*過去ジャンル倉庫*


*Happy days,Happy time*


 貴方の幸福が私にとっての幸福なのよ、と囁く。
 すると、私が幸福なら自分も幸福なのだと貴方は微笑う。

 ねえ。
 私たちおんなじね? お互いの幸福が一致してるって、とっても素敵なこと。

「だが、お嬢ちゃんの幸福はこの宇宙に暮らす民全ての幸福に繋がるんだぜ?」
「あら。じゃあ、この宇宙はみんなが幸福ってこと?」
「そうだ。なんたって、お嬢ちゃんはこの神鳥の宇宙で唯一絶対の存在……女王陛下であらせられるのだからな」
「ふふ。そうね。でも、オスカー? 貴方の前にいる時の私は……」

“貴方に恋してるただの女の子でいたいから”

 だから、ね。今日は女王ではない、アンジェリーク=リモージュという一人の女の子に戻って。愛する人がこの世に生を受けた日を祝いたいの。


「陛下〜! 陛下!?」
「ロザリア様? 陛下がどうかされたんですか?」
「あら、エンジュ! ごめんなさい。はしたない姿を見せてしまっわね」
「陛下、いらっしゃらないんですか?」
「いえ。居場所の見当はついているのよ。絶対あの男の所に決まって……」
「あの男って、オスカー様のことですよね」
「ええ。あの子ったら、執務ほったらかして、もうっ!」


「……っくしゅん!」
「大丈夫か? お嬢ちゃん」
「ん〜〜。ロザリアが噂でもしてるのかしら?」
「ははっ。あの優秀な女王補佐官様のことだ。今頃陛下を探し回って頭に血を上らせていることだろうな」

 確かに。
 でも。最後は苦笑しながらも許してくれる。……それがロザリアだから。彼女は女王補佐官である前に、私にとってかけがえのない親友でもあるのだから。

「今度……。そうだわ! ジュリアスの惑星視察の執務に同行してもらうのはどうかしら?」
「執務であると同時に2人で過ごす時間を、か?」
「ええ! ね、いいアイデアだと思わない?」
「陛下らしい素晴らしいご配慮だと思います」

 わざと女王の前での態度でオスカーは答える。

「多少、職権乱用の感は否めませんが」
「あら。そんなこと言うなんて、まるでジュリアスみたいよ?」

 尊敬する首座の守護聖の名を挙げると、ピクリと右の眉が上がった。

「ふむ。あの方の教育が身に染みてきている証拠か……」
「ジュリアス化したオスカーっていうのも面白いかもしれないわねっ」
「お嬢ちゃんは、そうなった俺をご所望なのかい?」

 売り言葉に買い言葉。
 私たちは言葉のキャッチボールを楽しんだ。

「……お嬢ちゃんも随分言うようになったもんだな?」
「そりゃあ、伊達に女王やってる訳じゃないわ。それに、すぐ傍に口から生まれてきたような良いお手本になるヒトもいることだし?」
「それは俺のことか?」

 わざとそれには答えず、トスンと定位置であるオスカーの腕の中に飛び込む。

「まだまだ、口では敵わないもの」
「ほう? 勝つ気でいたのか、お嬢ちゃんは?」

 確かに、余程のことがなくちゃオスカーの巧い口になんて勝てないけど。
 でもね。そんなオスカーを黙らせる言葉、知ってるわ。

「オスカー?」
「ん? どうした?」

 そっと、耳元に口を寄せる。そして、小さく囁く。

 "愛してるわ、私のオスカー"

 不意をつかれて絶句するオスカーの頬に、触れるだけの小さなキスを一つ。

「アンジェリーク……」

 心なしか赤みを増したように感じるその頬を押さえながら、瞳を細めて、本当に驚いた様子で私を見下ろした。

「びっくりさせちゃった?」
「ああ。君からそんな言葉を聴けるのは、ベッドの中ぐらいだからな」
「っっ!? もう! オスカーったら!」

 上目遣いで不適に笑うオスカーは、やっぱり一筋縄ではいかない。やりこめたと思えば三倍は返ってくる。

「これは、心を込めてたっぷり礼をしなくては……な?」

 言いながら、手は腰に回ってくる。

「これでこそオスカーだわ」
「お褒めにあずかり光栄に存じます」
「ん〜。褒めたつもりはないんだけど……」
「しっ……。そのまま瞳を閉じて……」

 一気に抱き竦められ、噛みつくように口唇を奪われる。

「んっ……!」

 すぐに閉じた口唇をこじ開けられ、そこから舌を絡めとられてゆく。
 もう、言葉はいらない。
 2人の間には。熱い吐息と、オスカーが司る炎の様に燃え上がる恋情と。

「俺の炎に油を注いだのは君だからな。覚悟は出来ているか? アンジェリーク」

 そんなに遠くない、過去。
 一度は、貴方の手を振り払って、幸福になることに背を向けたこともあった。
 そう。それは、女王になることを決めた時。
 けれど。幸福でない女王の創る宇宙に、民を導くことなど出来ないと……貴方は微笑った。
 泣きながら、それでも貴方の手を拒絶した私を……優しく、強く、包み込んでくれた腕は私の凍り付いた心をゆっくり溶かしてくれた。
 私らしさを失わずに。真っ直ぐな気持ちを持ち続けるんだ、と諭して。
 その言葉があったから、今の私がいる。
 貴方の腕の中で、幸福を感じる時。貴方も幸福なんだと、その想いが伝わってくる時。この時間が永遠に続いて欲しいと思う。そして、願う。広い宇宙の隅々まで、この幸福感で満たされることを──。


 私の宇宙に暮らす、たくさんの民よ。私の声が届いてる?
 ねえ。あなたは、幸福な日々を送れているかしら?




オスカーさまは、永遠に私のナンバーワン守護聖さま!お相手は、リモちゃん以外は認めない(キリッ)

'05/02/14 up * '16/03/18 rewrite

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