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私の額に埋め込まれている半分になったガラス玉を「あーらら、面白いことになってるわねぇー」なんて言いながらつつく妲己さん。ちょ、地味に楽しそうな顔すんのやめてください。ちなみに此処は皆のいる本拠点。



≪どうやら、ある程度離れていると痛みはなくなるようですね≫



癒珀の言葉に「ああ、確かに」と思う。そういえば、この拠点に来て皆バラバラになってから完全に痛みはなくなった。額のガラス玉を触ると、欠けた部分がザラザラしていて、尖ったところもある。このガラス玉、どうすれば取れるのだろうか。それを癒珀に聞いたところ、「恐らく、その硝子玉と、あちらの硝子玉をくっつくけなければ……」と返事が返ってきた。え、それって鍾会さんとおでこコッツンをしなきゃいけないってことだよね。ええええ、やだよ、田沼の前だよ。なんでそんな誤解されるようなことしなきゃいけないの。



「でも、それって辛くない? 好きな人がいる目の前で、好きでもない男とやるんでしょ?」



私が嫌がっていることに気付いたのかは分からないけれど、鮑さんがそう言ってくれた。「さっすが鮑さん分かってるぅ!!」と言うと、鮑さんは太陽のような笑顔で「でしょっ!!」と言った。



「でもやらなきゃ取れないし、とりあえず行ってこーい!!」
「え、ちょ、今の会話聞いてた!!?」



くのは私と鮑さんの意見を無視し、私の背中を押す。文句を言っていると、鍾会さんの元へ強制連行された。鍾会さんの元には、光秀さん、太公望さん、三成さん、政宗さん、田沼がいる。「えっ、嘘、田沼いるんだけど!!」と言うものの、鍾会さんとの距離が近づく為額が痛みだす。だが、くのはそんなことに構わず私を押す。



「ちょ、ちょちょちょちょ、くの、痛い!! 痛いから!!」
「大丈夫だって、額コッツンすれば痛みは無くなるよ」
「失敗した場合は!?」
「とりあえずやってみなよ。ほらっ!!」



急に勢いよく背中を押される。倒れそうになりつつも立ち止まる。と、そこは鍾会さんの目の前だった。鍾会さんも、皆も、私の登場に驚いている。田沼は「どうかしたのか?」と私に聞くけれど、私には答えられない。くのは空気を読み、「まあまあ。田沼の兄さんは、私と一緒に幸村様のところに行きやしょーっ」と田沼の手を引っ張って幸村さんの元へ走っていく。ナイス、くの!! 田沼がいなけりゃコッチのもんだぜ!!



「あ、あの……!!」



勇気を出して鍾会さんに声をかける。すると、鍾会さんは「なんだ」と言いつつ、プイッ、と頬を赤らめながらそっぽを向く。おまっ、何だその反応オイ。少しイラッとするが、今はそれどころじゃない為「少ししゃがんでくれませんか?」とお願いする。鍾会さんは意外にも言うとおりしゃがんでくれた。ふと、田沼を見る。田沼はくのと幸村さんの二人と仲良く話していた。……よし。



「すんません、失礼しやすっ!!」



鍾会さんの前髪を手で上げ、ガラス玉とガラス玉が当たるように、額をくっつける。目の前にはドアップの鍾会さん。鍾会さんは「なっ……!!?」と顔を赤くして固まってしまった。まあ、仕方ない。次の瞬間、ガラス玉から光が溢れ、私と鍾会さんの額から取れた。宙に浮いたガラス玉は、形を合わせひとつになる。



「うわ!! っと」



落ちそうになるガラス玉をなんとかキャッチする。よし、これでガラス玉がひとつになった。任務完了だ。「癒珀!! できたよ!!」と癒珀に顔を向けて、ニカッと笑う。癒珀は安心したように微笑んだ。



「協力、ありがとうございました!!」



鍾会さんに顔を向け、頭を軽くさげて礼を言う。そして、走って癒珀達のいる元へ向かう。




 ***




「……やはり、皐月は田沼一筋のようだな」
「う、ううううるさい!!!!」



行ってしまった皐月の背中を見ながら、そう呟く太公望。その言葉に過剰に反応するのは、先程の出来事でいまだに照れているものの、太公望の言葉で怒る鍾会。ふと、政宗が「夏野と田沼は両想いなのじゃろう?」と疑問に思ったことを聞く。その言葉に、「絶対にそうでしょうね」と光秀は苦笑しながら、「あの二人はわかりやすいからな」と三成は無表情で鍾会を見る。



「き、貴様等!! そんなに私を虐めて楽しいか!!」



皆に馬鹿にされ、思わず涙目の鍾会。政宗、三成の二人はニヤニヤとしながら鍾会を見る。それが尚更鍾会の怒りに触れ、鍾会は政宗と三成に向かって自分の武器を向けた。そのこと、光秀さんが苦笑しながら止めようとする。



「……あの調子じゃ、いつまで経っても皐月を捕まえることはできんな」



そんな鍾会達のやり取りを見て、太公望は一人静かにそう呟いた。



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