いつも近くに感じていたいんです(月田/匿名希望さんリク)






田中さん、と、甘ったるい、蕩けたような声で、何回も何回も呼ばれて、それに応えて振り向くと、甘ったるい、蕩けるようなキスを何度も何度もされた。

「ん…しつこい…」
「休みのときくらいくっつかせてください」
「別にいいけどよー…」

月島は、俺を抱き締めるのが好きみたいで、暑かろうが寒かろうが、二人きりになるといつもこうやって抱き締められて、じっとしている。
背中に触れる体温はとてもあたたかで、微かに感じる鼓動は俺のそれと重なって聞こえた。

「寒いですねぇ」
「俺は、あったかいけど」
「そうですね、田中さんの身体はあったかい」

ぎゅう、と一層強く抱き締められて、こんなごつごつした男を抱き締めて一体何が楽しいのだ、と思った。

「僕、何か持ってきます」
「んー」
「その辺の雑誌とか読んで待っててください」
「わかった」

月島の背中を見送る。
寒くなった自分の背中。
部屋をきょろきょろと見回す。
恐竜のフィギュアだとか、雑誌だとか、なかなかマニアックな趣味だなあ、とかなんとか思う。
俺なんかは恐竜なんてティラノサウルスとか、プテラノドンとか、そのくらいのメジャーなものしか知らないが、月島はどのくらい知ってるのだろう、そういえば月島は自分の話をあまりしない。
ベッドから立ち上がり、もう一度部屋を見回す。

「田中さん」
「……あ、おかえり」
「どうしたんですか、変な顔して」
「いや、アルバムとか、写真とか見たいなって」
「アルバム……ですか」
「うん」

月島が手に持ったカップを俺に渡す。
ホットミルクだ。

「甘い?」
「ちゃんと蜂蜜入れました」
「ん、さんきゅ」

一口飲む。
優しい甘味が舌の上に広がる。

「……で、アルバムの話だけども」
「小学生の頃のなら…」
「見たい見たい!」
「嫌です」
「えー…」

即答されて、少しへこむ。
小学生の頃のアルバムなんて、気にならない訳がない。

「見せろってばー」
「いや、ちょっと恥ずかしいんで…」
「む……じゃあいい」

わざとらしく拗ねてみせると、月島がまた後ろから抱きついてくる。ホットミルクが飲みにくい。

「なんかお前、今日ちょっとくっつきすぎ」
「寒いんで」
「なんか病気じゃねぇの。風邪?」
「田中さん病ですかね」
「ばっかみてぇ」

ホットミルクをすする。熱い。

「……アルバム、見ます?」
「いいのか?」
「田中さんになら、少しぐらいいいかな」
「やった」

月島が、本棚なら小学校の卒業アルバムを取り出す。
開いてみる。

「………あ、月島いた」
「あんまじろじろ見ないでくださいよ」
「可愛いなー、なんか素直そうで」
「そんな、今が素直じゃないみたいな」
「素直じゃないだろ」
「そうでした」

小学生の月島は、アルバム内に結構な枚数写っていて、まだ小さくて、笑顔も明るくて、俺の知らないような月島だった。

「ふーん…今と全然違うな」
「そうですか?」
「なんか、明るいっていうか……とっつきやすそう?」
「……今の僕は、とっつきにくいと?」
「いんや、んなことない。だったらこうやって家行ったり抱き締められたりしねぇし」
「ありがとうございます」
「なんだよ、畏まるなってば」

なんだか気恥ずかしくなって、ホットミルクを一気に飲む。

「…………!!」
「田中さん?」
「舌、やけどした…!
「もう…」

ちゅ、とキスをされる。
一体、今日何回目だ。
舌を吸われて、背中がぞくっとした。
舌がじんじんして、頭の奥がじわじわする。

「……治りました?」
「っ、…いたい」

俺がそう言うと、月島がほにゃっと柔らかく微笑んだ。
俺のことが愛しくて堪らない、みたいな顔で、またキスをしようとするものだから、俺もまた、何回も何回も、月島からのそれを受け入れてしまうのだった。


















――――――――――――――――
匿名希望さんリクの、田中を甘やかす月島、でした!!
疲れている田中、とあったんですが、なんだかあまり想像できずに中途半端な甘やかし加減、ですね…すみません
リクありがとうございました!

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