テラ 2.55




※来神シズイザ
※アイスネタ続きの続き
※臨也視点




−びっくりした。
腑抜けた顔を曝すシズちゃんを置き去りに、俺はすぐに駆け出した。
余裕なんてかけらもない、今だって心臓がバクバクしている。
−俺んち、来るか?
シズちゃんのくせに、シズちゃんのくせに…!
いきなり、そんな直球でくるなんて思わなくて柄にもなく動揺したのだけれど。
冷静になって考えてみれば、いかにもシズちゃんらしいと言えた。
シズちゃんに好かれている自覚はある。仕向けたのも俺自身だ。まだ、好きだ、と明確に告げられたことはないけれど、シズちゃんは駆け引きとかそんなまどろっこしいことを好む俺とは違って素直だから。
そう、それは俺が持ち得ない、もの。


「まさかこんな…」
なりふり構わず走ってきたところで、辿り着いたのはどこかの路地裏。
壁に凭れかかり、荒い吐息を収めようと大きく息を吸い込んだ。
汗で濡れたシャツが肌に纏わり付いて不快だ。
とりあえず額の汗を拭おうと持ち上げた利き腕は、先程舐められたほうの腕。まだ舐められた舌先の感触が残っている。
「……」
ぱたりと腕を下ろす。
−こんなはずじゃなかったのに。
そう呟いたところで何の解決にもならないこともわかっている。
だって、俺の気持ちも、もう取り返しがつかないところまで暴走してしまっているから。
それが悔しい。
シズちゃんに対してはいつだって優位でありたいのに。だから持ち掛けたことだったのに。
「ほんと早く死んで…」
シズちゃんの言動は想定外のものばかり。最初からわかっていたはずなのに、早くも綻びが見え始めている。

−また明日。
それでもきっと未来の俺はいそいそと補習終わりのシズちゃんを迎えに行くのだろう。
「はあ…」
いつまでたっても沈む気配のない太陽に負けないくらいのため息を吐き出しせば、息は調ったのに、まだ心臓がドクドクと煩い。
シャツ越しの胸元を押さえたって効果はなかったから。
暫く使うことのなかった愛用のナイフは、夏服になってからは腰元に忍ばせてある。
その感触を確かめていれば、ほんの少しだけ、心臓の高鳴りがマシになった気がした。



END






臨也視点での補完編でした。


2011.9.3 up



back

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -