綺麗な金髪、華奢な体。周りが男ばかりの環境のせいか、みんなの僕を見る目が最近怪しくなってきているのは気のせいじゃない。
いやまぁ、中性的だ中性的だとは昔から言われていたし、今更ではあるんだけどね。でもさすがに僕だって男なわけだし、そんな可愛いとかなんだとか言われて嬉しいわけがない。着替えのときに感じる視線はきっと考えすぎなんかじゃない。僕の貞操が割りと真面目にやばいんじゃないだろうか。

そんなことを悶々と考えて午後十二時。就寝時刻。今日は任務で街の宿屋を使わせて貰っているから、みんなで雑魚寝。この年の男たちが雑魚寝なんてすると、凄い窮屈だし、汗臭いしであまりメリットはないけど。なんだかこういうのって、普段ないから少し楽しかったりする。まぁ本当に雑魚寝なもんだから、僕の顔のすぐ近くには誰だか分からない仲間の足が放り出されてたりもするんだけどね。
「ある、みん」
「ん?」
大きめのTシャツの端を軽く掴まれる。小さい声だけど、僕には分かる。エレンだ。
寝返りを打って、エレンの方に体を向ける。
「どうしたの。寝れない?」
「ん、」
寝惚けているのかなんなのか、とろんとした目で見つめられる。
なんだろうとぼんやり見つめ返すと、エレンはのそのそとかなりのスローモーションで抱きついてきた。
え?え?訳分からなすぎて少しの間文字どおり固まってしまう。
「ごめん、アルミン。ちょっとだけでいいから、……ごめん」
掠れた声が妙に色っぽい。……って何考えてるんだ、僕は。エレンだぞ。エレンだぞ。
「……何か、あったの?」
体はがっちり抱かれているから、首だけ動かして返事を待つ。
ぐす、と鼻を啜る音がして余計に心配になる。泣いてる?
「僕で良かったら、聞くよ?」
頼りないと思うけどね。そう付け加えて小さく笑う。
「アルミンは頼りなくなんかない。……アルミンがいると。……おれ、安心すんだ」
耳にかかる息がくすぐったくて。そんなことを言ってくれたこともくすぐったくて。自分でも頬が熱くなるのが分かった。
「俺さ、……やっぱりまだ自分が巨人だってことが信じられないんだ。……自分が一番憎んでたものと同じだって、事実なのにさ。本当のことなのに、受け入れられないんだ」
僕は目を見開いた。あの物怖じしないエレンが。巨人を前にしても挫けることのなかったエレンが、弱音を吐いている。
僕だって考えなかった訳じゃない。エレンが巨人になれることを知って、エレンがどれだけ苦しんでいるか。でもそれは僕が想像した「何に対しても負けない強い意思を持ったエレン」が「これくらい苦しんでいた」っていう勝手なシミュレーションであって、実際のエレンがどれだけ苦しんでいるかとは違う。普通なら受け入れられない。
でも、エレンはそれを受け入れて、その力を人類のために使う。
そう、思い込んでいた。
人類のこの先を全て僕と同い年の人に任せる。そう言われたのに、僕は何故か「エレンならやってくれる」と思い込んでいた。
エレンにとっては、それが一番辛いんじゃないか。普通ならそんな重圧に耐えられるわけがない筈じゃないか。
きっと僕も心のどこかで思っていたんだ。エレンは「普通」じゃないから大丈夫だと。
それが、エレンの首を絞めているということにも気づかずに。
「ごめんね。エレン。こんなに一緒にいるのに、何も分かってなかった」
「なんでアルミンが謝るんだよ」
震える声でなんとか言葉を続ける。
「僕はさ、弱虫で一人じゃなんもできない役立たずだけど。君がいてくれたからここまで来れたんだ。……だからって訳じゃないけど、僕は少し君を買い被ってたのかもしれない」
エレンは黙って話を聞いてくれていた。微かに頷きながら。
「エレンは僕と同い年で、僕と同じように町で生活していた"人間"だ。君と僕の境遇の違いなんて、少ししかない。君が、……君がなんでもできる、"人類の救世主"だなんていう考えは間違ってたんだ」
涙が止まらなかった。何が悲しいって。今になって初めてこんなことに気づいたこと。エレンの抱えていた悩みにエレンが泣くまで気づけなかったこと。
「ごめん、エレン。僕が無茶な計画ばっかり立てるから、エレンが大変な思いばっかりするんだ」
「それは違う。アルミンがいたからこそ、今まで保守的に考えられてきた作戦が変わったんだ。保守的な考えじゃ巨人に反撃なんていつまで経っても出来るわけがない。アルミンはそれでいい。俺が、俺がもっと、もっと力を使いこなせれば、……俺が、俺が悪いんだ」
苦しそうな嗚咽が静まり返った部屋に響く。
僕は君に抱き締められて、体温を分けることしかできない。
僕はミカサみたいに強くない。だからエレンを守ることはできない。
僕は兵長みたいに正しい判断なんてできない。だからエレンを導くことはできない。
僕はジャンやコニーみたいに冗談を言ったりできない。だからエレンの気を紛らすことはできない。
でも、きっと僕にしかできないこともある。
さっきまであれほど、男子たちに気をつけなければと思っていたのに、エレンに対しては不思議と嫌な気はしなかった。

──どんな形でもいい。エレンの力になりたい。
そう呟いてゆっくりと目を閉じた。


…あとがき…
久し振りにリクエスト消化です!
今回は匿名の方からのリクエストでした。エレアルで甘くなっているかはちょっと……(白目)
なんかシリアスになってしまった気もしますが(;´-`A

題名はこちらのサイト様から ⇒秋桜

更新(27/11/14)


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