Kagero project | ナノ


一緒に

俺は目の前で正座しながらプルプル震えているアヤノに声をかけた。
「な、なあに?シンタロー...」
震え声ながらもちゃんと返事がきた。
無視されなくて良かった。"無視"は俺の繊細な心を傷つけるのには一番効果的な技だ。
前回の中間テストだかのときにされてかなり俺の心は傷を負った。
今なお現在進行形で癒している。
「お前の手にあるテストの点数は何点だ?」
「......に、にひゃくてんっ!!!」
「んなわけあるか!!」
百点満点で二百取れるってどういうことだ。
お前はあれか。俺が知らない間に魔法使いにでもなったか。
「それで?なんでお前は平均以下しかも評価が3から2に落ちるような点数をとった?」
うちの学校は基本的に40点までなら3をつけてくれる。
他の提出物やらなんやらが多少出されていなくても、だ。相当甘いと思う。だが、アヤノは今回30点。今まで3をキープしていたアヤノにとって痛手になるのは明らかだ。
「い、いや〜」
アヤノは目を魚もびっくりするくらいに泳がせながらぼそぼそと言い訳をしだした。
「ちょ、ちょっと問題の意味が分からなくて〜」
「前回のテストより明らかに悪化してる?!」
「てへっ☆」
「てへじゃねえよいくらかわいくても許されることと許されないことくらいあるんだからな?!」
「まあほら、次頑張ればいいから」
「それ親とかに言われるセリフだから。自分で言っちゃいけないやつだから」
そもそもなぜこいつの親は先生なのにこいつはこんなにも頭のできが違うのか。
そんなもの比べるな、と言われればそれまでだが両親どちらも頭は良かったはずだ。
勉強の1つや2つ、教えてやってもいいと思う。まあ家族の事情やらなんやらがあるんだろうけど。
そこまで首を突っ込む必要ないか。俺は、わざと溜め息をついてぽそりと一言。
「俺の教えた甲斐は全くなし、か」
「いや、え、あの、そのっ、シンタローが悪いわけじゃないし気にないで」
「いやここまで結果が出ないとさすがに俺の教え方が悪かったんじゃ、って気になるんだが」
これは本気でそう思う。毎日のように図書館で勉強したのにこの点数。アヤノにやる気がないわけじゃない。ならば教えているこの俺こそが悪いのではないか。
「いや、あのね私小学校、中学校とこんな感じで先生に放課後とかに付き合ってもらってたんだけど」
アヤノはけろっとした顔でとてつもなく恐ろしいことを言い出した。
「最高でも80点しか取れなくて」
ん?80点?
「おいそれ充分だろ!!」
俺は勢いに任せてアヤノの肩を揺すぶる。
「今回30だろ?それに比べたらお前80も取れるんだろ?!」
「そっそりゃあまあっで、でもああれは奇跡というかまままぐれというかっ」
アヤノがとても喋りにくそうだったから俺は揺すぶるのをやめた。
「よしっじゃあ次は平均目指そうな」
「ほえ?へい...きん?」
あ。アヤノがフリーズした。
俺は斜め60度くらいの角度からチョップをかましてやった。昔からなんか、ほら言われてるだろ。壊れたテレビを直すときとかにさ、決まった角度で叩くと直る、みたいな。それそれ。
「次は学年末だぞ?分かってるよな?」
「いや、それはわかってる、けど」
「けど?」
「ううん、なんでもない」
そう言うとアヤノはにっこりして
「私、頑張るね!!」
「おう。俺も付き合ってやっから。頑張ろうな」
「うん!」

一瞬でも俺の顔が笑顔に見えたなら。それはきっと気のせいだ。

…あとがき…
今回は自分がテスト終わったばっかりだったので、テスト後シンアヤです。これまた やまなし、意味なし、オチなしと3拍子綺麗に整っちゃいましたね。つらいです。

更新(26/03/12)


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