※『三寒四温』その後。
※※R15?程度のエロ描写注意!
女性の容姿が美しいことのたとえ。
*花顔雪膚(かがんせっぷ)*
抜けるように、白い肌──。こういうのを、正に雪みたいな肌というのだろう。
「なーにヤラシイ眼でジロジロ見てんだヨ。このエロ魔神!」
「んー。チャイナって、めっちゃ白ェよなーって思って」
「これ、マミーの血筋みたい。兄貴だって男のクセにこんな色だし」
「神威、だっけ?」
うん、と神楽は苦虫を潰したような顔をする。こいつの癖なのか、自分の兄の話になると、途端にこんな表情を見せる。
「……前は、白すぎてイヤだったアル。向こうでも珍しいもんだから、一時は仲間外れとかされたこともあったし」
「何でィ、やられっぱなしだったのかよ? てめーらしくもねェ」
「いちいち逆らうのも面倒だったのヨ。ただでさえ美少女でモテモテだったから妬まれ放題だったしナ」
「どこの国でも女同士ってのは怖ェな……。ってか、美少女って誰だ? 普通にスルーしちまったじゃねェか」
聞いたことはないが、留学などという極めて珍しい道を選んだのも、こいつなりに色々考えてのことだったろう。その色々の中に、外見で判断されることのコンプレックスもあったはずだ。──俺が、かつてそうであったように。
「俺もな、外見で判断されんのには正直いい思い出はねーんだよなァ。お前と違って俺は男だからマシかもしんねェけど」
「総悟の場合は、中身とのギャップがありすぎだからネ。男女関係なしに本性バレた時点でドン引きアルナ」
「俺が外見まんまの性格とか、寒気するけどなァ」
「自分で言うなヨ!」
突っ込みながらも、神楽の顔はすっかり穏やかになり、笑顔さえ覗き始めた。その様子に、こっちまでつられて笑顔になっていく。
「──だからさ。同族嫌悪ってヤツで、お前のこと気に食わなかったのかもしんねェ」
「奇遇アルナ。それ、まんまコッチの台詞ネ」
「とことん似たもの同士ってーの?」
その気に食わないヤツが、気づけば好きなヤツ、になっていて。それがお互い同じなんだということにも、簡単に気づいた。だから、つき合い始めるのに、そんなに時間はかからなかったように思うのだが。
「──ホントは、たまに私ばっかり好きすぎて悔しくなる時があるのヨ」
「はァ!? 何でいきなりデレてんだよ、てめーは!!」
「日頃からツンデレやってると、まとめてどこかでデレておかないと好きの気持ちが溢れて大変なことになっちゃうのヨ」
──やべェ。どっちかというと、可愛くない言い方だってのに。照れて赤くなってる頬が、白さに映えて可愛さ倍増だとか。モジモジ動く度に、剥き出しの俺の腹筋に押しつけられる柔らかい膨らみだとか。どうしようもなく、躯の一部分が反応してしまうんですケド。
「──萌え殺す気か!」
「何アホなこと言ってるネ。……それより下で暴れ始めてる分身をどうにかしろヨ!」
そんなことを言われても、この素直な衝動は簡単に治まる筈がない。そもそも、何を隠そう(隠してたつもりはないが)現状の俺たちといえば。所謂、事後。つまりはコトをイタした直後だった訳で、布切れ一枚纏っていない真っ裸ってヤツであって。……まあ、だからこそ簡単に分身が復活してしまったということだ。理性なんぞ、欠片も残ってなくて当然だ。
「神楽さん、神楽さん」
「──何ヨ? オマエがそんな呼び方する時はイヤな予感しかしないアル!」
「いや、俺の息子のことはさて置いて。さっきからてめーの股の辺りが湿ってんだけど? 我慢出来ねェんなら早く言ってくれりゃいー……」
言いかけた瞬間、鳩尾に強烈な拳を一発。ガードする間もなかったために、まともに食らってしまった。
「おまっ……この場面でマジで殴るか、普通!?」
「やかましいアル! オマエがとんでもないことぬかすからじゃねーかヨ!!」
「んなこと言ったってなァ……こんだけ垂れ流しちまってんだから言い訳も出来ねんじゃねーの?」
「んぁっ……指挿れんな、バカッ!」
おーおー。愛しのチャイナ娘は嬉しいことに、かなり期待していたようだ。思わずニヤける口元を隠すこともせず、そのままほんのり紅く染まり出したエロい肢体に指を這わせていく。出来る限り、ネチっこく──官能的な雰囲気を作り出して。
「やっ……もうっ。こんな時までドSだなんてっっ」
「ははっ。褒め言葉じゃん、ソレ」
「〜〜褒めてないアルぅっ。お願いヨ……そー、ご。ちゃんと、シテ?」
「っ…………」
今ので、もう焦らすとか、そんなん無理です。一気に昇天しそうになりました!
「オイコラ、煽った責任はキッチリ取ってもらうぜィ? 覚悟は出来てんだろうなァ?」
快楽に流されかけていた神楽だったが、その蒼眼に情欲の炎を宿し睨みつけたかと思うと、挑戦的に俺の口唇を奪ってきやがった。
「やられっぱなしは性に合わないネ! かかってきやがれ、コノヤロー!!」
「あー、ハイハイ。ほんっとツンデレだよなァ──神楽」
ここぞとばかりに、耳元で名前を囁いてやれば。面白いくらいにビクビクと反応を見せる、柔らかな肢体。
──自分ばっかり好きすぎる、なんてこいつは言っていたが。そんな言葉は、バットで打ち返してやるさ。コッチの方こそ、好きすぎてどうにかなっちまいそうだっての。
今までは学校が一緒だったし、一応公認の仲でもあったから神楽を狙ってた男共への牽制もさほど必要はなかったが。この先は、同棲してはいても、大学は違うしバイトも始めたし。俺の目の届かないところで、自分がモテている自覚のまるでないコイツが──他のヤロー共に言い寄られたりすんのが目に見えて嫌になる。
こうなったら、ウザがられるの覚悟で迎えに行ってやるか? 俺も剣道の推薦で大学入ったから、そんなサボってもられないんだが。
そんなことを考えながら、欲望を胎内に吐露し続ける俺の下で。神楽もまた、今後の俺のモテっぷりを想定して大学に乗り込む計画を立てていたらしいと知ったのは────それから数日後に、本当に実行に移した神楽に惚れ直した時のことだった。