まぐれロマンティック



※来神設定。ビッチな臨也がシズちゃんを襲うけれど逆に翻弄されて堕ちてしまう話。
※表紙イラスト:ちょこれーしょん様


「ほんと、エッチも激しそうだよね…」
静雄が暴れている様を見下ろしながら、臨也が嬉しそうに呟く。恍惚とした笑みを浮かべる臨也は、頬まで染めている始末だ。すると、隣の新羅が苦笑を零した。
「君は本当に変わってないねぇ…。中学の頃も相当荒れてたでしょ?まだヤリ足りないの?」
「新羅って直接的だねぇ」
クスクスと笑った臨也は、肩を竦めた。だが、確かに間違ってはいないのだから敢えて否定はしない。
「そういえばさ、この前の先輩は?付き合ってたんじゃないの?」
「ああ、あの人?何言ってんのさ、付き合ってないよ。それにヤッてみたら、あんまりにつまんなくて途中でやめさせちゃったしねぇ…。自意識過剰じゃないかな、あの人。自分は上手いとか思ってるみたいだったから忠告しといたけど」
臨也はすでに顔も覚えていない上級生の男をこき下ろす。確か顔もそれなりによくて、たまたま声をかけてきたから誘いに乗ってみたがとんだ期待外れだったのだ。
「はあ…。最低だね、君」
「なんで?俺はちゃんと言ったよ?満足させてねって」
臨也は、にっこりとそれこそ花がほころぶように笑う。黙っていれば、その端麗な顔立ちは最高級。そして、臨也は自分の見目がどれほど性的な意味で有効かということを知りつくしていた。知っている上での、この台詞だ。全く、性格も性癖も最悪なのに、騙される相手は後を絶たない。
ああ、あとね、と臨也は思いついたように補足する。
「そもそも俺は、誰とも付き合ったことなんてないよ。というか、みんなの臨也くん?って感じかな」
「……」
「ひとりの人と付き合う、とかそういう価値観じゃ勿体ないし。俺は楽しくて気持ちよければ、それでいいんだよね」
むしろ、好きだから俺だけにしろとか言われたら、その時点で関係を切るね、と平気な顔で言ってのける始末だ。
「…なんで君みたいなのがモテるんだろうね。人間を人間とも思ってないような君が」
「はは、どういうこと?酷い言われようなんだけど。俺は人間すべてを愛しているのに」
辛辣な新羅にも、臨也はなんでもないかのように笑って。
「だって、人間をセックスの対象にしか思ってないでしょ?」
「んー…、ちょっと語弊があるような気がしないでもないけど」
「あながち間違ってないんでしょ?やっぱり反吐が出るね、君」
「えー気持ちいいこと大好きだし。でもさ、人間を愛してるっていうのは本当だよ。だって、あの欲望剥き出しで腰を振っている様が滑稽でさぁ、飽きないし。ほんと、人間って面白い」
セックスは大好きだ。
元々、自分は貞操観念というものが薄いらしい。誘われるがまま初めてセックスしたのは中学一年の頃だっただろうか。それ以来、数多の人間の相手をしてきたけれど、特に男相手のセックスに味を占めてしまったのは、剥き出しの本能の部分を見ることが楽しいと気付いてしまったからだ。必死に自分を求めて貪りついている姿を見るのが愛しくて、思わず笑ってしまいそうになるほどに楽しくて仕方がない。
「感染症にでもかからないと君は懲りなさそうだもんね」
「ご心配なく。その辺りは抜かりないよ」
新羅の厭味もサラリと流す。誘ってくる男は後を絶たないけれど、今まで失敗だってしたことがない。
「ちなみにさぁ、後一人で偉業達成なんだよね」
「はぁ?」
偉業とは、随分と物々しい。しかし、臨也の様子からしてろくでもないことに違いない。
「次の相手が栄えある百人目ってわけ!そんな特別記念に俺の相手に選ばれたシズちゃんは泣いて喜ぶべきだよね!」
「…君の価値観は理解に苦しむね」
予想通りどころか予想を遥かに超越したとんでもない返答が返ってきたことに、新羅は乾いた笑いを浮かべた。
臨也はといえば、そっくりそのまま同じ台詞をお返しするけどね、との言葉は心中に留めて。紅玉を子供のように煌かせると、うっとりとグラウンドへと視線を戻した。ちょうど喧嘩は終わりを告げたらしく、静雄は肩で大きく息をしながら、腕まくりしていた片手でグイ、と口元を拭った。
その仕草ひとつとっても背中をゾクゾクと駆け上る高揚感。思わずフェンスを掴む両手に力が入った。
そんなとき。
「……!」
静雄は臨也に気付いたのだろうか、何気にこちらを見上げてきた。刹那、絡む視線。真っ直ぐに射抜かれるその視線ですら心地よくて。
「ますますシズちゃんが欲しくなっちゃった」
すでに逸らされた視線。踵を返した静雄に、それでもその背を追ってしまう。
「ねぇ、またよからぬことを企んでる?」
「さてね」
新羅は呆れかえっているのだろう、横目で臨也をひとつ見据えて。そして、大仰にため息をついた。
「…君に静雄くんを紹介したのは間違いだったのかな」
後悔が入り混じった新羅の言葉は、当然のことながら微笑む臨也に黙殺された。


***


「そろそろ効いてくる頃かな?」
「あ…?」
臨也の問いかけと同時に、静雄の身体がグラリ、と横に傾く。人間離れした力を持つ静雄でも効果が現れたことに安堵した。まあ、当然だ、通常の何十倍にも効果を引き上げた媚薬なのだから。
「なんだ、コレ…」
静雄は傍の机に寄りかかり片手で自重を支え、そして残りの手では思考が鈍ってきているのだろう頭を抱えている。
とにかく先に快楽の味を覚えさせてしまったほうが早そうだといえた。いかに静雄といえども、本能には抗えないだろうから。
「まあ、俺に任せておいてくれれば絶対に悪いようにはしないからさ」
「手前なんか信用できるか…!」
「大丈夫、大丈夫!速攻性で後にも残らないから安心しなって」
「速攻…?後に残らない…?何言ってやがるっ」
とりあえずやっかいなものを飲まされたのだろうことだけは確信し、静雄は悔しそうに舌打ちした。意のままにならない身体をもどかしそうに捩る様に、ますます臨也の動悸が高鳴る。
そうして、形ばかりの笑みを浮かべた臨也は、静雄の前にしゃがみこむと、徐に静雄のズボンのベルトのバックルを外し出した。
「手前…っ、何を…?」
「そんなの決まってるじゃない」
それでも、まだこうして理性が残っているだけたいしたものだと感心してしまう。しかし、慌てる静雄を尻目に、臨也は手早くファスナーを下げ、完全に前を寛げてしまう。下着の中から引き摺りだした静雄自身は想像以上の大きさだった。
「君のコレ、を舐めてあげるんだよ。俺、上手いから任せておいて」
「……――!?」
まだほとんど反応のない静雄自身に頬ずりし、上目遣いに見上げてやれば静雄は二の句が継げないようだった。
「なあに、ガチガチに緊張しちゃって…。もしかしてシズちゃん初めて?」
「あ、当たり前…だろ!」
焦って本音を口にしてしまえば、臨也が嬉しそうに笑った。しまった、と後悔してももう遅い。
「へぇ…、もしかしてまだ童貞なんだ?」
「…っ、ほっとけよっ」
「ふふ、嬉しいなぁ…。童貞食うの久しぶり」
ペロリ、と唇を舐めた臨也は、ほのかに頬を紅潮させる。反して、静雄はますます顔を顰め、腰が引けている。
「ねぇ、そんな嫌そうな顔しないでよ。噛んだりしないし」
「クソ、やめろよ…っ!なんで手前なんかに…っ!」
鋭く拒絶したところですでに自身を掴まれている状態では抑止力にもならない。そればかりか、臨也の行動を助長させるものにしかならなくて。
「でかいし、おいしそうだねぇ…!」
そんな静雄を無視して、まるでお気に入りのお菓子を目の前にした子供のようにはしゃいだ臨也は瞳を輝かせる。完勃ちすれば相当の大きさになるはずだ。その肉棒に貫かれる様をありありと想像した臨也は知らず喉を鳴らす。
「楽にしてていいからね?」
「おい……っ」
ひとつ口の周りを舐めた臨也は、躊躇することなく静雄自身の先端を口内に含む。独特の味がするそれすら愛おしくて、早く育てたくてたまらなかった。
「う…わっ」
暖かい臨也の口内に包まれ、静雄は歯を食いしばった。
「ん、ふ…っ」
亀頭を舌先で擽り、括れに沿って舌を這わせる。それだけでも、静雄がピクリと身体を揺らした。確かに反応を返してくれるのが嬉しい。
「ん、ちゅ…っ、ふぅ…」
先端を窄めた口内で包み込み、ゆっくりと出し入れする。唾液をたっぷりと絡め、口内へと含み切れなかった唾液はトロリと垂れていく。
「あ、…んふぅ、ふ、んぅ…っ」
思い切って喉の奥まで誘いこめば、さすがに息苦しかったのだけれどそれでも歓喜のほうが勝る。丁寧に育てれば育てるほど、楽しみは増すというもの。
さすがに耐性がない上に、媚薬を含まされている静雄の反応は良好だった。みるみる内に口内で成長していく肉棒は、そのうち根元まで銜えていることができなくなった。
「ふ…っ、すごいよぉ…、ん、これ好き…っ」
肉棒の代わりに、袋をパクリと口内へと含んでやる。モゴモゴと口内で転がしてやれば、静雄はひとたまりもなかったのだろう、殺しきれなかった苦悶の声を上げた。
「くあ…っ、臨也…っ」
「んん、う…?」
明らかに快楽を感じ取ってくれている静雄を更に追いこんでいく。片方は指先で愛撫し、もう片方の袋にもしゃぶりついてあげれば、静雄の腰は揺らぎ、静雄の自重を支える机が、ガタガタと音を立てた。
「んぅ、は、うぅ…っ、ん、あふ…っ」
袋を十分に堪能すれば解放し、再び先端へと喰らいつく。そして、片手で根元からゆっくりと扱き上げてやる。先走りの液が止め処なく溢れ、一滴も残らずに飲みほしてあげたくて、催促するかのようにして吸い上げてやった。
「く…ぅ」
静雄の下腹部に力が入ったのがわかる。ヒクヒクと痙攣しているのは、絶頂が近いからだろう。それに、静雄自身もすでに限界まで膨らんでおり、ビクン、と大きく脈打った。
「しうちゃ…?」
「く、銜えたまましゃべんな…っ」
「わ…っ」
静雄が突然ぐい、と後頭部を掴みなんとか引き離そうとするので慌てて根元を掴んでやめさせた。
「う…くぅっ」
危ない、危ない、ここで首をへし折られても困る。まだそんな力が残っているなんて、さすがシズちゃん、とこっそりと称賛する。
「ん、も…う、出そ…うでしょ?」
「……っ」
静雄は必死に射精感に耐えていた。だけれど、根元を押さえられながら、舌を使って更に高められればもう我慢も限界だった。力加減もちょうどよくて、悔しいのだけれど、抵抗する気力もなくなり、欲望のまま臨也の中にぶちまけたい気分だ。それを期待しているのだろう、臨也は目元を赤らめている。
「ん、う…、あふぅ…っ、ふぅっ」
掴んだ臨也の頭部が上下に揺れる。滑り心地のよい黒髪がサラサラとそのたびに揺れて。
「だひて…いいお?」


***


「後ろからしたいの」
「ああ」
端的に答えた静雄は、満足そうに尻たぶを掴む。そして左右に押し広げられてしまえば、後孔が待ちわびたように痙攣した。
「悪趣味だね…」
「どこがだ。この前は手前に乗っかられたからな、今度は俺の番」
「はあ?そういう理由?」
変なところで負けず嫌いなんだね、と口走れば、静雄はそれだけじゃねえけど、と言葉を濁す。
首を傾げる臨也は、それでもすぐに答えを与えられることになった。
「…手前に、俺のことが好きだって言わせようと思って」
「……ばっかじゃないの」
思いっきり侮蔑を含んだ声音で詰ってやるが、静雄は怒るでもなくクツクツとくぐもった笑い声を立ててさえみせた。おまけに、ベルトが外される音がすることから、前を寛げているようで、余裕すら垣間見せている。
「俺なりの気遣いだってのによ」
「え」
「わかってねえの?手前、素直になってきてるし」
「……っ!」
そこは否定できなくて、動揺を隠しきれなかった。確かに、快楽に流されているとはいえ、対した抵抗すらせずにこうして静雄の言いなりになっているわけで。
「この前まで童貞だったくせに!」
振り向いてそんな言葉を投げつけた臨也に、静雄はおかしそうに笑う。
「その童貞にアンアン言わされてたよなぁ、臨也くんよ」
「……っ、うるさいっ」
揚げ足を取られてしまい、こんなときばかり口達者になるだなんて、やっぱり大嫌いだ。
もう何を言ってもいい負かされる気がする。圧倒的に不利なことは最初からわかってはいたけれど、なにひとつ思い通りにならないことが悔しくて悔しくて。死ぬほど憎い。
「それと」
「なに」
話せば話すほど更に消耗する気さえする。まだ何かあるの、と投げやりに返事したのがいけなかった。
「この調子だと、俺のこと、好きだって言ってくれそうで期待してる」
「……誰がっ」
言うか、という続くはずの言葉は、臨也の腰を掴んだ静雄が後孔にすでに屹立した肉棒を擦りつけてきたことで喉奥へと飲み込んでしまった。
「あ…っ」
切っ先が熱い。静雄に貫かれて、わけがわからなくなるほどの快楽を共有したことを、身体も心も記憶してしまっているから。
華奢な両肩が震えると、それが身体中に伝播するかのようで、足先にまで到達する。
「なんで手前はそんなにエロいんだよ…」
「う…」
なんでもかんでも俺のせいにしないでよ、と言いたかったけれど、期待に満ちた後孔は収縮を始めるし、呼吸だって不規則になってきている。発情しているのは、臨也も同じだ、といわんばかりの身体からの通告に、泣きたくなった。
「我慢できねぇ…!」
「うあ、あ…っ」
肉棒の先端がツプリ、と入り込んできたのがわかった。心得えているとばかりに、後孔が中へ引き込むかのようにひとつ震えて。こうなれば、快楽に弱い臨也に反抗する術はなくなったに等しい。
「あ…っ、ああっ、やぁ…!?」
入口をめいっぱい広げながら、先端が入り込んでくる。臨也は、腰を突き出させられ、額を脱がされた学ランへと擦り付けながらその衝撃に耐える。
「や、おっ…きぃっ、はあっ」
相変わらず凶暴なほどの大きさのそれは、それでも痛みなど感じることなく、蕩けた臨也の内部へとゆっくりと沈まされていく。一番太いそこが入り込んでしまえば、あとはなし崩しだ。
「ああ、入ってくな」
「はぁ、ひ…あっ、う…、あ、あっ、ああ――…っ」
内壁を掻き分けるようにして、奥へ奥へと肉棒が埋められる。静雄には腕を掴まれているから、逃げることも適わない。自重を支える両足はブルブルと震えて、静雄に捕らわれている実質腕一本で支えているようなものだった。
「…あ、あ、ひん…っ、あんっ」
半ばまで入ってきたところで、軽く腰を揺すられる。どこか焦らすような静雄の行為は、臨也を悶えさせ、思わず振り向いてしまった。
「なんだよ」
「……っ、いじ、わる…っ」
わかっているくせに、と顔を真っ赤にさせながら、唇を戦慄かせた。恨めしそうな臨也の表情を見て、静雄は人の悪い笑みを浮かべている。
「どうして欲しいか言ってみろよ」
「…や、だ…っ、あぅっ、…はぁあっ」
また挿入の角度が代わり、少しだけ奥に進まれたものの、それ以上は進んでくれない。まるで拷問のようだった。
言え、と言われても素直に言えるわけがない。今や、完全に静雄の手中に堕ちていることがわかっているからこそ、だ。調子に乗るな、と言いたいところだけれど、強気の静雄に対して、組み敷かれている臨也は不利だと言えた。



To be continued...


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