*'14 総悟誕!*





※'11総悟誕&神楽誕の未来/土方視点/'14総悟誕で拍手御礼にup
※土ミツ要素を多大に含みます



「とおしろーさん!」

 大きな丸い瞳がキラキラ輝いて、舌足らずに自分の名を呼ぶ。

「どうしたんだ、四葉(ヨツバ)? とーちゃんとかーちゃんは何処行った?」
「えっとね。ちちうえが、きょうおたんじょうびなの! それでね。マミーがごちそうをつくるから、ちちうえがおしごとからかえってくるまで、おじちゃんにあそんでもらいなさいって」
「あー。総悟の奴、休み取らなかったんだっけか。代わりに明日有休……だもんな」
「ゆーきゅー???」
「休みのことだよ。四葉には難しかったなぁ」
「とおしろーさん。ヨツバのこと、すぐこどもあつかいするのダメ! ヨツバだって、レディなんですからねっ」

 薄い亜麻色の癖のない髪を頭の頂で結わえた――幼い姿が。想い出の女の姿に重なる。
 口調はそれ程似ている訳でもない。多分、似ているとしたら、それは総悟の幼い頃の……俺が出会った頃の、コイツの父親の姿であって。

「なぁ、四葉。お前、俺の名前よく知ってたな。一体、誰に訊いたんだ?」
「んーと、ね。ゆめで、ちちうえにちょっとにてるおんなのひとにあったの! そのひとがね。おじちゃんを、なまえでよんでみたらきっとビックリするわよ、っていっておしえてくれたの」
「ゆめで、だって……?」
「ヨツバ、ちちうえにきいたことあるからしってるよ。あれはね、ミツバおばちゃんなの」
「……!!」

 ――十四郎さん。


 四葉の笑顔が、完全にミツバの笑顔とオーバーラップした。俺は、あいつを泣かせて、哀しませてばかりいたはずなのに。どうして、記憶の中のあいつは――そうして笑ってくれるんだ?

「ちちうえのこと、みまもってあげてね、って。ミツバおばちゃんがいってたよ?」
「あいつは……空の上に行っても相変わらず心配性なんだな。総悟は相当なシスコンだったが、ミツバはミツバでかなりのブラコンじゃねーか」
「しす、こん? ぶらんこ?」

 どうにも、会話が成立しない。いや、こっちも独り言のようなもんだから仕方ないのだが。

「これからはね。ヨツバもいっしょだよ! とおしろーさんと、ちちうえをみまもるの」
「ははっ。心強いなぁ、そいつは」

 死んでも尚、弟の幸せを願う女――。俺の夢枕にさえ立ってくれないのは、かつての自分がした仕打ちに対する、せめてもの抵抗なのだろうか。

「とおしろーさん、かおのまんなかにおっきいしわがよってるよ? もっと、わらって? そうすれば、きっと、ミツバおばちゃんもわらってくれるからねっ」
「四葉……お前、」

 ニコニコ。顔面からそんな文字が浮かんでいそうなくらい、満面の笑み。

「……生意気!」

 軽く、デコピンしてやれば。いたーい!! と大袈裟にガキらしく泣き真似をしやがる。
 そんな泣き声が聴こえたからなのか――。

「人んちの娘、泣かすんじゃねーアルぅ!!」

 怒号が頭上から降ってきた。

「げっ。テメー、飯作りはどうしたんだよ!?」
「喧しいネ!! この変態ロリコンニコ中マヨラーめ!!!!」

 どんだけ余計な称号つけられてるんだ、俺は。怒る気も失せ、仕方なく四葉を見下ろすと……小さくあっかんべー、とやっているところを直視してしまった。

「こういうところは、やっぱ総悟の子供だよな」
「はあっ? 何、悟り開いたような顔してるのヨ? 何かキモい。ついでにオヤジ臭がするネ」
「そりゃ、仕方ねぇっての。実際、とうの昔にオッサンだ」
「加齢臭は、ニコチンじゃ消えないの知ってるアルか」

 うわぁ。毒舌全開、チャイナ娘。人妻になろうが、一児の母になろうが本質は全く変わらないようだ。

「四葉、似てきたみたいアルナ?」
「……はっ?」
「惚けなくてもいいネ。総悟がよく呟いてんだから、バレバレなのヨ」

 チャイナ娘は、甘えてくる四葉をヨイショ、と抱っこして座り込んだ。澄んだ碧の瞳は真っ直ぐにこちらを覗き込んでいて、逃さない、と言いたげに見える。

「……さっき、四葉が夢であいつに会った話をしてきたんだ。総悟を見守って欲しい、って言ってたんだとよ」
「そういえば。今朝、トッシーの名前訊かれたアル。ミツバさんに訊いたってことアルか?」
「らしいぜ。舌足らずな声で、とおしろーさん、なんて呼ばれたからな」
「この子を通して、ミツバさんが見えたアルか?」
「――さあな」

 目を伏せて、ふっと笑えば。それ以上追及してはこなかった。正直、助かる。

「あ。でも、」

 思い立ったように、チャイナ娘が呟き。四葉をギュッと抱きしめながら、こちらを睨みつけた。

「な、何だよ?」
「トッシーが義息になるのは勘弁して欲しいアル! 警察自ら、ロリコンで捕まるのは止めろヨ」
「アホか、てめーは!! 何でそんなぶっ飛んだ発想になるんだよ!?」
「えー。一応、間違いは未然に防がなきゃ、だし?」

 総悟に聞かれたら、問答無用で殺される。いや、常日頃殺人未遂ではあるのだが。

「……まあ。ミツバさんとトッシーが一緒になってたら、四葉は姪っこだもんナ。感覚としては、娘の方が近い?」
「あいつが生きてたとしても、そんな未来はなかったがな……」
「こういう時は素直に認めるヨロシ。実際、トッシーは四葉のこと、ちゃんと可愛がってくれてるダロ」

 すっかり機嫌の良くなった四葉が、ふわりと笑みを浮かべて俺に手を伸ばしてくる。――俺にも抱っこしろ、というお願い、もとい強制だ。

「とおしろーさん、タバコくさい〜」
「だったら離れろよ、クソガキ」
「やだ〜。もっとだっこするの!」

 自分から離れた愛娘を、慈愛の表情で見つめながら。安心したように手を振って、チャイナ娘は台所へ戻っていく。ちょうど火に掛けていた鍋でも煮えた頃合いなのか、リビングにも美味そうな匂いが漂ってきた。


 俺やお前が見守るまでもなく、総悟の幸せは――永遠に続いていくだろう。この腕の中にいる小さな天使と、あいつが愛して止まない毒舌チャイナ娘と。恐らく近いうちに増えるに違いない、もう1人の天使がいる限りは。



*キミに贈る──小さな温もり。*






1年以上、拍手御礼に放置していたその後捏造話でした!そご誕だったのに、総悟が一切出てこないという(笑)'15年はスルーしてしまいました…すみません( ̄□ ̄;)!!

'14/07/12 up * '15/09/07 reprint


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