※心音ロック(月田/裏)










月島蛍(すなわち、僕)は、人のことが好きだとか、憧れだとか、そういったような明るい、人間的な感情とは、ほとんど無縁な人間だった。
人間なのに、人間的な感情と無縁とは、笑えないジョークだ、と僕は思っていた。

クラスの女子が自分のことを素敵と言うが、全く理解ができない。所詮、見た目を見ているだけで自分の中身なんか見ていない、見ようともしていない人間ばかりなのだ、と割り切って過ごしている毎日。

なんとなく勉強して、なんとなく高校に入って、なんとなく部活に入って、なんとなく生きて。

そんな無駄で無意味な毎日を過ごしていた。

………なんて思っていた時期もあった。




田中さんに出会うまでは。

「っ、ん、ァ、つき、しま…!」
「はい、なんですか?」
「ゃ、あん、お前、顔、きめぇ…っ…」
「顔だけは良いって言われるんですがね」
「ち、っが、…顔、にやけてる…」
「ああ、これは、しょうがないんですよ」

だって、こんなに可愛い田中さんが、俺の下で、俺に突っ込まれて善がってるなんて、これ以上良いことがありますか。

「は、ぁ、んっ……」

気持ち良さそうに身を捩らせる田中さん。
田中さんが僕で、気持ち良くなってくれてる。

「っ、ぁっ!ば、でかくすんな…!」
「すみません」

今でこそは非常に愛らしく感じるものの、正直第一印象は最悪だったのを覚えている。

あっちがガン飛ばしてきて、こっちも飛ばしかえして、あ、こいつと合わない、ってその時は思った。
でもそれから、正直に、率直に自分の感情を出す、自分と正反対の田中さんに、どんどん惹かれていったんだ。

田中さんと話すのは、自分の感覚が変わっていくみたいだった。世界の見え方、物事の感じ方、考え方。こうされたら、こう思う。こうしたら、こう思う。
田中と一緒にいる時間は、とても刺激的で、でも心地好かった。

田中さん、あなたが、僕の世界に色を与えてくれたんですよ。

好きです。心から。

「田中さん」
「っ、ぁ…んだよ…」
「僕のこと好きですか?」
「な、んで、ひ、ぁ、急に…」
「僕らしくないですか?僕が、嫌いですか」
「あ、ぅ、ちが……」
「ごめんなさい。でも、安心したいんですよ。ちゃんと、お互いに、好き合ってるんだ、って」

田中さんの中が、きゅうきゅうと、なんだか寂しそうに吸い付いてくる。

「っ、は……田中さん、僕は、田中さんが大好きなんですよ。田中さんがいなきゃ、生きてけないくらい。だから、だから」
「…っ…ん…」
「好きって、言ってください。僕が、一番だって」

田中さんの身体を抱き締めて、首筋に顔を埋める。汗の匂いと、田中さんの、匂い。
とく、とく、といつもより少し早い心臓の音が、重なる。

ああ、さっき聞いていたロックのリズムと似ている、と思った。
















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愛が欲しい欲しがりな病み気味ツッキーもえ

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