*夏休み*




※short『夏祭り』後日談 / not会話文 / 総悟視点


 永遠に、忘れられない夏になる──。

*最終日 〜 永久不変*


 考えてみれば、簡単に分かることだったのだ。最初から、この夏休みは仕組まれていたのだろう。きっと、いや絶対に。

「……そーご、顔が変アル」
「何言ってやがる。自他共に認めるイケメン捕まえて言う台詞じゃねェだろ」
「自分でソレ言ってちゃ台無しネ!!」

 神楽は俺の軽口に反応してノリノリだ。ふざけているのも、完全にお見通しのようで。

「なーにヨ。神威から、変なメールでも来たアルか?」
「……神威が押し掛けて来た、ってメールなら銀八から来てるけどなァ」
「はぁっ!? あのバカ、銀ちゃんにまで迷惑掛けてんのかヨ!!」

 激怒する神楽をそのままにして、銀八からのメールの後に来た神楽の父親――通称・星海坊主からの留守電を、何となく内容が察知出来たが聴いてみることにした。


『やあ、将来の息子よ。夏休みは満喫しているかな? これも一つの任務だと理解してくれると有り難い。聡い君のことだ、もう全て分かっているだろうが敢えて言わせてもらおう。今回の同窓会を機に、神楽との復縁は認めよう。だが、大変なのはこれからだ。これで君も晴れてエージェントの一員だ。大学在学中は任務をセーブしてやるが、手を抜くことは許さん。まあ、卒業出来なくならない程度には励んでくれたまえ。それと――神楽とのことを許しはしたが、さすがにまだ"おじいちゃん"にはなりたくないからな。そこだけは肝に命じておくことだ』

 ──しっかりと、釘を刺されてしまった。だが、これで堂々と神楽とイチャつける、ってもんだ。神威はそれでも嫌がらせをして来るだろうが(面白がって)はね除けて見せるさ。
 いつの間にか、神楽も途中から留守電を盗み聞きしていたらしく。複雑そうに、俺の携帯と顔を交互に見つめている。

「……だとよ?」
「パピー公認?」
「将来の息子、らしいからなァ。逆に別れることにでもなれば、確実に俺はあの世行きだろ」

 笑いながら神楽の頭をポンポン叩くと、すかさず脛の辺りを蹴り返された。……地味に痛ェんだけど。


*  *  *  *  *


『お土産はひよこと東京ばななでよろしくね!』

 量は各10箱ずつだから、さすがは神楽の父親といったところか。……今ではすっかり義父でもある訳だが。

「しっかし……夏が来る度に日本で同窓会ってのも何だかなァ」
「そうアルか? 私は毎年みんなと会えて、ごっさ嬉しいネ!!」

 俺が晴れてエージェントとなった、あの夏から早数年。どうやら夏休みに同窓会をするのが習慣になってしまったようで、何処で任務をこなしていようとも、同窓会には神楽と2人で日本に行くのが決まりになった。

「春に集まったばっかじゃねーか」
「あの時は結婚式だったから、バタバタしてゆっくり出来なかったもん。あ、そう考えたら、これって新婚旅行みたいアルナ!」
「やっすい新婚旅行だなァ、おい。俺にしたら、ただの里帰りだっての」

 ──この春。そろそろ孫の顔が見たいと言い出した義父の一声で、俺と神楽はアッサリと夫婦になった。
 準備にじっくり時間を掛けれる程、暇な仕事をしている訳ではない俺たちだ……職権乱用とばかりに義父のコネを使いまくり、式場まで短期間で抑え。神楽の強い希望で、日本で結婚式を挙げてしまったのだ。
 それ以来の日本な訳だから、まだ数ヶ月ぶりなのだが……嫁さんは友人たちに会うのをとても楽しみにしているらしい。

「結婚式の皺寄せで、最近仕事忙しかったからなァ……俺はのんびりさせてもらうから、姐さんたちとゆっくり遊んできなせェ」
「何言ってるのヨ! せっかく日本に来たんだから、総悟とだって遊びに行きたいアル。一応、その……新婚なんだから、イチャイチャしたいかな〜なんて、」

 ほんのり頬を紅く染めて、気持ち上目遣いで、トドメのデレ攻撃。

「──俺を萌え殺す気かよ、ウチの嫁さんは」
「ふぇっ? だ、駄目アルか?」
「バーカ。駄目な訳ねェだろ? 何処でもつき合ってやるよ」

 俺の言葉に満面の笑みを浮かべると、そのまま神楽は突進してきた。

「うわっ! あっぶねェだろ、後ろがベッドじゃなきゃ後頭部強打してんぞ」
「ごめんアル〜。だって今、すっごい抱きつきたくなったのヨ!」

 全体重がのし掛かっているはずなのだが、その重みさえ愛しく思える。うん──こういうの、幸せっていうのかもしれない。

「ね、イチャイチャしませんか、旦那さま?」
「そーだなァ。お義父さんが孫の顔見たがってることだし?」


 俺たちの夏は、まだまだ終わりそうにない──。



これにて、夏祭りシリーズ閉幕です〜。お付き合い下さいまして、ありがとうございました!!(*^ー^)ノ
かんっぜんに、趣味に走った話ですが(笑)このシリーズはたくさんの皆さんに支持して頂けているので(アンケ感謝!)書き手としても大変幸せなことですっ(*^-^*)
更なる後日談は、皆さまそれぞれに妄想して頂くとして(笑)麻岡は↓オマケを投下して去りまーす!

'12/09/01 up * '12/11/08 reprint


※ オマケC / パピーと銀ちゃんの噛み合わない電話

『なあなあ、男と女、どっちだと思う?』
「……今からジジ馬鹿かよ、星海坊主ともあろう男が」
『神楽ちゃんに似た可愛い女の子が一番いいんだけどな、後継者を育てるとなると男の子も捨てがたいんだよね。まあ、総悟くんに似ても可愛い子には違いないんだけどー』
「ねえ、聴いてる!? もしもーし! 俺の話聴こえてるーっ!?」
『何だ、私はまだまだ難聴になどなっていないぞ? 若いおじいちゃんなんだからな! あ、違うか。おじいちゃんになる、だったな〜いやいや、気が早すぎたかな?』
「うん、すっげー早すぎると思います、俺」
『何だ、銀八。もしかして羨ましいのか? お前だって、まだ遅くはないんだ。子供作ればいいじゃないか。相手にゃ不自由してないだろう?』
「なーっ!? 人のこと、超遊び人みたいに言うのやめてくんない!? 確かに独り身が居心地よくて、いい歳して嫁も貰ってないかもしんないけどね! 教え子に先越されて焦ったりもしてたけどね!」
『ほう。焦ったりしたのか。ハッハッハ! お前も歳が気になるようになったとはな』
「もういいよ。何とでも言ってよ。結局何なの、ただの自慢電話なの、コレ!? もう切っていいっ!?」
『いい訳ないでしょう! まだまだ序の口だからね。そうそう、男の子だったらさせてみたいことがあるんだけど……』
「いっそ双子産んでくんねーかなぁ、神楽」
『おぉっ!! それは名案だな!』
「あ〜余計なこと言ったか、俺……」


________銀ちゃん、災難(笑)

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