Kagero project | ナノ


嘘は駄目です

「嘘は駄目だからな」
「うん?!」
「いやだから嘘はつくなよ」
「説明になってないよ?!」
なぜか朝起きたらおはようよりも先にこれだ。昨日エイプリルフールで話しかけるなり『嘘だ』と言われ、ほとんど喋ることを許してもらえなかった僕がなにをしたというのか。まず『おはよう』くらい言ってくれたっていいじゃないか。そろそろこれはいじめだと思う。
「どうしたの?キド...あ、カノ!嘘は駄目なんだよ!!」
「マリーまでなにさ?!」
「朝から賑やかっすね。どうしたんすか」
「わっセト!」
後ろからぬっと顔を出されてビックリした。欺く暇もなく素直に顔に出る。
「そんなビックリしなくてもいいじゃないっすか」
「と、ところでなんだけどさ、
キドもマリーも二人して僕に嘘は駄目って言ってくるんだけど...」
その言葉だけでセトはどうやらピンと来たみたいでぽん、と手を打った。
「ああ、カノは知らないんすか?今日は4月2日、つまり嘘をついちゃいけない日なんすよ」
「え、ああ......エイプリルフールの次の日だからってこと?」
いやでもそれにしたってなんで僕だけ集中攻撃みたいな。酷いよね?
「そうっす。いやぁ俺も朝マリーに会うなり言われてビックリしたんすよ」
あ、セトも言われたんだ。なんか安心した。やっぱそうだよね。いじめじゃないよね。
「まあセトは嘘つかないし、念を押しとくならばカノだろう?と、いうわけで俺はカノに言っといた」
「なにそれ分担なの?!」
「い、イベントだしちゃんとやっとかないと」
「それ誰に吹き込まれたのマリー?!」
エネちゃんか......はたまたノリのいいキサラギちゃんか...あとはシンタロー君といったところか。
ヒビヤ君やコノハではなさそうだし。
「えっとね、あの子!あの......水色の髪してて、いつもシンタローと一緒にいる子...」
「ああ、エネか」
「まあイベントを楽しむのはいいっすけどね。そこまで忠実にしなきゃいけない、って訳じゃないんすよ?気持ちでいいんす。気持ちで」
「えっ、そうなの?」
きょとんとした様子でこちらをじっと見てくる。あ、え、僕に答え求めてるの?
「そうd「こいつの言うことは信じるな」
キドが僕の前に立って素晴らしいタイミングで言葉を被せてきた。まさかエイプリルフールが終わった今日でも僕は喋らせてもらえないのか。普段の行いのせいだとか、それを言われちゃおしまいだけどさ。それにしても酷いと思う。これはいじめだ。明らかに。
「昨日もそうだが今日も油断はできない」
なんでキドは敵と戦ってる風なんだろうか。僕敵だっけ。いや、明らかに味方なんですけど。戦う相手素晴らしく間違えてるよ。
「そうだよねっ!カノは嘘つきだもんねっ!」
「キド、マリーに何言t「そうだ。騙されるのは屈辱だ」
屈辱!?あっえ、そこなんだ!そこだったんだ?!
なんかセトが『大変っすね』っていうオーラを全面に出して苦笑いしてるんだけど。それなら一つや二つフォローしてくれてもよくない?
「あ、朝ごはんまだだったな。......作るか」
「そ、そうっすね。俺手伝うっすよ」
「おう、助かる」
「じゃあ私お花にお水あげてくるねっ」
あれもしかしてこの雰囲気なら流れにのって喋れるんじゃ!やっと喋れる喜びに浮かれて口を開いた途端。
「僕はt「お前は喋るな」
ですよねー。なんか察してました。
どうやら、キド含むメカクシ団は今日一日僕に喋らせてくれないようです。なんだろう。とりあえず泣きたい。


…あとがき…
エイプリルフールは嘘つき者の独壇場、というのが定番なのですが、その日は信頼されず口も聞いてもらえない。これが事実だったり。

更新(26/04/02)

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