short_story


※3Z/沖神+土ミツ


 先程から、リビングのソファーの向かいには、最愛の姉の彼氏――にっくき土方が陣取っている。

「何、人の家で寛いでやがんでィ。死ね、土方」
「お前は口開けばそればっかだな。他に言うことねーのかよ?」

 怒鳴り散らすかと思いきや、意外にも冷静な返答がきたことにまず驚く。

「ふーん。挑発に乗ってこねェってことは、よっぽど機嫌いーんですねィ。マジムカつく、やっぱり死ね土方」
「だからな……」

 さすがにカチン、ときたのか。眉間の皺を深くした土方に、更なる暴言をぶつけようと口を開く、が。

「何やってるアルか、このクソサドーッ!」
「――ッッ!?」

 ドカッ、と後ろから踵落としを決められ。あまりの衝撃に、文句を返そうにも肝心の声が出せない。

「あ〜あ、痛そうだな総悟」
「訳の分かんない因縁ふっかけるヤツにはいい薬アル。黙って待つことも出来ないなんて、子供みたいネ!」
「チャイナ……てめー、彼氏サマに向かって何してくれやがんでィ!!」

 今、間違いなくソファーごと床に10p位はめり込んだ。俺としたことが不覚だった――チャイナが背後から近づいてる気配は感じてたというのに、それを避けれないとは。だがしかし、まさか踵落としで来るとは思わなかったのだから、どうしようもなかったのだ。

「大体、キッチンにいたはずのチャイナが何でここにいるんでィ?」
「オーブンにケーキ入れたから、あとは焼き上がるの待つだけなのヨ。洗い物はミツバさんがやってくれてるから、私だけ戻ってきたネ。そしたら、アホがマヨに絡んでるの見えたから制裁喰らわせただけアル」
「……あっそ」

 どうやら、女2人で協力して作る、と言っていたチョコレートケーキは無事に焼き上がりを待つだけとなったようだ。姉さんがついていたんだから、いくら料理音痴のチャイナが作るモンでもマトモなケーキになるだろう。その辺は、まあ心配していないのだが。

「結構早かったんだな。ミツバの話じゃあ、もう少しかかりそうな口振りだったじゃねぇか」
「ふっふーん! それは神楽サマの手際が良かったからアル。この日のために、色々特訓してきたからナ」

 最近、やたらと人のスマホを勝手に弄って料理のサイトとか見てやがったが……そのためだったのかよ。イチャつこうとしても拒否られてかなりムカついてたのも、チョコのため――結局は俺のためだと分かれば、まあ少しは許してやってもいいかもしれない。

「愛されてんじゃん、総悟。良かったなぁ?」
「何ニヤついてんでィ。キモくてウザい、土方さん。ちょっとあの世に行ってきてくれやせんか?」
「何で敬語になってんだよ。逆に怖いわ!!」
「……オマエら、なんだかんだ仲いいアルナ〜」

 呆れ顔のチャイナの発言に、冗談じゃない! と2人同時に反応し。俺は報復、とばかりに油断しているチャイナを脇から抱きすくめてそのまま羽交い締めにしてやった。

「そーごっ!?」
「さーて。アホなこと言ってんのはどの口ですかィ、お嬢さん?」
「んぎゃーっっ!! 何する気アルか!?」

 土方の目の前だが、気にすることなく首筋に顔を埋めてチャイナの香りを堪能してやる。今日は、いつもより甘ったるい気がする……そうか、チョコとかケーキとか甘いモンにまみれてたもんな。

「ちょっ……そーご! マヨが見てるネ!!」
「んー。知ってる。ってか見せつけてやろーぜ」
「はーなーせーっっ!!」

 開き直ってやりたい放題の俺に、土方は溜め息なんぞついてやがる。その土方が何かに気づいたように顔を上げると、背後から馴染みのある気配を感じた。

「――あらあら。何だか楽しそうね。皆で盛り上がってたの?」
「姉さん! 片付け、もう終わったんですか? 手伝いもしなくて、すいやせんでした。役に立たねェ土方も謝れ、コノヤロー」

 キッチンから戻ってきた姉さんを迎え入れると、早速土方を弄りにかかる。

「もう、そーちゃんったら。また十四郎さんをからかってたんでしょ?」
「いいんだ、ミツバ。こいつの悪態にはどうせ慣れてる。気にするだけ無駄だ」

 チッ。土方のクセにカッコつけやがってコノヤロー。むくれていた俺だったが、隣のチャイナが膨れた頬に容赦なく指を突き刺してきやがった。地味に痛いんだけど。

「これだからお子様だって言うのヨ。いつになったらシスコン卒業するつもりなのヨ? 私という彼女がありながら、満足出来ないアルか〜総くんは?」

 コイツ……それを俺に言わせたいのかよ。ってか、その台詞だと、姉さんにヤキモチを妬いてる風に聞こえなくもないではないか。そんなことを言うのなら、こっちにだって考えがあるのだが。

「だってなァ。ちゅー以上のことをなかなかさせてくれない彼女だし? そんな彼女と姉さんを比較しろ、って言われてもな〜」
「んなーっ!? それは今、このタイミングで言うことじゃないダロ!?」
「えー? じゃあ、いつなら言ってもいいんでィ?」

 ちゅー以上、とは言っても。ベロチューはしてるし、胸揉んだりあちこち舐めまくったり、キスマーク付けまくって殴られんのにも慣れてしまったし。まあ、ぶっちゃけ最後までイタシテないだけでヤりたい放題な気もしないでもないのだが。

「いつ、って……うぅ〜っっ! ミツバさん、このアホ何とかして欲しいアル!!」
「そーちゃんったら、神楽ちゃんを苛めちゃダメよ! それに、2人ともまだ高校生なんだから、そういうことはゆっくりでいいんじゃないかしら? ねぇ、十四郎さん」
「はっ!? 何でそこで俺に振る訳?」

 はぁ……何か、話がおかしな方向に進んでる気がする。赤くなってる土方なんざ見ても、胸くそ悪いだけだし。

「チャイナ。取り敢えず、俺の部屋行かねェ?」
「部屋っ!? ま、またエロいコトする気アルか。今日はミツバさんたちもいるんだから、そーいうのはダメ……」

 焦り出すチャイナの額にデコピンを食らわせ。バーカ、と早とちりを笑ってやる。

「エロいコト考えてんのはそっちじゃん。期待してんのー? 神楽さんたら、えっちー」
「そ、そ、そ、そんなことないネ!! ってか、勘違いさせるコトいっつもヤッてるそっちが悪いアル!!」

 顔を真っ赤に染め、ヤッてる、とか口に出してしまってる大胆さにすら気づいてないチャイナが可愛くて仕方がないんだが。

「あー、総悟。いい加減に勘弁してやれ。チャイナ娘、キャパオーバーで死んじまいそうじゃねぇか」
「うるせェ。豆腐の角に頭ぶつけて死にやがれ、土方コノヤロー」
「爽やかな笑顔で言う台詞じゃねーだろ、ソレ!」




*チョコより欲しいモノがある*




「……ってことが、1ヵ月前にあったような。なかったような」
「どうしたの、十四郎さんったら独り言?」
「いや、ホワイトデー、だなぁと思ってだな」
「ふふふ。そうね、バレンタインのお返し、ありがとうございます。とっても嬉しかったわ」
「お、おぅ……」
「そういえば、そーちゃんは素直にお返し出来たのかしら?」
「素直かどうかは知らねぇが、準備は入念にしてたな。バイトもしてたくらいだし」
「そうね。柄にもなく、私にファッション誌なんか借りにきたりして。ふふっ、あの時のそーちゃんたら照れちゃって可愛かったわ」
「いや、ミツバ。男に可愛い、は禁句だからな。聞いたら泣くぞ、あいつ」
「私にとっては、そーちゃんは小さい頃から可愛い弟ですもの」
「まあ、そりゃそーだろうけどな(同情するぜ、総悟……)」
「十四郎さんは、えっと、可愛いじゃなくて……格好いいです、よ?」
「〜ッ!?!?!?」
「そうやって照れている姿は、ちょっと可愛らしいかもしれませんけど。ふふっ」
「――ミツバ。俺を萌え殺させる気かよ」
「えっ? どうしたんですか、十四郎さん?」




恐ろしく遅刻。8割出来た状態で放置ぷれいだったので、没にするのも勿体ないオバケ(歳がバレる発言)が出そうだし!潔くupしちゃうんだYO!
安定の沖神に加え、今回は土ミツ…い、いいんでしょうか、こんなんで?バレンタイン&ホワイトデーネタだから、愛だけは詰め込んでみたんだよぅ〜(;´д`)

'14/02/13〜03/28 written
* '14/03/29 up

>>top

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -