Again
06

「英二。俺が分かるか?」

シンはその切れ長の目をスッと細めると試すような口調で聞いてきた
英二は何の事を言われたのか分からずポカンとしてしまう

「え?」

「わかるだろ?」

思いが伝わらず焦れったいのかスッと近くに寄ってきて顔をまじまじと覗きこんでくる。
そこまでじっくりと目を観察したことは無かったけれど、シンのその瞳は同じ黒い色、いや黒茶色をしているかもしれないなどど考えていたら右頬に手を添えられ顔が近づいてきた
耳元に寄せる口元から発せられる声に思わず首筋が緊張するのがわかる

「英二、バディ・・・って云えばわかるか?」

「!!」

声にならない驚きに反射的に頬に寄せられたシンの手を取りその顔をまじまじと見る
しかし、見れば見るほど、多少、幼さの残るその顔立ちに自分が知っているその後のシンを重ねてみることができずにいる
だけど、自分が此処にいるようにシンが此処に居てもおかしくないのは事実なのかもしれない
むしろ、何故自分が此処にいるのかもわからないのだ

「あぁ、夢?」

自分の中で合点のいく言葉を紡いでみたが目の前の彼は呆れたように目を細めた

「英二。俺だって何で此処にいるのかわかんねーんだ。」

シンはため息をつきながらベッドを軋ませ腰を下ろした
足の上で両手を組みその上に顎を乗せる姿は確かに見知った姿かもしれない
いつの頃からだろうか、シンがその姿で考えこむように遠くを見るようになったのは
確かなのはこの少年は自分の知ってるシンだということだ

「シン・・・」

「英二。俺は・・・」

言葉尻が飲み込まれる
俯いていた顔を上げようとするとシンの手が伸ばされ抱き寄せられた
未来のシンならば英二のことを包みこむように抱いたのかもしれないが今の彼はまだ儚いまでの少年である
だけど、幻のように大きなシンが重なって見えて包容力のあるその腕に身を沈めた
その背中に手を回すとシンの身体が痙攣するかのように震えているのがわかった

「・・・シン?」

落ち着かせるようにその背中をトントンと優しく叩く
しばらくするとやっとその痙攣が収まりきまり悪そうにシンが離れた

「わりぃ・・・英二。」

「僕なら大丈夫だよ」

「英二・・・ただ、嬉しかったんだ」

「え?」

「もう・・・英二の声が聞けなくなるかもって・・・英二の笑った顔がもう見れなくなるかもって思ってて・・・だけど、目の前にお前がいるんだもん。本当、奇跡だよ。夢でもいいから覚めないで欲しくて・・・」

シンはそう言いながら目をきつく瞑るとまた身体が小刻みに震えていた
その姿に英二は手を伸ばすと頭ごと抱きかかえた

「シン・・・。ごめん。僕は・・・未来の僕はとても弱かったね。君には心配がかり掛けてて、本当にゴメン」

「ふっ・・・クっ・・・うぅ・・・」

暫くの間、シンは肩を震わせ英二にしがみ付くようにして声を押し殺すように泣いていた


(To be continued...)
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2012.12.29 RIU.

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