※『せんせい』(モブ影?/裏)
あーなんてこった、面倒臭ぇ。
学生の本分は勉学です、なんて、普通の学生にとっては、至極無意味な、単なる単語の羅列だ。
最近の学生は勉強なんて二の次三の次四の次。
みんながみんな彼氏がどうした彼女がどうした、うるさいうるさいうるさい!
俺は教師です。あなたたちののろけ話を聞くためにいるわけではありません。
ちなみに学校は、勉強をするところです。
彼氏といちゃいちゃちゅっちゅしたり挙げ句の果てに性行為に及んでしまったり、そういう場所ではありません!
さぁ俺は声を大にして言いたい!
不純異性交遊反対!!
さて、なぜ一端の教師にすぎない俺がこんなことを、自分が担任の教室の前で、放課後の誰もいない廊下に立ちながら考えなければいけないのか。
答えは一つ!
俺の教室の中で、生徒が性行為を行っているからです。
まぁ、中はギリ見てないけどね。
扉を開ける瞬間に喘ぎ声が聞こえたから瞬時に隠れたのだ。
ちくしょう、ちくしょう、なぜ俺の教室なのに、俺は何も悪いことをしていないのに、こそこそしなければいけないんだ。
もやもやといろんなことを考えてるうちにも、教室から喘ぎ声が漏れてくる。
『……っ、は、ァ…ん…』
おーい、結構聞こえてますよ。
あー、いっそのことこの扉を開けちゃおうかな。そうだ、開けちゃおう。だって俺、何も悪いことしてないし。そうだね、開けましょう。
扉に手をかける。あ、ちょっと隙間から見える……
「……!!」
一瞬、呼吸が止まる。
駄目だ、開けちゃ駄目だ。
だってあれは、教卓の上で男子生徒に組み敷かれて、舌足らずな嬌声をあげていたあれは、
(影、山……?)
見た目優等生っぽいのに実は馬鹿で、背だけは無駄に高くて、生意気だけどなんだかんだ従順な影山、が。
あの影山が、男なんかに。
これじゃ不純異性交遊じゃなくて不純同性交遊だ、なんて、つまらない冗談を頭のどこかで考える。
『ぁ…んっ……!』
明らかに、無理矢理じゃなかった。
男に突っ込まれて、よがってる顔だった。
いやだ、汚らわしい。まさかあいつが、あいつが……
(……、なんだよ…これ…)
あいつの照れたような笑顔がよぎる。胸が苦しい。
『ン、あ…ぅ…』
あいつの女みたいな喘ぎ声。
汚らわしい、汚らわしいはずなのに。
なんだよ、本当に。俺はなんなんだ。
「……俺、ホモなのかな…」
昂まった下半身を見て、呟く。虚しい。
誰が影山に突っ込んでたかなんて見えなかった。見たくなかった。
音を立てずに立ち上がる。
(………トイレ、行こ…)
ああ、最高に最悪な気分だ。
なんだよ、なんなんだよ。
あの可愛らしい笑顔は嘘か。
あの少し低めの甘ったるい声は誰にでも向ける罠か。
『せんせい、』
頭の中を反響する声。
ああ、もう!うざったいんだよ、これ以上俺の心を侵さないでくれ。
明日から、どんな顔をすりゃいいんだ。
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別に影山の相手とか先生は誰、という設定はなく。
皆様のお好きな風に当てはめてくださって結構です。
うん、ビチ雄。無意識にフェロモンを振り撒くビチ雄。
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