おかえりなさい | ナノ
四百四病の外 - Lovesickness -

「Very delicious」



私が作ったオムライスを食べ、そう言ってくれるピアーズ。
その言葉にニヤけつつも「ありがとう」とお礼を言うと、ピアーズも笑みを浮かべてくれた。
こうやって「美味しい」って言ってもらえると、作った甲斐がある。
しかも突然知らない場所に来て、知らない女が作った昼食を食べているというのに、なんて優しい。
バイオで生きていた頃も、彼はさぞモテていたことだろう。



「…………、」



これだけ顔が良くて運動神経も抜群で凄い職業についていたんだから、彼女、いたかもしれないな。
バイオ本編では直接関わりがなかっただけで、本当は彼女とか婚約者とか奥さんとかいたりして……。
……複雑、っていうか……、嫌、なのかな……。
ピアーズに好きな人、愛している人がいると思うと……、なんか凄く、……うん……。
いや、違う。キャラが目の前にいるっていう特別な状況だから、きっと私は勘違いしてるだけなんだ。



「Humika?」



突然、頬に何かが触れた。
驚き、顔を上げてピアーズを見ると、スプーンを置いたピアーズの左手が頬に添えられていた。
普段異性に触れられることがない為、少しの感触だけで動揺してしまう。
私があたふたしていると、ピアーズは机の上に置いてあった私のスマホを手に取り、指を動かすとスマホに向かって何か言った。
そして何かを確認すると、スマホ画面を私に見せる。



「どうかしましたか?」



ああ、オムライスに手を付けずに俯いていた私を気遣ってくれたのか。
でも理由なんて言えないな……、恥ずかしい。



「なんでもないよ」



スマホに向かって言い、ピアーズに見せる。
私が勘違いしている、ただそれだけのことなんだ。
しかし、ピアーズは文章を読み終えると、私を睨むかのように眉間に皺を寄せた。
その目にビクビクしていると、ビシッ、とデコピンされてしまう。



「いっ!?」



思わずデコピンされた額に触れ、驚きながらピアーズを見る。
ピアーズは驚いた私の顔を見て「ぶっ」と吹き、手で口元を抑えながらも笑いを堪えた。
不貞腐れながら「失礼な……」と言うと、彼はいまだに笑いを堪えながらも私を見る。
ゲームでは見たことのない表情で視線を向けられ、胸がドキンと高鳴るのを感じた。
おい待て自分、勘違いのはずだろう。



「A reaction with worth of bantering」



笑みを浮かべながらスマホに言ったピアーズは、スマホを私に見せる。
「からかい甲斐のある反応です」
その文章を読み、「はあ」とわざとらしく溜め息をつき、頬杖をついてピアーズを睨む。



「Interesting person」



なんと言ったかは分からないけれど、からかうような笑顔がなんだかムカつく。
ムッとしながらピアーズの頭目掛けてチョップすると、ピアーズは「っ!?」と声にならない悲鳴を上げながら頭の衝撃に顔を歪めた。
そして不服そうに私をジト目で見る。
今度は私が笑う番だ。

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