テラ 3




※来神シズイザ続き





締め切られた窓の外からは部活動に精を出すうっすらとした声、教室の前方からは野太く眠気を誘うだけでしかない教師の声。
頬杖をつきぼんやり、と窓辺の席から黒板を見つめる。
俺の他にも補習組はいるにはいるが、閑散に近い人数であり、皆一様に眠そうだった。真ん前の席の奴なんかは舟を漕いでいる。
淡々と抑揚なく読み上げられる英文が呪いのようにしか聞こえず、頭上を素通りしていく。
単位がヤバイというのに、とても集中できそうになかった。
だって、意識を占めるのは、ただひとり。
臨也だったから。

今日もまた、迎えにきてくれると言っていた。
昨日は逃げられてしまったけれど、同じように誘われれば抑制がきくか自信がない。
それが怖いようで、反面、今すぐにでも抱きしめたくもあって。相反する気持ちが拮抗する。

ようやくチャイムが鳴り、随分と長く感じた補習が終わる。
まだ数日続く補習だけれど、毎日臨也と会える口実になるならば悪くはないと思った。
まさか、ここまで狙って俺を挑発したのか…と思い到ってやめた。それこそ自惚れだ。
いや、本当は自惚れさせてほしい。
元々、ややこしいことは嫌いで面倒臭い質だ。
好きだと言葉にしたことはないけれど、充分に態度では示していると思う。きっと臨也だって気付いていると思う。性格は最悪だけれど、頭はずば抜けていいのだから。
早くノミ蟲も素直になればいいのに、と考えながら、ほとんど中身が入っていない鞄に筆記用具を突っ込むと席をたつ。
待ち合わせ場所は特に決めていないけれど、匂いでわかる。
そういえば、あの臭いだけでしかなかった匂いも、最近は微妙に甘く感じるのは気のせいだろうか。

足早に下駄箱までたどり着き、スン、と鼻を鳴らせば、その甘い匂いが鼻腔を擽る。それは、裏門付近から漂ってきた。
急いで上靴から履き替える。
昇降口から出ると、果たして裏門には臨也がいた。
−いるには、いたのだが。

(…なにしてんだ?)
臨也はひとりではなかった。
隣には馴れ馴れしく臨也に触れる男。
遠目なので顔立ちまでははっきりしないが、長身のそいつが纏っているのは他校の制服。臨也の知り合いだろうか。
様子を伺っていれば、なにやら雲行きが怪しい。
(なに簡単に触らせてやがる…!)
どうせろくでもない知り合いなのだろうが、それにしてはやけに親密そうにしているのだ。
俺に気付いていないのか、嫌がるそぶりを見せない臨也に、苛立ちを感じ始めたそのとき。
男が徐に屈みこみ、臨也もまた、男の腕に触れて。
「……っ!」
二人は、キスをしたのだ。

−それは、俺にとっては酷い裏切り行為だった。



END






波乱の予感。まだ続きます。


2011.9.5 up



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