Kagero project | ナノ


夏は侮れない

▽シンコノが付き合ってる前提

「ねぇ、シンタロー。散歩しよう」
突然、コノハにそう言われた。まぁ、突然というか、天気の良い日は外に出たがるから予測していなかったわけではないが。
普段出掛けるのは俺以外の団員とだから、どうせ今日も俺は関係ないんだろうとばかり思っていたが、そういえば今日のアジトは人が少ない。緊急ミッションだかなんだかと言って朝からみんないない。残ったマリーは内職で忙しいし、セトもアルバイト。うるさいエネもミッションに参加中。
「極力日は浴びたくないんだけどな」
そうボソリと言って、のっそりソファから立ち上がるとコノハの顔が分かりやすく明るくなった。
仕方ない。恋人の頼みなんかそうそう断れるもんじゃないからな。

「暑いね。……シンタロー、大丈夫?」
「お前にはこれが大丈夫に見えるのか?」
「……見えないから心配してるんだよ」
そうか、ありがとう。その優しさがあるならどうして俺を外に連れ出した……?
そう言いたいところだが、誘いにのったのは俺だしな。よし、もやし根性でも頑張るんだ。
「公園行こう」
よろよろな俺の手を引いて、さっさと公園に入っていく。あくまでも、早く帰ろうっていう考えはないんだな。
「座って、ここ」
コノハは先にベンチに腰かけると、すぐ横をぺちぺちと叩いた。
「おう、ありがとう」
座るとそこはだいぶ日陰だったようで、かなり涼しい。なんだ、この日向との温度差。上を見上げると、大木がそこにどんと構えていた。なるほど、これのおかげか。
公園に入ったのはそういう意図があったのか。意外とコイツ考えてるんだな。
コノハの優しさを直に感じると、なんだか異様に照れ臭くなって俯く。
もはや自分の顔の火照りが、温度のせいか恥ずかしさのせいなのか分からなくなってきた。
「ね、シンタロー。まだ暑い?」
「あぁ……、まぁお前のお陰で少しは良くなったが……」
「おんぶする?「やめろ」
こいつ本気でやりかねないのが怖い。
こんな日中から男が男に背負われてたらおかしいだろうよ。元気に走り回ってる子供の保護者達に後ろ指指され、「見ちゃダメよ〜〜」ってされんだろ。さすがの俺もそれはやだよ。
それにしてもあっちぃな。スマホを取り出して天気のアプリを開く。見た途端に後悔した。現在の温度は38℃。知らなきゃ良かった。現実的な数字を見ると、どうしても暑く感じてしまう。
「シンタロー、水飲む?」
あからさまにぐったりした俺を見てコノハが公園に備え付けてある水飲み場を指差す。うん、優しい。
「……そうだな」
よっこいせ、とのろのろと立ち上がって水飲み場までふらふらと歩く。
コノハが気遣ってくれたのか、蛇口を捻る。
「っ、うあっ、」
「あ」
思いっきり顔面に水を食らう。お前俺になんの恨みがあるんだ。公園の水だからか、ほとんどぬるま湯状態。
「ごめん、……どのくらい出していいかわからなくて…、その、大丈夫……?」
「いや、大丈夫ではないだろうよ、どう見ても」
コノハの「うっかり」は別に今に始まったことではないし、怒ってないけど。
かなりの勢いの水を食らったために、俺愛用の赤ジャージ、共に黒Tまでもがびしょびしょだ。肌弱いからあんまり脱ぎたくなかったが、致し方ない。
「ごめんね。すぐ帰ろ。風邪引いたら大変、だから」
「そうだな」
濡れた赤ジャージを脱いで腰に巻くと、コノハの息を呑む音がした。
「シンタロー、それえろい」
「は?」
何を言い出すのかと思ったらお前暑さで脳味噌溶けたのか。
「濡れた服に、真っ白な肌……。それに顔火照っててなんか、……すごい」
目がとろんとしてるあたり、完全にコイツも熱中症だ。早く帰らないと俺の身が多分18禁的な意味で危ない。
「うるせぇ、帰るぞ!早くしねぇと軟弱なんだから風邪引くぞ俺は!!!」
できるだけ声を張ってコノハの腕を掴んでどかどかと歩く。
「……うん。早く、帰ろ」

意外と積極的に返ってきた言葉に俺は悪寒しかしなかった。

これだから、夏は侮れない。

…あとがき…
ほのぼのってなんですかね(哲学)

10000打リクエスト消化作品です、一応…
きゃらめる。様リクエストの、「シンコノでほのぼの公園デート」でした!ほのぼのデートとか私には無理でした!!
きゃらめる。様のみお持ち帰り自由です!

更新(27/12/30)


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