※黒縁眼鏡と白い肌。(月田/裏)
あっ、と上擦った、女みたいな声が、田中さんの口から漏れる。
ぴっちりと隙間がないくらい吸い付いて柔らかに絡んでくる内壁を少し擦るようにして動くとまた、高くて少し掠れる、耳に心地好い声が漏れた。
下腹がずくりと重くなる。
「ぁ、は、……ぁ、あッ!」
「っあー……ぅあ…」
「っひ、ぁあ、…なか、ゃ、だぁっ!」
「……それ、言うの遅い、ですって…」
「いっ、つも、言ってる、だろ!」
半べそをかきながらも、田中さんが僕を睨む。田中さんだってちゃっかりイッた癖に。
もう少し胎内の蠢動を楽しみたかったけれど、仕方なく抜く。やっぱり、二回以上すると田中さんもキツイみたいだから、なけなしの理性で、我慢。
ずるり。
最後の最後まで切なげに吸い付いてくる田中さんのナカからさよなら。
溢れてくる白濁の白と、腫れた腸壁の赤のコントラストが淫猥だ。
「……生は嫌なんだってば」
「気持ち良すぎるから、でしょう?」
「ばか」
むくりと起き上がる田中さん。
ナカのものを掻き出しにバスルームに行こうとしているのだろう。
その背中をがっしりと抱いて、逃がさないようにすると、抗議の声があがる。
「離せ」
「やです」
「離せってば」
「もう少しだけ、このまま」
田中さんの首筋に鼻を埋める。
すんすんと嗅ぐと、特別なものを付けてるわけじゃないのに甘い香りがする。
人間は、自分と遺伝子の近い人間の体臭は嫌な匂いだと感じるらしい。より強い子孫を残すために、発達した機能だ。
要するに、僕と田中さんは相性がばっちりってことだ。性別は、同じだけども。
性格だとか身体の相性だとかそんなものより、遺伝子レベルで相性がいいだなんて、それってなんだか、とても嬉しい。
「なんか、硬いモノが背中に当たってるんだが」
「若いって、素晴らしいですね」
「ばっ…今日はもう、やらねぇからな!」
「わかってますけど、これはどうすればいいんですか」
「勝手に抜いてろ!」
腕の中でじたばた暴れる田中さん。
「そんな、田中さんに見せ付けながら一人で寂しく抜けって言うんですか」
「見せ付けなくていいからトイレでも行ってこい!俺は早く風呂行きたいんだよ!」
「行かせない。絶対行かせない」
「離せっつの!」
「なんなら一緒に…」
「は、…入らねぇ!」
「………」
これ以上ねだって機嫌を悪くされても困るので、離してあげることにする。
仕方ないから一人で抜くか、と田中さんの背中を見ながら溜め息を吐く。
着替え着替え、とシャツ一枚だけを羽織った姿で歩き回る田中さんを眺めて、本当にこの人は男前だなあ、と思う。少しは前、隠せよ。
そうこうしているうちに衣装箪笥から着替えを取ったようなので、いってらっしゃい、と声をかける。
ぴた、と止まる田中さん。
「………月島」
「はい?」
「……ソレ、なんとかしてやる」
「……え」
ソレ、とは僕のこの…息子のことを指しているのか。
なんとかするって、なんとかされるのか。
「なんか、いつも悪いから」
「何がですか」
「……お前、いつももっとしたいのに俺の身体気遣って一回しかしないだろ」
「…………あ」
「ん?」
「……なんか今…すごく…恥ずかしいです…」
「そうかそうか」
田中さんが僕の前にしゃがむ。
ふう、と息を吐いてから、上目遣いで僕の顔を見る田中さん。心なしか目尻が赤い。
田中さんと僕の息子のツーショットは、なんだか堪らなくそそるものがあると同時に、とても申し訳なくなる。僕が田中さんにあんなものをくわえさせたりそんなものを突っ込んだりしていると部員が知ったら、どんな顔をするのだろうか。
「あ、待って、田中さん」
「んー…?」
ベッドの横のタンスを開ける。
確か、ここら辺に入ってたはず。
「……あった。…これ、掛けてほしい…です」
「……眼鏡?」
「僕の予備の眼鏡。あんまり、度は強くないと思うので」
「……お前の趣味ってよくわかんない」
田中さんに変態、だとかむっつり、だとか言われる。変態で、むっつりで何が悪いんだ。
「………ん」
「あ、口…あったか」
「ん、そーゆーこと、言うな」
田中さんの口の中は熱くて、ぬるぬるしてて、気持ち良くて、腰が浮きそうになる。
眼鏡のレンズから覗く濡れた瞳。
時折当たる熱い吐息にぞくりとする。
丹念に舌で舐められた、と思ったら軽く甘噛みされたり、双球を揉まれたり、焦らされたりする。どこでそんなの覚えてきたんだよ、言いたくなる。
「あー……」
「いきそー…?」
「……ん…はい」
「っ、…ん…わかっ…た…」
「顔、に出して、いいですか…?」
田中さんに聞くと、こちらを見て、頷く。
ちゅ、と亀頭にキスをしたあと、手で擦られる。骨張った手だけど、すべすべで気持ちいい。
「……っ…あ…」
「っ…!……ぅあ…どろどろ…」
二発目だというのにめちゃくちゃ勢いよく射精。田中さんの顔に白い精液がぱたぱたと飛び散る。
「は、ぁ……眼鏡、えろー…」
「前が見えない。てか、にげぇ」
「すごく可愛かったですよ」
「褒めてんのか?」
「褒めてます」
「嬉しくねぇ」
田中さんが掛けている眼鏡を外してあげる。
自分の眼鏡に自分の精子がついてるって、なんだか複雑。
「ん、今度こそ風呂入ってくる」
「あ、もっかい待って、田中さん」
「んだよ」
「田中さん………勃ってません?」
「……っるせぇ」
「……僕も一緒にお風呂入りますね」
後ろ姿でもわかるくらい真っ赤になっている田中さん。
僕のしゃぶって勃つだなんて、どっちが変態だかわからないな。なんて、口に出したら殴られるので、黙っていることにした。
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BGM:不完全燃焼/石川智晶
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