明日は寝かせません(月田/ハルさんリク)











いけー!だとか、たおせー!だとか、僕の足の中におさまって、テレビで放送しているボクシングの試合を一生懸命観て応援する田中さん。
赤の方のパンチがすごいだとか、青の方は足が速いだとか、嬉嬉として僕に言ってくる田中さんだが、田中さんの頭で試合は観れないし、そもそも僕はボクシングには興味ないし、なんでわざわざ僕の家に来てまでボクシングを観なきゃいけないのだ、と抗議したくなる。

目の前でゆらゆら揺れる坊主頭をぼんやり眺めながら、ひまだなー、と思う。

田中さんの首筋に鼻を埋める。石鹸と汗と、田中さんの匂い。
なんだかとてつもなく暇だしすごくむらむらするしおあずけされてる気分だし、はあ、と息をつくと、田中さんの身体が跳ねる。

「……田中さん?」
「っ、あんま変なことすんな!」
「変なことって…」
「こう、首嗅いだりとか、息吹き掛けたりとか!動くな!」
「そんなこと言われても…僕暇ですし」
「試合観てろ!」

いや、ボクシング興味ないんですけど、と言う前に、田中さんがぷいっと前を向く。
ただずっと田中さんの後頭部を見てろ、と、そういうことか。
そんなの無理だ。
いらいらしたので田中さんのうなじで遊ぶことにする。改めて、ふーっと息を吹き掛ける。また跳ねる田中さんの身体。

「やっ…めろってば」
「……気にしないでボクシングでも観ててください」
「んー…やめろってー…」

田中さんの訴えも聞き入れず、うなじに噛み付く。どくどく、と血の流れを感じる。口を離す。うっすら付いた歯形をぺろりと舐めてから、ちゅ、と口付けを落とすと、田中さんの身体が強ばった。

「…っ…月島…」
「なんですか」
「ほん、と…やだ…」
「……気持ちいいんですか?」
「っ、わかんねーけど、なんか」
「ぞくぞくする?」
「ん…」

恥ずかしそうに俯く田中さんを、思わずぎゅうと、抱き締める。
耳まで赤くなって、心無しか震えていて、もうボクシングなど見てやしない。相手は男だというのに、もう可愛くて仕方がない。

「田中さん、シたい」
「………明日も、部活あるからやだ」
「……確かに、それじゃあ諦めますか」
「……お前聞き分けよくなったな」
「田中さんの身体が一番大事ですから」
「……さんきゅ」

田中さんを抱き締める僕の腕を、田中さんが縋るように握る。なんたか、子供が甘えているような仕草だ。

「あ、でも……ちょっとだけ、イタズラさせてください」

田中さんの首筋に、またキスをする。
さっき噛み付いた場所がほんのり赤く色付いている。
今度は少し強めに吸う。

「っ、ぃ…月島…」

ギシ、と軋むベッド。
テレビから流れる歓声。
服越しに伝わってくる体温。

服の上からやわやわと胸を揉むと、どうにも堪らないとでも言うように、熱くて艶やかな吐息を溢すものだから、下半身がじくりと重くなる。

「ん……」

薄く開かれた唇が僕の名前を呼ぶ度に、自分の心臓の鼓動を強く感じた。
田中さんの目は、もう試合なんて見てない。

「……明後日、部活ありましたっけ」
「…あー…無かった、かな」
「明日、覚えておいてください」
「な………!!」



真っ赤になった田中さんの、そのまた真っ赤な首筋に咲いている真っ赤な花は、僕と田中さんの約束の印だ。












――――――――――――――――
ハルさんリクの、首筋が性感帯な田中、でした。
首筋っていうか田中は全身性感帯だと思います←
これを俗にオチ迷子という。



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