随分と長い間、この温水に浸かっている気がするが、どれ位経ったのだろうか。



もしかしたら数秒かもしれないし、数日かもしれない。目を開けても何も見えない。もしかしたら開いていないのかもしれない。何もする事が出来ない。ただ最近、手や足を少し動かせるようになった。それに、最近気付いた事だが、この空間にはもう一人誰かいるらしい。それが誰かは分からないが、とても大切な存在。何が何でも絶対に私が守らなければいけない存在な気がする。



そしてこの温水は居心地が良い。まるで母の腕の中のように安心できる。このままずっとこの大切な存在と共に此処に居たいと思う位にだ。



だが突然、この温水が徐々になくなり、頭が絞まり、大切な存在から引き離される。手を伸ばすが届かない。頭だけでなく、身体も絞まり、苦しい。息をする事ができない。漸く、頭から身体へと絞まる苦しさがなくなり、代わりに空気に触れる感覚がする。息をしようと、口を開き息をすると同時に産声が聞こえた。それが自分の声だと気づくと、漸く悟った。私は産まれたのだと。




誰かに抱えられて、暫くすると、自分のとは違う産声が聞こえた。多分、産まれる前に感じた大切な存在。私の片割れだ。



どこかに寝かせられると、近くから息遣いと共に声が聞こえた。




「私の、可愛い娘たち、生まれてきてくれて、ありがとう。」




私は泣き疲れたのか、母のその声を聞くと同時に意識を手放した。



























瞼越しに柔らかい光を感じて、目を開けた。若干視界が霞んでいた為、何回か瞬きをして視界をクリアにして、一番に見たものは木目の天井。右側に息遣いを感じて見てみると、自分の片割れの姿。




自分の片割れをみると、どうやら産まれてから結構経ったらしい。途端に色々な記憶が流れこんできた。私の名前は前世と変わっていない。だが、名字が日向で、片割れの、つまり双子の妹の名前がヒナタ。




どうやらあの少年漫画、NARUTOの日向ヒナタの双子の姉として産まれたらしい。



日向ヒナタの双子の姉に生まれて3年。これだけでも問題だが、さっき流れ込んだ記憶の中には、ヒナタの双子の姉としての記憶だけではない、現代を生きていた頃の記憶と、もう一つ、別の記憶がある。











のはらリンの記憶である。








どうやら私は、のはらリンに成り代わっていたらしい。




だが、のはらリンに成り代わっていた時と、日向に生まれてから今までの間は、前世の、つまり現代を生きていた頃の記憶がなく、のはらリンとして生きてた頃は、原作のリンと同じ人生を歩んでいた様だ。




これからどうしよう。原作では、ヒナタに双子の姉はいない。原作で死ぬはずの人達や、オビトを助けたい。だけど、私がリンだとバレるのはなんとしてでも阻止したい。あいにく、今世の姿はのはらリンそのままなのである。忍になったらバレる可能性が高い。カカシ班になった即バレる。紅班に配属されても、紅は鋭いからバレる可能性が高い。アスマはそこらへん大丈夫そうだが、アスマ班は色々とカカシ班との接触が多い。他の班に配属されたとしても、結局下忍にはなれない。日向宗家の人間が、下忍にすらなれなかったら、日向の落ちこぼれとして、目立つ。
忍になるのはよしたいのだが、日向の後継ぎになるのはもっとダメだ。原作では、ハナビが後継ぎになる。それに、日向の後継ぎはそれはそれで目立つ。



ならどうする?日向に生まれた以上、一般人として生きるのは不可能に近い。ならやはり忍になった方がいいのか?原作に関わる機会が多いからそっちの方がいいだろう。姿は変化なり、変装なりすればバレる可能性は低くなる。よし、そうしよう。








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