敵以上、恋人未満



※2010年に発行したコピー本5冊からの再録+書き下ろし(一作品だけ四木臨を含)。
※サンプルは、書き下ろし「仇敵以上、恋人未満」から抜粋。両片思いシズイザで、付き合うきっかけになった話を書くつもりだったのです






心外だな、と言わんばかりに口角を上げられ、言葉を失った。もしかしなくても、シズちゃんは俺に欲情してるっていうの。
「心配しなくても、ちゃんと抱いてやるよ」
いやいやいやいや。心配なんてしてないから。むしろ、心配なのは君の頭のほうだよ。
全く、どこから突っ込んでいいのかわからない。なんでそんなに偉そうなの。
殴る・蹴る・怒鳴るしか能がないと思っていたのだけれど、まさか野獣化するという最終手段があるだなんて知らなかったよ。
「ねえ、俺が合意してないんだから、コレは強姦だよ、シズちゃん?」
頭悪い君でも、していいことと悪いことの区別くらいはつくでしょう、と乾いた笑いを零したところで、シズちゃんが侵攻を止める素振りは見られなかった。
「ああ?めんどくせえ奴だな」
「俺が悪いの?違うでしょ!」
「善悪の区別がついてねぇのは手前のほうだろうが」
「う…、それはそうだけど」
正論すぎて、咄嗟に言い返せなかった。そうもってこられては、分が悪いのは明らかに俺のほうだ。シズちゃんは、そこで大きくため息を吐いて。
「…ひどくはしねぇよ。だから、合意しろ。これでいいか?」
「それはありがたい、…ってそういうことじゃなくてさあっ」
すんすん、と首筋に顔を埋め始めた静雄はすでに聞く耳をもっていないようだった。肌に鼻先や吐息が触れて、敏感に薄赤く染まっているのがわかる。
ため息をつきたいのはこっちのほうだ。抱かれるのが嫌か、と言えば、そうではない。だって、俺はシズちゃんのことが好きだったから。ただ、切なさは否めないのだけれど。内心で天秤にかけて出る答えなんてひとつだった。
「うるせえな。抱かせろよ」
限界だ、と熱っぽく耳元で囁かれて、その意味を推し量れずにいれば。
「あ…っ」
一気にインナーをたくし上げたシズちゃんが、乳首に舌を這わせてくる。チロチロと弄ぶように執拗に舐められては、余計な思考など吹っ飛んでしまった。
「や、め…っ、やぁ…っ」
「ビンビンじゃねえか」
いきなり当たりかよ、と可笑しそうに笑いながら、それでもシズちゃんは執拗に乳首を責めてくる。まさかそんなところを弄られて感じるなんて本当に屈辱だ。
「う、あっ、…んっ」
片方を舌先で捏ねくり回し、もう片方は指先で押しつぶす。どんだけ、乳首好きなの。ああ、きっと彼女にも嫌われたんだよね、これで。そう考えれば、少しは清々しい気分になれた。男で大嫌いな俺なら好きなだけ詰って弄れるもんね、ほんとかわいそう。
だけど、シズちゃんはその鋭すぎる野生の感で、それを侮蔑だと感じとったらしい。
「……あっ、いた、いたぁいっ」
まるで仕置きのように、乳首を思い切り捻ってきたのだ。
「今、手前、余計なこと考えただろ」
「……っ、さすが、シズちゃん」
誤解、したのだろう。確かに、シズちゃんにとってはそうかもしれないけれど、俺にとっては重要なことだ。だって、君を好きな俺としては、たとえ嫌われていたとしても、刹那でも君を手に入れることができるんだ。それでも、素直になれない俺は、本心を口にするなんてこと、できないのだけれど。
「手前は、懲りねぇなあ?」
「あ…っ、な…にっ!?」
鎖骨に噛み付いてきたのだ。
「痛いくらいがちょうどいいんだろ?」
殴っても殴っても死なねぇしよ、と反対に嘲笑われて、唇を噛み締める。
「馬鹿、嫌い…っ」
「そんなの知ってる」
出血は免れてはいるようだが、きっとそこにはくっきりと歯型が残ることだろう。シズちゃんに、愛され、同時に蹂躙された証として。
「う…、嫌い…っ」
悔し涙を浮かべながら、金髪を思いっきり引っ張ってやる。シズちゃんは何もわかってない。
そうじゃないのに。俺がどんな気持ちで、失態という名の痴態を晒していると思っているの。
「…ってぇな」
「ひどくしない、って…っ、言った…」
か細い声の懇願は、シズちゃんにも届いたらしい。ようやく顔を上げたシズちゃんは、宥めるように俺の頬に口付ける。
「言ったな」
素直に認めやがって。なんだよ、優しくできるんだったら、もったいぶるなよ。自分の言動を棚上げしていることくらいわかっているけれど、そんなこと知ったことか。
「だったら…」
「……手前が協力してくれるならな」
「……!」
結局はそこに戻るのか。そして、どうせ、シズちゃん本位のペースに持ち込まれるのだろう。俺はあらゆる意味で不利なのだから。
「う…ん」
逡巡する暇はなかった。流されるように頷いてしまっている俺も大概、なのだろうけれど。それでも、俺は根底の部分で自分を裏切ってはいないから。つまりは、抱いてほしいくらいに、シズちゃんが好きで堪らないということ。
「んう…」
仲直りのキス、と言ってしまえば擽ったいくらいの短いキスだった。こんなふうに、俺たちの仲もキスひとつで解決してしまえばいいのに。そんな簡単にいかないことくらいわかっているし、解けないほどに縺れてしまった関係は、きっと一生修復できないことだってわかっている。
ちゅ、と首元を吸われ、恥ずかしさに頬に熱が集まるのがわかる。シズちゃんは、それでも馬鹿にしたりなんかせずに、下半身へと掌を這わせてきた。
「……っ、ん」
硬質な音を立てるのは俺のベルトのバックル。引きちぎることなくベルトを緩め、ファスナーを下ろすのは、さきほどの約束があるからだろうか。
下着越しという、薄い布切れ一枚を隔てて、シズちゃんは俺の性器に触れる。思いもよらないシズちゃんの手腕に、俺のそこはしっかりと反応していた。
「……乳首、よかったのか」
「……デリカシーのなさは相変わらずだね」
 そうだよ、乳首弄られて感じまくっちゃったよ。ムカつくけどね。
「もっとよくしてやる」
「へ」
じっと俺のそこを見つめていたシズちゃんは、下着越しに俺の性器を撫で始める。さわさわ、と少し控えめな愛撫に、それでもジワジワと快感が生まれてくる。
「あ…っ、や…ぁ」
元々屹立しかかっていた俺の性器は、簡単にムクムクと存在を更に誇示してきた。下着を押しやらんばかりの勢いで、ヒクヒクしている。モゾモゾ、と膝を動かし、正直な俺の身体はシズちゃんが触れやすいように、ゆっくりと左右に膝を開いていく。
「ふは…、感じやすいのな」
今からそんなんでどうすんだよ、と責められても返す言葉はない。その通りだったからだ。それに、シズちゃんに触れられている、ということも要因のひとつだ。
「も…うっ、あ…っ」
グリッと下着ごと先端を引っかかれ、思わず腰を浮かせてしまった。この感触的に、下着にシミがついているに違いない。
「…っ、く…そっ」
「ああ、汚れちまったな」
なんでもないかのように淡々と事実を述べ、それでもシズちゃんは愛撫をやめようとはしない。さすがに居た堪れなくなって、その手を止めようと縋れば。
「わかった、わかった。脱がしてやるから」
「あ、ちが…っ」違うけれど、違わない。口を噤んだら、すぐに下着ごとズボンも引き摺り下ろされた。
「ん…っ」
外気に触れた下半身が小さく震え、思わず吐息が溢れた。シズちゃんの形のよい指先が俺の性器に絡まり、もう片方は半分閉じてしまった膝を押し開く。
「これで思いっきりイけるな」
「最低」
シズちゃんは俺の非難など意に介さず、クツクツと笑いながら、掌にゆるゆると力を込めてくる。
「あ…、う…っ」
絶妙な力加減で上下に扱かれ始めれば、俺はあっというまに根を上げた。
「あ…、あっ、…んあっ」
「すげえ溢れてくるぜ?」
しっかりとシズちゃんの愛撫に応えるように、俺の性器はトロトロととめどなく先走りの液を垂れ流す。元々、俺は淡白なほうだけれど、生物学的には男なのだから快楽には弱い。
「エロすぎだろ…」
そんなの、ペロリ、と舌で乾いた唇を舐めるシズちゃんのほうがエロい。人のこと言えるの。
「ん、んっ、…あ、ああっ」
情欲に塗れた、そんな獰猛な顔を見せられたら、俺のほうだって堪らない。集まった熱が今にも暴発しそうで、爪先に力を込めて耐えようとする。
「ああ、イきそうなのか?」
イッていいぜ、と意地悪く笑ったシズちゃんが、先端をカリカリと引っ掻くようにして虐める。
「…や、やだっ、あ…っ、あああっ」
少しの刺激でもイきそうだった俺は、呆気なく吐精させられる羽目になる。忙しなく上下する腹部だけじゃなくて、まくし上げられたインナーにまで白濁液が飛び散った。




To be continued...




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