ブストラックバースデー サンプル




※臨也ハピバ本。
 実は両片思いなシズイザ。








「うーん…またやっちゃったのかなぁ、俺」
こんなに泥酔したことなんて、今までにほとんどなかったのに。とはいっても、自分が覚えている限り、ではあるが。どうにも、自分は泥酔すれば記憶が飛ぶらしいというのも他人から教えられて自覚したことだ。
発端は高校のときに、酔った挙句静雄とチェイスを繰り広げたときのこと。あろうことか静雄に介抱されたらしい、というのは後から聞かされた話で、あれはまさしく人生の中でもワーストに入るほどの失態だ。その痛ましく信じ難い思い出を記憶の奥底に仕舞いこみそれ以来気をつけてはいたのだけれど。
ベッドの中で依頼主にうっかり今日が誕生日であることを洩らしてしまったことが失敗だった。情報屋を生業とした頃から懇意にしている相手だったので飲めと言われれば断れるはずもなく。その上、散々に抱かれて疲れ切った身体では酔いが早く回ってしまったのは仕方がないことだろう。
「くそ…っ。あの野郎、覚えてろよ…っ」
正直なところ、なんとか歩けるにしても意識は半分飛びかけていたが、そんな失態を相手に見せるわけにもいかない。だから、自宅まで送ろうかという申し出を素気無く断ったことについて責められる謂れはないはずだ。このような事態を招いたことは臨也自身にも責任はあるのだけれど、八つ当たりもしたくなるというもの。
「ここはどこだろうねぇ…」
送り先を池袋に指定したから、池袋のどこかであろうと思いたいが残念ながら確定できるだけの判断材料が乏しい。
離れてもなお愛する池袋の街中を少しの間酔いざましがてら歩きたかったのだろう、とは建前でしかない。もしかしたら会えるかもしれないという幾許かの期待と、今日というある意味特別な一日が終わってしまうことに対する寂寥感とを抱えていることなど、誰にも知られたくはなかったはずだ。
「誰もいないのかな?」
内装からしてどこかのホテルのようだ。誰に連れ込まれたのだろうかと、訝しみつつもその痕跡を探ることにする。自分一人でホテルを取ったのだろうか、という選択肢も捨てきれなかったのだけれど、ベッドの傍のテーブルの上に、見覚えのある煙草とサングラスが置かれていることに気がついて。
(うわぁ…。いやいや…まさかねぇ…)
浮かんだ相手に、頭痛が更に酷くなる。自分の予想が的中していることなんて考えたくもないのだけれど、こういうときの勘というものは的中率が高い。
もしそうだとしたら、それこそこの部屋に連れ込まれるに至った経緯なんて考えたくもない。とにかく、相手が不在の間にこの部屋から出ていくほうが無難だろう。誰が相手でもこれ以上の醜態は見せられない。
「うわ、グチャグチャ…」
スーツやコートを探そうとしたらすぐに見つかったのはいいけれど、まるで脱ぎ棄てられたかのように床に散らばって落ちている。自分の吐瀉物塗れのそれを着用したくはなくて、どこかで捨てようと決意する。まだ酔いも若干残っているから気分も優れないのだけれど、そんなことも言っていられなくて、なんとかベッドから降りようとした。
「…!!」
そのとき、ガチャリと玄関付近でドアが開かれる音がして、驚きのあまり動きを止めてしまった。気配が近づくにつれ、緊張感が増し、息を顰めて玄関を隔てる扉を凝視するしかなくて。
ついに扉が開かれたところで、入ってきた相手が予想通りの人物だったことから、臨也はナイフを手にしていなかったことを後悔したのは言うまでもない。
「……気が付いたのか」
「………あーあ、やっぱりねぇ…。まさかシズちゃんとはね…」
臨也が不機嫌も露わにするのだけれど、静雄は素知らぬふりで。煙草を銜えたままの静雄が、手にしていたコンビニのビニール袋を机に置き、ベッドまで近寄ってきて睨み降ろしてくる。
「何逃げようとしてんだ?」
「当たり前でしょ?」
相手が静雄だとわかったからには逃げなければ、とベッドの下に落ちていたスーツの上着を拾おうとしたところで手首を掴まれてしまった。
「ちょっと。痛いってば、離せよ!」
怒ったのだろうか、このまま殴られるかもしれないと覚悟を決めつつも、その動揺はひた隠しにして反対に静雄を睨みつけた。
「…気分は?」
「え…」
だけれど、臨也の言動に反して、静雄にぶっきらぼうに問われるものだから、少しばかり驚いてしまって。静雄に心配されるだなんて信じ難いことなのだけれど、この状況からして酔っ払って気を失った臨也を介抱してくれたのは間違いなく静雄なのだ。
「………最悪」
様々な意味合いを込めて端的に評すれば、静雄がますます鋭く睨みつけてくる。そうして、時間にすると数秒にも満たないだろう間睨み合ったのだけれど。
「……寝てろよ」
「…!」
掴まれていた手首を軽く捻られれば、その勢いでよろけた臨也の身体は簡単にベッドに逆戻りする。
「わ…っ」
ボスリと柔らかいベッドが臨也の痩身を受け止めてくれるのだけれど、大人しく寝ていられるわけもない。すぐさま飛び起きたところで、再び頭痛に襲われて顔を顰めた。
「く…っ」
「痛むんだろうが…」
額に手をやったところで痛みが収まるはずはなく、それでも警戒心を解くことはせずにいたのだけれど。しかし、そんな臨也に静雄はひとつ嘆息すると、クルリと背を向けて。
ガサガサとビニール袋を漁るのをじっと見つめていれば、静雄が袋の中から小さな箱を二つ取り出しそれらを無造作に放り投げてきた。
「ほらよ。好きな方を飲め」
「なに…?」
思わず受け止めたそれは市販の吐き気止めと頭痛薬だった。続いて放り投げられたのは水の入ったペットボトルだ。
「具合悪そうだったからよ。取りあえず飲んで寝とけ」
そして、なぜかベッド上で驚きを隠せずにいる臨也のすぐ傍に腰掛けた静雄が、自身もまた手にしたペットボトルを傾ける。
「ねぇ」
臨也は柄にもない言動を繰り返す静雄のほうを直視することができずに、仕方なくじっと薬とペットボトルを見つめながら、ボソリと口を開く。
「……なんで助けてくれたの?俺ってば道端にでも転がってたんじゃないの?」
「………覚えてねぇのか」
少しばかり驚いた表情をした後、どこか腑に落ちたように嘆息した静雄に、臨也は渋面を浮かべ。
「ちょっと…?俺ってば一体何したの?」
「……知らないほうがいいんじゃねぇか?」
「何それ?そんなの困る…っ」
含みのある返答をされれば、尚更気になって仕方がない。一体自分は何をやらかしたのだろうと問い詰めようと顔を上げれば、思いの外至近距離に静雄が迫っていて驚愕した。
「おら、せっかく買って来たんだから飲めって」
「……っ、そうじゃなくてっ」
飲めと言われてもそれどころではなく。吐息が触れ合うほどの距離感に絶句した臨也に、静雄は嘆息すると臨也の手にしていた薬を奪い取ってしまって。バリバリと音を立てて箱を開けていく。
「あ、シズちゃん…?」
「つうかよぉ…」
掌に薬を転がしつつ、空いている手は臨也の後頭部を掴んで固定する。必死に静雄の言動を分析しようとして失敗し、呆けたように口を開いていたのがいけなかった。
「わざわざ手前のために買ってきてやったんだ。ごちゃごちゃ言ってねぇで飲めっつってんだろうがぁ…!」
「うぐ…っ!?」
そんなに一度に飲んだらヤバいという抗議をする暇もなく、突然キレた静雄によって何錠かを纏めて口内へと放り込まれる。そして、飲みかけのペットボトルを臨也の口へと押し込み、強引に水を含ませた。



***



「……ここまでさせたからには、ちゃんと抱いてくれるんでしょ?」
拒絶される可能性もあった。しかし、鋭く睨みつけてくる静雄の瞳の奥に確かな情欲が浮かぶのを見逃さなかった。
「ほら。好きに抱けばいい。前の人のモノが残ったままだからちょうどいいよ。慣らさなくても入ると思うし」
そうして妖艶に微笑みかければ、静雄は逡巡する素振りもなく、誘いに乗ってきた。
「…ああ。いいぜ?」
「ふふ、楽しみだな。君はどんな風に俺を抱いてくれるのかなぁ?」
茶化すかのように笑えば、静雄もまた口角を引き上げて。
「そこまで言われたなら、期待に応えないとなぁ?」
「そうこなくちゃ」
臨也は嬉々とした表情を浮かべ、早速とばかりに足を開き、静雄に身を任せようと再びベッドへと沈みこんだのだけれど。
「うつ伏せになれ」
「え」
「いいから、早くしろよ」
「……わ…ぷっ」
バックから入れるつもりだろうか、と考えていれば、反応が遅れた臨也に焦れたのだろう静雄に、肩を掴まれ強引に引っ繰り返されてしまった。
「お望み通り抱いてやるからよ。ザーメン塗れの穴をよく見せろ」
腰を掴まれれば、すぐに四つん這いの体勢を取らされて。屈辱的な体位にも、臨也は文句ひとつ口にすることなく、腰を突き出した。
「これでいいの?」
「見えねぇな」
「じゃあ、どうすればいいのさ?」
「ちゃんと広げて見せろよ。そしたら入れてやる」
「…意地悪」
唇を尖らせつつも、臨也は頬をシーツへと擦りつけ。そして、求められたように自重を支えていた両手を後孔へと這わせていく。
「ん…、これなら見える…?」
臀部を自ら左右に引っ張るように鷲掴む。すると、隠されていた部分まで露わになり、後孔が広げられたことで、内壁が忙しなく収縮を繰り返す。
「ドロドロじゃねぇか」
「あ…!?ひぅっ…」
無遠慮に静雄の指が突き入れられ、驚きの余り両手を離しそうになった。強引な手つきは、受け入れる立場の臨也を思いやる気すらないもので。
「手、離すんじゃねぇよ」
「うう…」
叱責されれば、慌てて膝も広げてしまう。普段の自分ならばこんなこと絶対に許容したりしないのに。
「ん、はぁ…っ、あ…ぅ」
挿入されたままだった指先が、入口付近を円を描くように蠢かされる。そのたびに、グチャグチャと卑猥な水音が生まれる。
「ん、う…あっ」
他人に抱かれ慣れた臨也の身体は、残液の助けもあり、スムーズに静雄の指を受け入れる。
「ん…、うぐ…っ」
根元までズブリと挿入され引き抜かれたと思えば、今度は二本揃えて勢いよく突き入れられて呻き声をあげることになった。
「あ、あん…っ、そこ…っ」
「ココがいいのかよ」
「う…ん、そこ、いいの…っ」
「ったく…。恥じらいの欠片もないのな?」
内壁の感じるところをコリコリと刺激されるたびに、触れられていない臨也自身に熱が集まる。すでに先走りの液を垂らし勃ち上がる自身を見つめながら、臨也は確かな快楽を欲していて。
「もう入れても大丈夫そうだなぁ?それとも、このまま一度イっとくか?」
「……どっちでも、いいよっ」
好きにしてもいいと言った臨也にわざわざ選択権を与えてくるところが厭らしい。
「ふん。それなら、もう入れてやるよ」
すぐさま取り出された静雄自身はすでに臨也の痴態によって十分な硬度を保っていた。軽く擦ってやれば、すぐにでも臨也の中に押し入ってやりたいとさらに膨張する。
「あ、あつ…いっ」
後孔へと先端を含ませれば、臨也は両肩を揺らして。それでも蕩けている後孔は、先端に吸いつき、早く入ってきて欲しいとせがむから。
「入るぜ」
「う…、あ、あ、ひあああああっ」
滾った静雄自身は大きくて熱くて、内壁を抉るかのようにして進んでいく。臨也はその衝撃に、臀部を広げることすら放棄し、シーツにしがみ付いて。
ずっと待ち望んでいたものを与えられたのだ。勢いよく最奥まで押し込まれてしまえば、生まれる快楽は想像以上だった。







To be continued...




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