青春









「青春」


この年になって何だか少し照れくさい響きの二文字だけど、でもこの年だからこそ使える言葉。
失敗なんて恐れずにただがむしゃらに前へと突き進む。


――そんな熱い高校生活をただ送ってみたかった。






生徒会長×生徒会副会長














「鳴沢先輩!」

声を掛けられ、振り向いた先にいたのは男にしては線の細い下級生だった。

「何か用かな?」

頬を赤らめ俺の顔を見上げてくる彼に、俺はただ眉を寄せることしか出来ない。


金曜日の放課後の校舎。
殆どの生徒が部活へ向かうか、翌日の休日を楽しみに寮へと早々に帰宅する中、俺は生徒会業務を行うため生徒会室へと向かっている最中だった。
そんな時に俺は自分の目の前にいる生徒に声を掛けられたのだ。
先程も言った通り、殆どの生徒は今校舎にはいない。しかも此処は特別棟へと向かう渡り廊下の手前。一般生徒が此処にいるのは何らかの用事があったからだろう。
たまたま俺を見かけて彼は俺に声を掛けたのか、それとも俺に用があって声を掛けたのか・・・・。


「あの、今お時間ってありますか?」

そう丁寧に聞いてくる彼。思った通り彼は後者だったということだろう。
そのまま無言でいると、俺から目を逸らせ頬をより一層赤らめながら口を開いたり閉じたりを繰り返していた。


「言いたい事があるんだろ?」
溜め息交じりに呟くと、意を決したように俺の眼を真っ直ぐに見詰めてきた。

「・・・あの、僕、僕のバージン奪ってくれませんか!!」

「・・・・は?」

何言い出すんだこいつ。
縋るように見つめてくる彼に、俺はただ一言を残してその場を後にした。























「あれ、いたんだ?」

生徒会室へ行けば、自分の席に座りPCに向かう一人の生徒がいた。

「例の企画の最終チェックが終わってなかったからな」

「そう」

義務的な会話を終え、俺も自分の席につきPCを立ち上げる。



「そういやさっき誰と何話してたんだよ」

PCに目を向けたまま話し掛けてくるこの学園の生徒会長、八神慧(ヤガミ ケイ)。
さっきとは、もちろん先程の下級生の事だろう。
何で先程の事を生徒会室にいた八神が知っていたのか、それは此処の窓から渡り廊下周辺が目視できるからだ。もちろんこの窓はスモーク使用になっていて外からは中が見えない。



「知らない下級生。俺に自分のバージン捧げたかったらしいよ」

何の躊躇いも無くそう言う俺に、彼も「そうか」と一言。

「何?嫉妬してくれないの」

そう問い掛け、八神の元へ向かう俺に、視線すら向けずPCのキーボードを打ち続ける八神。
淡々と仕事をこなす彼に、少しムッとして彼の背後に周り首に腕を回し耳元でそっと囁く。

「俺が彼に何て答えたか知りたくないの?」

キーボードを打つ八神の手は止まったが、未だ視線はPCに向いていた。
八神の耳を甘噛みし、ワイシャツの上から彼の身体に手を這わす。唇は耳から首筋へと向かい、小さなリップ音と共に男らしい彼のそれに口付ける。

「今夜俺の部屋に来るように伝えたよ」

そう呟き、跡が残る程度に彼の首に吸いつき離れる。
一人満足して、また自分のデスクへと戻ろうした所で腕を思い切り引っ張られ今度は後ろから八神に抱きしめられていた。

「・・・・やっと反応してくれた」

俺の身体へと回る腕を解き、彼をまた彼の椅子へと座らせ、彼の膝に前から座る。
男二人分の体重を支える椅子がギシリと軋むのも厭わずに彼の肩に手を置き身体を支える。八神は八神で俺の腰を厭らしい手つきで撫でながら支えてくれていた。

「本当に言ったのか」

先程俺が彼に言った言葉に対しての質問だろう。俺の目線を確りと捉えたままそう聞いてくる彼が本当に愛おしい。

「違うって分かってるくせに。」

右手を彼の頬へと伸ばし、優しくさする。そして自分の顔を徐々に八神へと近付けていく。
俺が下級生に言ったと八神へ伝えたのは、目の前にいる彼を嫉妬させるための嘘。そしてその嘘に気付きながらも俺へと問うてきた八神。

「『俺、八神のネコだから。』って、そう伝えたの」

互いの唇が着きそうなほど近くでそう言えば、彼が笑った様に見えた。
しかし見えたのはほんの一瞬。そう見えた時には、俺は彼に口付けをされていたから。
頭をがっちりと彼の手で固定され、俺はただ、彼のそれに応えることしか出来なかったから。













「青春」
当初思っていたそれとは、少し離れてしまったけど、でも俺はきっと今だから出来るそれを、体験している真っ最中なのだろう。


fin.



久しぶりに書いた小説が誘い受け・・・。
私誘い受けって書くの苦手だと思います。笑






 
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