盛大に降り続いた雨が、漸く小降りに変わる。それに伴い、帰路を急ぐ人々の波が流れ始めた。
ざわめく街の片隅に、藤色の番傘の下で身を潜める一組の男女の姿があった。
片方は、サラリとした亜麻色の髪に見目も麗しい青年。もう片方は、珍しい赤橙色の髪に透けるような白い肌を持つ美少女。──先程から傘の下には、周りから見えないように路地裏の更に奥でお互いの隙間を埋めるように密着する2人の姿が。
「神楽……」
「んっ……な、に?」
「もっと、口開け」
「やっ……苦、しいネ」
「しゃーねぇなァ」
余裕のない少女の顎に手を掛けると、青年はその端正な顔を斜めに近づける。
「苦しいなんざ、言う暇も与えねぇから覚悟しとけや?」
「バ、カッ。何言って、っ!」
瞬間。貪るように、青年は少女の口唇に食らいついた。
絡み合う互いの粘膜が発する音に、自然に興奮が増していく。初めは羞恥心の方が強かった少女も、次第に積極的に吸いついたり絡めたり、忙しなく蠢いていった。
「あっ、待つ、ネ」
「んー? 何を、でさァ」
「や、ンッ……」
クチュッ、と吸いつく音と共に。2人の間を透明な糸が伸びて、ぷつりと切れた。
「ふっ……エロい」
「う、うっさいネ。エロはそっちダロ。このドS!」
「おぅ。褒め言葉さんきゅー」
更に深くなる接吻に溶かされながら、本能の赴くままに、青年と少女の密事は続く。
──雨が冷やした躰を熱していくように。甘く、淫らに、激しく。
雨上がりの傘の下