首筋にキス(月田/甘)







休日の朝、僕のベッドで寝ている田中さんを起こす。

「田中さん、朝です」
「んー、つきしまー…」
「……なんですか?」
「お前、俺のこと好きかー…?」

そんな答えのわかりきったことを聞いて何が楽しいのだろうか。

「どうしたんですか?」
「……いや、夢で」
「夢で?」
「……なんでもねぇ」

ふい、と逸らされた顔は、なんだかやけに赤い。
田中さん、と名前を呼んで、ほっぺを両手で挟んでこちらを向かせる。目は潤んでいて、目尻も心無しか赤い。

「……見んな」
「ほんと、どうしたんですか」
「……な、なんでもな…っ…」

ちゅ、と目元にキスをいくつも落としていく。
もどかしそうに身を捩らせる姿が可愛い。

「く、くすぐったい…」
「ふふ、元気になりました?」
「ん……」

弱い力で、シャツの裾を捕まれる。抱き締めると、また弱い力で抱き締め返してくれる。首筋に顔を埋めると、ぴくん、と震える敏感な体。僕が、田中さんの体をこうしたのだと思うとたまらない優越感が心を満たした。

田中さんの熱い吐息を耳に感じながら、田中さんの首筋を舐める。少ししょっぱくて、とても甘くて、このまま田中さんを食べてしまいたい気分になった。

もう一度舐める。田中さんの体がぴくりと跳ねる。

「ひっ、つきしま、それ…待って…」
「んー……やです」

かぷり、と歯を立てると、田中さんの首の血の流れをよく感じられた。温かい血液が、田中さんのこの血管を通って、全身に巡っているのか。

「ん…つきしま…ッ…」
「……もう、少しだけ」

首を弄ぶたびに逐一いやらしい反応をするものだから、僕もついついやめるタイミングを逃してしまう。

舐めて、吸い付いて、噛み付いて、その行為に夢中になる。

「……ひゃ、やだ、…も…」
「……田中さん、やらしー…」

首にいくつも咲いた花を眺める。
この位置じゃ、ワイシャツや学ランで隠せないだろう。




「……げっ…付けすぎ」

鏡を見て嘆く田中さん。だが本気で嫌がっているようには見えないので、よしとしよう。

「誰に付けられたか聞かれたら、大変ですね」
「ほんとだよ、他人事だと思って」
「消えても、また付けなおしますから」
「な…」
「好きって、印ですよ。さっき、疑われたから」
「あ、あれは…疑ったわけじゃなくてだな」
「じゃなくて?」
「その、夢で、お前に、彼女がいて」
「はい」
「やっぱり、女の方が、いいのかなって」
「………田中さんなんて嫌いだ」
「え」

真ん丸になった田中さんの目が、僕を映す。

「………僕は、男だから、じゃなくて、田中さんだから、好きなのに」

恥ずかしすぎて顔が熱い。

「……お前って意外と素直だよな」
「田中さんにだけですよ」
「……俺も好き」

田中さんが背伸びしてまでしてくれたキスは、今までのどんなキスよりも甘かった気がした。





















――――――――――――――――
月田卑猥にできない病を発症した

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