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起床時間は6時30分頃。可愛らしい制服姿で家を出るんは、7時30分頃。学校に着くんは7時45分頃。
今日も名前は可愛らしいわ。いつ見ても、どんだけ見ても飽きん。どんな表情にもすごい破壊力があるわ。ああ、食べてしまいたい。

名前は、俺に会うために生まれてきたんや。ほんで、俺も名前に会うために生まれてきた。名前の視界に入るのも、名前の声を聞いていいのも、名前に触れていいのも、名前を愛していいのも俺だけなんや。
やけど、名前は優しい。ほんまに優しい子なん。せやから、俺以外のヤツとたくさん関わんねん。
俺と名前以外のものはみんなゴミ同然なんやから、放っておけばいいんに。そんな低俗なゴミ共なんかに関わらんでいい。
大人しく俺だけ見とったらええんになあ。

まあ、そんな名前やから、自分に好意があると勘違いするゴミも出てくるわけで。俺は、そんなゴミを始末するのが日課や。ゴミはゴミらしく、黙ってゴミ箱に入っとったらええんやで。

でも最近じゃあ、名前にしつこく付き纏うゴミまで出てきとるらしい。
名前が前に言うとってん。「誰かにストーカーされてる」って。
いつもなら忠告だけで終わる優しい俺も、それには腸が煮え繰り返ったわ。
俺の名前をずっと見てるんやで?
名前をずーっと見とってええのは俺だけなんに。
その“ストーカー”しとるやつを早よ見つけて殺してやりたいから、俺は名前を“見守る”時間を増やした。

せやけどストーカーは中々見つからん。
日に日に名前の笑顔が消え、段々とやつれていく。
ほんまに早よ見つけたらな。俺の名前がおかしくなってまう。そんな無理して笑わんでもええんやで?怖がらんでもええんやで?俺が毎日“守って”やっとんのやから。

でも、それでも見つからん。俺がこんだけ名前の周りにおるのに、何でや。
相手は隠れるのがうまいらしい。

けど、もうこんなに苦しそうな名前の姿見とれんわ。
そう思った俺は、ある日、名前にたくさんのメールと電話をして、手紙もポストに入れた。
名前を少しでも安心させるため。

せやけど、名前は“ストーカー”に我慢の限界を感じたんか、その次の日から学校に来んようになってしもうた。
俺はますます“ストーカー”を殺したくなった。
名前に会える時間が約11時間16分ほど減ったんやからな。

でも、今は“ストーカー”なんかより、名前の方が心配や。

名前は恥ずかしがり屋で、家族にまだ俺のこと紹介したないみたいやから、俺は名前が一人のときに名前の家へ行った。
あ、勿論合い鍵は持っとんで?
いつでも入れるようにな。

家の鍵を開けて、名前の部屋に行く。
俺のものやといえど一応女の子やからノックしたる。

「お母さん…?」

「俺や、入るで」

がちゃりとドアを開けて中に入る。
前来たときとあんま変わっとらん、シンプルな部屋。
名前がなぜか俺を見るなり、真っ青になってガタガタと震え出したんやけど、どうかしたんかな?
久しぶりに俺に会えて嬉しいんか?
なんてな。

「名前、久しぶりやなぁ。風邪?なんで震えとんの?」

「ひっ!い、いや…っ、こ、こな、来ないでぇ…!」

「なんでそんなこと言うん。俺悲しいわあ。冗談でも言わんといて。お仕置きしてまうで?」

「いっ、いやあ…っ!!」

お仕置きなんて冗談なんに、そんなもっと震えんでもええやん。
そんなとこも可愛いけどな。

「もう、なんな、の…!死ね!ストーカー!消えてよ!!」

「名前…?」

ストーカー、て。俺はストーカーやないのに。
可哀相な名前。
ストーカーのせいで精神的に追い詰められて、幻覚まで見えてしまっとんのか。
だからさっきから辛そうに泣きわめいて、震えとんのか。
まさかここまで追い詰められとるとは思わんだわ。

「そやな、死のうか」

「え…?」

「すまんなあ、ストーカーを殺してやれんで…。でも、これ以上、名前が壊れてくん見たないわ…」

「な、なに言って…っ、」

「大丈夫、もう怖がらんでええで。俺も一緒に死んだるからな」

「いっ、いやあ…!!」

「名前は優しいなあ。俺が死ぬんが嫌とか…。でも、大丈夫やで」

俺は、いつでも“ストーカー”を殺せるようにと所持していたサバイバルナイフを取り出す。
名前、いま助けたるからな。
辛かったやろうなあ。知らん男にずっと付け回されて、幻覚が見えるほど壊されてしもうて。
でも、もう大丈夫やから。
それに、名前が聞いたら怒るかもしれんけど、実はその“ストーカー”にはちょっと感謝しとんねん。
やって、最上級の愛が何なんか俺に気付かせてくれたからな。

「や、やめっ…」

初めっから、こうしとけば良かったんや。
こうすれば名前は俺だけを見るし、俺も名前以外の他のゴミ共を視界にいれんで済む。
名前を苦しめるものも近付くものもおらんしな。
ふたりだけの、永遠の世界。

「俺の命は、お前のもんやで」

一緒に死んで、一つになることが、最上級の愛や。
愛しとるで、名前。


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