short_story


※映画完結篇のネタバレを盛大に含みますので、未見の方はご注意下さい
※沖神が恋人同士だった?な捏造設定



*現状という今を生きなくちゃ*


 あの人のいる未来を取り戻す――。

 それまでは、誰にも甘えず、弱みを見せず。あの人が守ろうと必死にもがいていたこの江戸で、生き抜いていく。
 そう決めてから、一体どれだけの年月が経ったのだろう? どれだけ強くなっても、キレイになってスタイルも良くなったと言われても、相変わらずあの人は還って来ない。私の望む未来は、未だ訪れてはくれない。

「――だぁから。いい加減帰ってくれないかしら、元お巡りさん?」
「相変わらず、つれねーなァ。万事屋ぐらさん?」
「よしてよ。アナタにそんな呼び方されるなんて、気持ち悪いわ」

 私が万事屋ぐらさん、と名乗り出す前。万事屋の紅一点、可愛いアイドル神楽ちゃん……なんて自称していた幸せだったあの頃。今目の前にいる《元お巡りさん》こと沖田総悟と私は──ほんの僅かの間だけ、恋仲にあった。
 出逢ってから、ずっと犬猿の仲で、好敵手なんて言われたりして。でも、気づいたら、お互い信頼関係なんてものが出来ていたりして。……同族嫌悪、そんな感情がいつの間にか憎からずも想い想われる関係に変わっていって。
 そんな感情に気づきながらも、お互いが素直になれず。周囲には内緒にして、漸く彼氏彼女の関係になったかと思った矢先に──あの人、銀ちゃんが姿を消した。

「今のお前は、俺の知ってるチャイナじゃーねェからな」
「……そうね。あの頃の無垢な私は、もう何処にもいない。いなくなってしまったあの人と一緒に、消えてしまったのよ」
「だから、俺との関係もなかった事にしちまうって? それも、聞き飽きた」

 アナタは、見た目は随分アレ(おろろ、な赤い人)だけど、中身は全然変わらない……。私が好きだった、ううん、今でも大好きなアナタのまま。

「いや、待て。今、サラッと聞き流したが、誰が無垢な私だってんだ? ジャンプ史上初のゲロインが──」
「ホンットに、全然変わらないわね、こんのドS!!」

 余計なセリフを吐く口は塞ぐに限る。ありったけのスイングで鉄傘を顔面にヒットさせようとするも、これまた相変わらずの身軽さで簡単に避けてしまいやがる。

「んなデケェ獲物じゃ、俺には当たりゃしねェって言っただろィ? まあ、今のお前相手に刀抜く気は微塵もねーけど」
「失礼ね。今の私に敵う輩なんてこの江戸には……」
「自惚れんな。俺が本気出してこの逆刃刀をひっくり返せば、今のお前なんざ瞬殺しちまわァ。俺からすれば、あの頃のてめーの方が何倍も強かった」
「なっ……そんなこと、ないわよっ!!」

 聞き捨てならない。今の私の方が弱いですって!? こんなインチキ抜刀斎に言われたくもないっ。

「前に、進め。……神楽」
「……ッ!?」

 あの頃、よくしてくれたように。節くれだった、長い指が私の頭を優しく撫でる。銀ちゃんがそうしてくれていたように。

「私は、いつでも前向きよっ。銀ちゃんを捜すのだって諦めないし、江戸に残った人たちのことも守って──」
「そうじゃねーだろ? あの人は、そんなこと望んじゃいねーよ」

 フワリ、と。よく知った香りに包まれる。抵抗しなきゃ、突き放さなきゃ、と頭は指令を出すけれど……奥底に眠っていたはずの、女の子としての自分が目を醒ます。大好きなヒトに抱き寄せられている喜びに、身が震える。

「離して、ヨ」
「嫌なら突き飛ばせよ。てめーなら、簡単に出来るだろうが」
「ズルいネ……総悟」

 そうやって、アナタは簡単に私をあの頃に引き戻してしまう。それじゃ、ダメなのに。銀ちゃんが、ここにいないのに!

「まあ、気の済むまでやってみろや。俺は俺で近藤さん取り戻さなきゃなんねーし、色々やること山積みだしなァ。万事屋ぐらさんとしてやれることも、なくはないだろーし?」
「むぅ……人のことおちょくってるアルか。散々振り回しておいて、やっぱヤメタ〜とか安定の鬼畜ドSアルナ!」
「おぅ。誉め言葉は有り難く受け取っておいてやらァ」

 悔しいけれど。こんなやり取りだけで、心は晴れ渡る。──銀ちゃん、ごめんなさい。今だけ、あの頃に戻ってもいい? この人の腕の中でだけは、アルアルチャイナ娘に戻ってもいいですか?


* * * * *


「なーんて展開、あったら良かったのになァ」
「ある訳ねーダロ!! 何処の少女漫画展開アルか!?」
「あー、麻岡の脳内展開?」
「……麻岡は中二脳にならない代わりに、永遠のお花畑少女漫画脳だから仕方ないアルナ」
「ちなみに、次点のプロットは少女漫画展開現代Ver.で、お互い躯を繋げることで淋しさを紛らす的な……」
「ぅおーい!! それ、ただの爛れた昼ドラ展開〜ッ!!」
「そっちのが受けはよかったんじゃねーかと、俺は心から思いました」
「作文ー!?」
「安定の、エロオチで締めさせて頂きやす」
「私、今回ツッコミばっかアル。これじゃ、いつもの新八とか映画の銀ちゃんと同じネ……」

──お後が宜しいようで──





シリアス展開から落とすのが通常運営ということで。
映画観て数日で妄想は色々沸いてました。今更ですが、そのうちの1つを放出です。

'13/07/18 written * '13/09/17 up

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