とある男子高校生の一日

 時期は秋。段々と寒くなってきた最近は、どうしても暖かい布団から出るのが嫌でみの虫のようにグルグルと布団を身体に巻いて寝ている。それでも登校時間が近づいてくれば否応なしに起きなければいけない。
 サボろうなんてそんな事、小心者な俺にはできません。

「将一、早く起きなさい!」

 階下から母の催促する声が聞こえてくる。ああもう嫌だ。もそもそと動いてぬくい布団から這い出ると、制服を着て1階へと向かった。
 リビングに行くと姉さんが食パンにツナを塗りたくっていた。薄いパンの上にこんもりと盛られたそれを見てから、姉さんに「おはよう」と声を掛ける。「んー」と言う生返事の後であっち行って、と手を振られた。ひどい姉だ。

「将一、あんたも早く食べなさい」
「へーい」

 トーストを焼いて、コーンスープを作る。最近の電気ポットはお湯が沸くのが早くて助かるよな。
 トーストの上に昨日使いに走らされ買ってきたオレンジのジャムを塗って食べる。それを見ていた姉さんが「塗り過ぎ」と一言呟いた。姉さんに言われたくないよ。不満が顔に出ていたのか足を蹴られた。朝から痛い。

「今日はゆっくりね」
「姉さんもゆっくりだね」
「私は元からこの時間だもの。普段のあんたが早いのよ」
「そっか」
「そうよ」

 姉さんともそもそと食べていると、母さんが「ほら、お弁当」と千円札を渡してきた。俺と姉さんは一度だけ視線を交わすと無言でそれを制服のポケットにしまった。母さん、これは弁当じゃないよ、そんな一言を呑み込んで。

「それじゃ、行ってきます」
「「行ってらっしゃい」」

 母さんと姉さんの声を背にして学校へ向かう。高校へはここから歩いて30分、自転車で15分くらいで着く。姉さんの女子高は反対側に45分くらいかければ着くらしい。一度女子高とやらに行ってみたい気もするけど姉さんからは来るなと言われているから行った事はない。でも幼馴染は行ったことがあるらしい。うらやましい奴め。
 そんな事を考えて歩いていると、前方に見知った後ろ姿があった。

「……目に痛いピンク色が」


[戻る]
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -