※主人公は中三でキャラは年齢変更無し。
私の世界はいつも真っ暗だった。
輝いているものは周りにたくさんあったけれど、それが私の中に入ってきたことはなかった。
だから私の中はいつも明かり一つない空間で、きっと一生明かりが差し込むことなんてないと思っていた。
でも、そんな私の予想を裏切ってくれた、小さな子がいた。
「なあ、姉ちゃんこんなとこでなにしとんの?体調でも悪いん?」
「え…」
いつものように、一人で中庭のお気に入りの隙間に挟まって俯いていたら、小さな影が少し高めの少年の声とともに指した。
顔を上げれば、赤髪の少年が私を心配そうな顔で見てきた。
…一年生の子かな?やけに幼い顔立ちをしている。それでも整った顔をしているのはわかるけれど。
「…姉ちゃん?どこが悪いん?だっか呼ぼか?」
「あっ…う、ううん、どこも悪くないから、大丈夫だよ」
ぼーっとそんなことを考えていたせいで、余計その子は心配したらしく、さらに焦ったように見てきたのでそう答えると、なぜかその子は更に不安そうな顔で私を見てきた。
「…ほんま?」
「う、うん」
「ほんまのほんまのほんま?」
「う、うんっ、本当!」
やけにしつこいな、この子。
心配性なのかな…。
私は早く一人になりたいのに。
だけど私も自分より小さな子を邪険に扱うことが出来ず、早くどこかへ行ってほしい気持ちを抑えて大丈夫だと言った。
それでも、この子の心配そうな表情は一切変わらなかった。
「えと…ほ、本当に大丈夫、」
「……ならなんでそんな泣きそうな顔しとるん?」
「え―――」
大丈夫だと伝えるために胸の前でひらひらと降っていた手がぴたりと止まった。
…今、この子なんて言った?泣きそう?誰が?…私が?いや、
一瞬動揺してしまったが、こんな小さな子に私がわかるわけない。
そう思ってくずれそうになった表情をぎこちない笑顔に戻した。
「そんなこと、ないよ」
「いや、ある!なんでそんな辛そうなん!?」
……やめて、
「そう言われても…私が言ってるん、だし…」
「姉ちゃん嘘つき!嘘ついたらアカンのやで!痛いの我慢すんのもアカンのや!」
やめてよ、
「辛いんなら言うてや!ワイ助けたるから!」
「やめてってば!!」
私は気付いたら普段は絶対出さないような大声を出していた。
だって、これ以上何か言われたら、今まで真っ暗で保ってきた私の中が踏み荒らされる気がして。
だからあれだけ強く言えば、小さいこの子は驚いてどこかへ行くだろう。
そう思った、が。
「やっぱり我慢しとったやん!」
その子はどこかへ行くどころか、私の目線に合わせてしゃがみ、距離を縮めた。
なんかもう、限界だった。
何が限界かと言われればハッキリ答えることなんて出来ないけど、確かに私の中の何かが限界を越えた。
「ゔっ、うぁぁあんっ!!」
「うおっ!」
私は勝手に体が動き、自分よりも小さいその子に思いっ切り抱き着いて大声で泣いた。
その声に誰も来ないのは、意識の遠くで聞こえたチャイムからして休み時間が終わったのだろう。
でも今の私には人が来ようが何だろうがどうでもよかった。
と、いうよりもそんなものに気を止めている余裕などなかった。
「ね、姉ちゃんほんまどないしたん!?どこ痛いん!?」
「こころ…っ、」
「え?」
「心が…痛いよ…っ!!」
きっとこの子は私が何で泣いているかなんて、今までの様子からしてわかってないだろう。
でも、きっと何かの勘が鋭い子なのかな。
何かを悟ってくれたのか、その子は私の頭と背中を小さな手でさすってくれた。
その暖かいぬくもりに、私はさらに涙を流すのだった。
後になって冷静に考えてみれば、私が泣いてしまったのは私の中が踏み荒らされそうになったからじゃないと思う。
たぶん、この子…金ちゃんの純粋な瞳と気持ちに惹かれたからだと思うんだ。
私はあの時、金ちゃんに出会えてよかったと心から思うよ。
―――――
跡部→まさかの金ちゃん
侑士→白石
岳人→謙也
宍戸→ユウジ
ジロー→小春
日吉→財前
銀さんと小石川とオサムちゃんはわからないです。ていうか当て嵌ままないです。
実は連載のネタを考えついた時は本当に跡部のところは金ちゃんにするつもりでした(笑)
金ちゃんって本能的に人が弱ってるとわかりそうな気がします。野生の勘みたいなやつで。
例えば常に無表情な財前が風邪引いてるのを隠していたら一番に気付くのは金ちゃんみたいな(笑)
でも色々考えて、連載にある跡部の台詞を金ちゃんが…えっ…となりましてカリスマ性と包容力がある跡部にした感じです。
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